隣を歩いていいですか -8ページ目

12.そして…

そんな最低なメールを送った次の日


待ち焦がれていた彼からのメールが来たのだった。

今でもそのメールを見た時間と場所は

しっかりと覚えている。


携帯をを開く手が震えた。

深呼吸をして、ゆっくりとボタンを押した。



「同じ事をしてもいい?」


それは、当然の言葉だと思った。

しばらく何も考えられなかった。

私が彼に対してしてしまったこと。

今さらになって反省も後悔もしても仕方なかった。



「ごめんね。私は、そうしてもらっても構わないよ。

けど、メールが来ないことずっと不安だった。

どうして、返事くれなかったの?」


精一杯の気持ちを伝えた。

何が何だか分からないけど

連絡のつくうちに全てを知りたいと思った。



「何か誤解させたみたいやな。

入院してたんよ。急遽ね。

帰ったら電話するよ。

お前には残念な気持ちです。」


最初に会った時に

仕事の拘束時間が長くって

前に入院したことがあったことを聞いていた。

もともと体が悪いってわけじゃないけど

そういうこともあったみたい。

まさか、それがまた、このタイミングで起こってたなんて。



「そうだね、私には引き止める権利ないし。

もう私のこと忘れて」


涙さえ出なかった。

そう送るのがやっとだった。

もちろん、本当の気持ちではないし

でも、戻れるわけないんじゃないかって。


これで別れなんだなって感じていた。

受け止められる器は持ち合わせてなかったけど。


怒り、悲しみ、哀れ、悔しさ、後悔

どんな感情も出てこなかった。

生きているのかさえ、分からないような不安だけが募った。

私だけが悪いの?

それでも、あなたの声を聞きたい、顔を見たい。



そして、もう彼からのメールは来るはずがないと思っていた。

もう来るはずがないと…。

11.会えない間

「何かあったの?」

「もう、うちと連絡とるの嫌になったんならそう言って」

こんなメールを送っても

私の携帯に彼からメールが届くことはなかった。


彼に送った最低なメールとは


「私、車のナンバー覚えてるんだよ。ナンバーから住所調べていいかな?」


過去に、見知らぬ人に連れ去られた事があって

知り合って間がない人の車に乗せてもらう時は

ナンバーを確認するようにしていた。


車のナンバーから、住所を知ることができる事も

過去の体験から身に付いていた。

決しては悪い人ではないのに。


それともう一つ、犯してしまった彼への

彼の携帯番号を不特定の人に公開してしまったこと。



こんなことをしたって彼が戻ってくるわけじゃないのに


今の状況が飲み込めなくて

彼を好きになったことを後悔しそうで

苦しくて苦しくて…

この思いを一人で抱えきれずにいた。


10.不安の4日間


もしかして…

と、

不安ばかりが

頭の中を駆け巡る。


必要なのは体だったの?


優しい笑顔も

温かい言葉も

交わしたキスも

重ねた体も


偽りだったのだろうか。


それだけでも知りたかった。


もし、1夜限りの関係であったとしても

せめて、連絡ぐらいくれてもいいんじゃないか。

いや、彼はどんな人じゃない!


私は、心当たりのあるいくつかの場所に足を運んだり

手がかりになるものがないか探したりした。

費やせる限り彼の消息を確かめるために費やした。


どうにかして繋ぎとめたい。

もう一度会いたい。言葉を交わしたい。


純粋な気持ちとは裏腹に

彼に最低なメールを送ってしまったのは、

連絡がつかなくなってから4日後の夜のことだった。



9.途切れて

次の日から私の笑顔はだんだん少なくなった。


理由は彼からのメールが途絶えてたから。


今日1日メールの返事はないし、

夜になって電話をしてみても

繋がらなかったり留守電になったり…。


不安は募る一方。



過去にも同じような状況があって

もう連絡もとらなくなってしまうような人となっている。

そのトラウマとして残っている、私の心の傷を掻き毟るようだった。



連絡が取れないのは2日3日と続いていった。





8.思い出すだけで

帰りの車の中でも

キスをたくさんした。


彼が家に着いてからも

何度かメールを交わした。


その日の夜は嬉しさで

あまり眠れなかった。


目覚めても、彼の笑顔と声がまだ残っていて

ニヤけてる自分がいた。


この人のために

頑張ろう、変わろうということがいくつも出てきた。

相応しい人に一歩でも近づきたい。

これから、どこ行ったりできるかな?


自分は世界一幸せな子♪


そんなふうに自惚れてた。