人魚姫 EuropaSea | 雨 風 呂

人魚姫 EuropaSea




海洋界の王の子供の一人にアクアと言う娘が居ましたがそれは美しく活発で好奇心旺盛な少女でした。
毎日の様に物知りの年寄りに海の上の世界の話を聞くのが楽しみでした。
16歳の誕生日の日、王国の外に出ても良いと言う自由が与えられました。
早速アクアは海中大陸にある王宮から氷の洞窟の開けた海岸へと通う様になりました。
そこで海を行き交う船や船上の人間達を観察するのが日課となったのです。
ある日、一隻の船が雹の嵐に巻き込まれ沈没してしまいました。
それを目の当たりにしたアクアは急いで破壊された沈みゆく船体を追い深く潜りました。
数名の船員はすでに絶命していましたが、若者の一人はまだ生きていました。
そしてその若者を海中から海岸へと引き上げました。
若者の体を一旦うつ伏せにすると水を吐いたのでまた体を仰向けに戻しました。
でもまだぐったりとして動ないので口を合せ空気を肺に送り込みます。
ようやく若者は胸を上下に動かし始めアクアは安心しました。
すると嵐で船が難破した事知った人々が海岸へと集まり、
人の気配を知ったアクアは見つからないうちに急いで海へと飛び込みました。
アクアは家に帰った後、寝つかれませんでした。
間近で見た、その目を閉じた美しい若者の顔が目に浮かびます。
初めて人間に触れ、しかも唇の感触までついさっきの事の様に思い出されます。
アクアは恋に落ちました。
またあの若者に会いたい、その気持ちが募って居ても立っても居られません。
物知りの年寄りに聞いた話を思い出しました。
人間は海の動物も含めて自分以外の全ての生き物を人間に劣る下等動物と考えている事を。
そして人が寄り付かない海域の洞窟に座礁した病院船に住む「魔女」と呼ばれる人物の事を。
アクアは他に何も考えられず、その病院船があると言う海域へと泳いで行きました。
船は完全に陸に乗り上げていて、その周りにはびっしりと動物や人間の骨が敷き詰められていました。
アクアはその中から大きな骨を2本拾うと松葉杖の様にして両脇に抱え、
船の入口へとスロープを上って行きました。
しかし入口の鉄の扉は閉まっています。



「もしもし!魔女さん?」と呼んでみました。
しばらくして「誰だい?」と声がして鉄の扉が開きました。
険しい顔付きの老女が出てきました。
「海洋界の王の娘の1人、アクアと申します。」
「おや、珍しい。人魚じゃないか。」
「実はお願いがあってやってきました。」
「そうだろう、人に言えない悩みを持った人が来るんだよ、ここには。」
「はい・・私は人間の足が欲しいのです。私に似合う足を。」
「そうか、人間になりたいのか。よし、きれいな足をあげよう!しかしタダと言う訳にはいかない。
代わりにお前の持っているきれいな物と引き換えだ。手か?耳か?目か?何が良いだろう?」
「お願いです!外見に影響のある物は勘弁してください。体の中の物なら何でも・・」
「お前の尻尾や内臓なんて欲しい者は居ないからね・・そう、その美しい声をもらおう。」
「え?!なんですって?」「その声を頂くと言ったんだ。つまり声帯を代わりにもらう。」
「そうですか・・それが交換条件なのですね。足をくれるなら我慢します。」
「まぁ声帯摘出は足を付けてからでも良い。出来栄えを納得した上で提供してもらう。」
アクアはオペ台の上に横たわり、間もなく手術が始まりました。
意識が遠のいていく中でノコギリの切る振動や皮膚を引っ張る感覚だけが伝わりました。
手術が終わり、血管、神経、筋肉が充分に接合するまでアクアは何日も眠り続けました。
「どうだ?手術が終わって1週間経ったぞ?」と声が聞こえ、アクアは我に返りました。
「信じられない!とても美しい足だわ!ありがとう。」
「さすが人魚だ、回復が早い。傷跡は心配するな、細胞融合酵素により傷口同士を結合している。
間も無く傷跡さえ消えるだろう。」
「ありがとう。この足、満足してます。そう言えば私の尻尾はどうしたの?」
「欲しい者が居るとは思えないが、一応この通りとってある。また元に戻したい時が来たら戻せるぞ。」
と魔女は部屋の片側の冷凍室の扉を開けて中を見せます。
中には自分の下半身だった尻尾の他にも手や足などがバラバラに氷漬けになって並んでいました。
「ちょっと新しい足で歩いてみて良いですか?そして尻尾にお別れをしたいの。」
「あぁ、手術が万全だったら問題なく歩ける筈だ。それを確認したら声帯摘出手術に移る。」
1歩、1歩と足を交互にゆっくり動かし恐る恐る歩いてみます。
腰から足に激痛が走りますがそれもなめらかに歩くうちに痛みも引いていきます。
右、左と交互に膝を高く上げてみます。大丈夫の様です。
するとアクアは振り向きざまに魔女をその冷凍室へと蹴り込みました。
そしてその冷凍室の扉も間髪を入れず閉めてしまいます。
「ごめんなさい魔女さん。私はどうしても彼に告白がしたいの。声を失う訳にはいかないわ。」
アクアは病院船を後にしました。

アクアは王女の一人として高い教育を受けていたので沈んだ船の船名や所属している港を読み取り
若者が出港したであろう港を突き止めました。
しかし術後、過激な運動を続けた事で傷口が痛み、激痛で港に着くや否や気を失ってしまいます。
幸い、港に居た人々が彼女を見つけ、医者を呼んでくれました。
アクアが気が付くとそこはベッドの上。しかも目の前にあの恋い焦がれた若者が居ます。
「大丈夫ですか、お嬢さん?あなたは港で倒れている所を発見されたのです。
この港は私が管理しているのでとりあえず自分の部屋の1つに連れて来た次第。」
「高熱と炎症による腫れがあったので抗生物質を注射しました。すぐに良くなる筈です。」
と医者がその若者に言いました。
「助けてくれてありがとうございます。私はあなたが誰か名前も知らないけど、あなたに会えて幸せです。
あなたの船が沈むのも見てました。そしてあなたを海岸まで連れて来たのも私です。」とアクア。
「まさか!あの嵐の中を君みたいな少女が私を海岸まで?それが本当なら君は命の恩人だ。ありがとう。
私はエウロポリスの総督だ。名前はエアロと言う。」
「私はアクアと言います。少し前まで他の海域に居ましたがあなたを追ってこの国に来たのですよ。」
「そうか、私は命の恩人に感謝しなければならない。もし他に行く当てが無いなら・・・
体調が万全になってもこの部屋でしばらく暮らさないか?君さえ良ければこれからも良い友達で居たい。」
「もちろん、喜んで!」アクアはとても嬉しそうでした。
「ちょっとお話が・・」と医者がエアロを部屋の片隅に連れて行き小声で話します。
「彼女は足を移植した様ですが人魚です。海洋種族の特徴として外耳の一部が耳の穴を塞げる様に変形し、
髪の毛は細い羽毛状のエラで海中の酸素を吸収出来る様になってます。」
「そうなのか?まるで普通の人間の様に見えるが・・それでも彼女は恩人だ。大切に扱ってくれ。」
アクアはここに居る幸せとこれからの不安と疲れで横になってすぐに眠ってしまいました。
目が覚めるとベッドの傍らにエアロが立ってました。
「おはよう。良く眠って居たね、起こしてしまった様で済まない。これから出掛けなきゃならないんだ。」
「おはようございます、エアロ様。私も一緒に行く訳にはいきませんか?外の世界を見てみたいのです。」
「そうか?じゃ、一緒に行こう。私の職場を案内してあげよう。」
「ありがとう。嬉しいです。」とアクア。
2人は港にある屋敷を出て山の斜面の切り開かれた場所に向かいます。
山を削って造られたと思われる切り立った壁面は階段や扉があり、巨大な建物の一部の様でした。
エアロは扉の1つを開け、中の小部屋にアクアも入るのを確認すると再び扉を閉めました。
「これから3キロ上の地表へ向かう。大洞窟世界の都市や地下海ともしばし離れる事になる。」
アクアの体に経験した事のない程の重さが加わりました。



動く小部屋を出るとそこは空に向かって広がる円筒形の氷の洞窟でした。
「空を抜けて上がって来たのにまた上に空があるわ。」
「地下の大洞窟世界の空は偽物だ。地下海の上に溜まった空気が巨大洞窟の天井に集まり雲を作っている。
この垂直の穴は「シャフト」と呼んでいる。ガラスで蓋をされ、更に不純物の無い完全に透明な氷で補強されている。
中の世界と外の世界では気圧が違うのでそのままの穴では空気が漏れてしまうのだ。
そして大洞窟世界に何か所もあるシャフトから射す太陽の光でこの地下世界を照らしている。
つまり地下世界の天窓の様な物だと言えるだろう。それが大洞窟世界の天井の太陽だ。
しかしシャフトからの自然光だけでは広い範囲を照らす事は出来ないので
大洞窟世界の天井にも「星」と呼んでいる人工的な照明を設置している。
それに使われる電力も地表の太陽電池からシャフトを通して地下へとケーブルで繋がっている。」
「洞窟世界の空は作り物だったの?!あの上にあるのが本物の空なのね。」
「そうだ。あの上に本物の空がある。大気編成は100%酸素。
しかし気圧は低くてそのままでは呼吸できない。
これもシャフトを通して大洞窟世界へと1気圧に直して送っている。」
「外へ出てみたいわ。」「そうか・・でもそのままでは無理だ。
スペーススーツを着なければ。行ってみるか?」「えぇ、ぜひ。」
アクアとエアロはスペーススーツを身に着け、そこから更に別のエレベーターに乗り換え、
もっと上へ、ついに地表まで到達します。扉を開けると今まで見た事もない広大な場所でした。
あまりに広くて地平線の先が見えません。空も思ったような物ではなく、真っ黒でした。
真上を見ると星々の中で一際輝く光の玉が見えます。
「あれは・・この世界の太陽?!」「そうだ、あれが本物の太陽。全ての光はあそこから届く。」
他にも丸い玉がいくつか見えます。「あれも太陽?」
「いや、あれはガニメデとカリスト。エウロパと同じくガリレオ衛星群の仲間だ。」「エウロパ?」
「地下海、大洞窟世界を含めるこの星の正式な名前だ。我々の世界は木星と言う惑星の周りを回っている。」
「連れてきてもらえて良かったわ。海の世界に居たら知りえない事ばかり・・本当に感謝しています。」
アクアは機会があれば度々エアロに地表へ連れて行ってもらい、恋人の様に一緒に夜空を眺めたりしました。
しかし、その幸せな時は長くは続きませんでした。エアロが他の人と結婚する事になったのです。
「アクア、私は以前から付き合いのある婚約者と結婚する事になった。これは以前から決まっていた事だったのだが
今まで言わなくて済まない。しかし君はこれからもこのままこの部屋に住んでてくれ。
私は花嫁と宮廷の建物で新居を構える予定だ。彼女は私が港で倒れている所を見つけて介抱してくれた女性だ。
沈む船から私を助けたのは君だと言う話は聞いた。君が本当の命の恩人かも知れない、
しかし私は彼女を愛しているのだ。それに主治医から君は人魚だと聞いた。君の事は好きだが人魚とは結婚できない。」
「私が助けたのに・・私が本当の命の恩人なのに!ひどいわ!!」
アクアは逃げる様に港の屋敷を後にしました。

人間達の住むエウロポリスを離れ海へと泳ぎました。かと言って海中大陸に戻る訳にも行きません。
行方も知らせず勝手に出て行って人間になろうとした事なども今更言える訳もありませんでした。
行く当てもなく、彷徨っているうちにまたあの座礁した病院船のある洞窟に来てしまいました。
すると船の周りで骨を見繕っている魔女の姿を見つけました。「魔女さん、生きていたのですね。」
「おや!あの時はひどい事をしてくれたね!なんとか冷凍装置の点検口から外に出られたが、
凍傷でもう少しで死ぬところだったよ!それにあんたにはまだ声帯の借りがある。その借りは必ず返してもらう。」
「そうでしたね、私にはまだ借りがありました。しかし私は人間になれたと思ってたのに、
あの人に人魚だと言う事がばれてしまいました。そして私の最愛の人は他の人と結婚する事に・・・。」
「結婚か・・人間の社会で人間として暮らす事は出来ても結婚となると難しい。
何故なら人間と人魚とでは子孫を残す事が出来ないからだ。
鉱物資源が豊富な木星付近の植民地で食料の需要を満たす事が急務だった頃、
エウロパとガニメデの地下海洋開拓の労働力として人間のDNAをベースに作られた種族なのだ。
最初はエウロパもロボット等による機械が労働力の主力だった。
海底地熱発電所の建設、水を電気分解して水素燃料と酸素を生産するプラント、
地球の深海火山性バクテリアや海洋生物の移植等、沢山のロボット労働力に頼っていたのだが
500年前、25世紀の地球南北大戦により文明は崩壊し生産基盤は失われた。
稼働していたロボットも部品が欠如し、海水により錆び、朽ち果て、ただの鉄くずになった。
その機械の労働力と遺伝子技術を完全に失う前に開発し終わったのが海洋種族、人魚だ。」
「私たちは人間に作られたの・・人間は神に作られ、死んでも神の元へ戻る魂があると聞きます。
私たちには魂は無いのでしょうか?」
「さあな、私も魂を悪魔に売った人間だ。天国へは行けないだろう。
500年前だったら人魚のDNAをまた改変して人間に戻す事もできたであろう。しかしその技術は既に失われた。」
「そうですか・・私は本物の人間にはなれないのですね。」
「方法が無い事も無い。人間の体まるごと1体あれば交換できるぞ。」
「まるごと・・1体。」
「あぁ、まるごと1体手に入れれば声帯摘出や私を閉じ込めた事もチャラにしてやる。
しかもお前は人間の体を手に入れ、同時に恋人も手に入れられる。」
アクアにはそれが唯一の方法だという気がしました。
アクアの頭の中には常識的な分別も、魔女を疑う余地さえも残されていませんでした。

エウロパが木星の裏側に移動しエウロポリスに夜が訪れた頃、アクアは港に辿り着きました。
港に張り出された掲示板で明日がエアロ達の結婚式だと知りました。今夜が最後のチャンスです。
港の屋敷に着くと港の見えるベランダでエアロと女性が寄り添って夜の景色を楽しんで居るのが見えました。
そしてしばらくすると2人は飲み物を飲みながら部屋の中へ入って行きました。
アクアは一旦屋敷の屋上まで上がるとロープを伝ってエアロ達が居たベランダに降りました。
部屋の入り口には衛兵が居る事を知っていたのです。
2人は幸いもう床についていました。2人が一緒に仲良くベッドに寝ている所を見ると涙が溢れてきましたが
気持ちを奮い立たせエアロの手足をベッドのそれぞれの足に縛り、
次いで女性の口にハンカチを詰め込み、頭には枕カバーを被せ、体には毛布を包みロープでぐるぐる巻きにしました。
そして女性の体をベランダからロープで降ろすと自分もロープを伝って敷地の庭園の木々の中へと降りました。
誰にも見つかって居ないのを確認すると女性をそのまま港まで引きずり小型の船を奪ってそれに乗せました。
病院船のある洞窟に着くと船が近付いて来たのを知って魔女が波打ち際まで出迎えに来ました。
「良くやった!!上出来だ、本当に成功するとは思わなかったぞ!」
女性を病院船まで運び込むと女性は最期が近い事を知ってくぐもった声で叫びました。
「なんと、まだ生きているのだな!それは絶好の条件だ。」「では、早速交換してくれますね?」
「あぁ、勿論だ。その台に横になれ。」アクアが横になると顔の上に布を置き、腕に注射をしました。
薄れる意識の中でアクアは目が覚める時には人間に生まれ変わっている事を期待して幸せな気分でした。
魔女はアクアが麻酔にかかった事を確認するとそのまま冷凍室に入れました。
次に女性の体をオペ台に乗せると暴れられる前に先に麻酔を打ちます。
魔女は大人しくなるのを待ってロープや毛布を取り除きます。
「なんと美しい!これは高額で取引できる。」
女性を冷凍室に入れる準備をしていると大勢の人々が敷き詰められた骨を踏みしめる音が聞こえてきました。
エアロがエウロポリス正規軍を引き連れ乗り込んできたのです。
「エアロ様、闇医者はあそこに住んでおります。きっと花嫁もあそこかと。」
エアロの主治医はアクアが手術の交換条件に誘拐したと考え、ここの居場所を特定したのでした。
兵士達は瞬く間に魔女を制圧し船へと連行しました。冷凍室のアクアも発見され救出されました。
アクアは大勢の兵士が乗っている船の中で目覚めました。そしてそこが病院船のオペ室では無い事を知りました。
状況を察し、アクアは計画が失敗した事を確信しました。エアロが船室に入ってきました。
「魔女の悪巧みに乗ってしまった様だな。君は冷凍室に入れられていた。君は騙され利用されたのだ。
今回の件は命の恩人に免じてお咎め無しとする。そしてこの話は花嫁にも伏せておく。
しかしもう屋敷には住んでもらう訳にはいかない。その事は了承してもらえるな、アクア?」
「はい、エアロ様。」



大洞窟世界の天井の太陽が眉の様に細い形から徐々に太く、半円形になりつつあります。結婚式の朝が来たのです。
(大洞窟世界の【太陽】は天頂に固定され動かないがシャフトへの太陽光の入射角により満ち欠けをする)
沖合で海底火山の熱水噴出が起こり空に漂う蒸気が冷えてエウロポリスの港に粉雪を降らせました。
アクアは小雪降る波止場で屋敷から教会へ向かう新郎と新婦を眺めていました。
2人には本当に申し訳ない事をしてしまいました。初めから無理な夢だったのかも知れません。
溢れる涙を拭う事もせず、アクアはただ式が終わるのを待ってました。
式が終わると教会から戻る2人に「おめでとうございます。」と頭を下げ、
1人ずつ貝殻で作ったブレスレットを渡しました。花嫁は「あら、素敵!」と言い、エアロは微笑んで会釈しました。
エアロに身に着けてもらいたいと思い、朝までに作ったのです。これを見る度に自分の事を思い出してくれる様に・・・。
翌日からアクアはシャフト上部、この星の地表の鉱物資源の回収の仕事をさせてもらう事になりました。
固い氷の地殻表面に宇宙から飛来する砂やチリ、岩石などが降り積もるのです。その中には希少金属も含まれます。
作業員の中には女性も居ました。とても美しい女性で作業員が泊る部屋も一緒になりました。
ある日、彼女がシャワーを浴びて着替えをする時に背中に大きな傷があるのを発見しました。
それは丁度肩甲骨の上にそれぞれ1か所ずつあります。「どうしたの?その傷・・」
「あぁ、見つかっちゃったわね。これは羽の跡・・私はエアリアルと言う種族だったんだけど追放されたのよ。」
「あなたは天使なのね!お伽話でしか存在しないのかと思ってました。昔は羽を持っていたのですね?」
「えぇ、私が居た世界はスカイダムと言って回転する樽型外殻の内側に住んでました。
遠心力で壁に引力ができて内側には大気や雲や海があるのです。
そして中空の中心部は無重力なので羽があれば飛べるのです。」
「それは夢のようです。天国ってきっとそこの事だわ!」
「でも厳しい階級社会なんです。
私はアストロノーツ族と駆け落ちして品位を汚したと羽を奪われ追放されました。」
「あら、私も最近好きだった人の花嫁を誘拐して住んで居た所を退去させられたばかりだわ。」
「それ、すごいわね!そうそう、私はここにいつまでもいるつもりは無いの。
ある程度お金がたまったらエウロポリスの警備兵に志願するつもりよ。
それが叶ったらエウロパで女性初の兵士になるのよ。すごいでしょ?」
「素晴らしいわ!私は2番目の女性兵士になろうかしら?」
「いいわね!私はエウロポリスの宮廷警備が希望なの。ステキでしょ?」
アクアはその言葉にドキっとしました。
もしかしたらエアロに会えるかも知れない、それどころかずっとそばに居られるかも知れない・・。
人生に希望を失ったアクアでしたが、この友人のお蔭で新しい生き甲斐が出来た様な気がしました。



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エウロパ (Jupiter II Europa) は、木星の第2衛星。
大きさは月やイオより一回り小さい。
天体表面は厚さ3~10km以上の固い氷で覆われており
氷層の下には深さ100kmほどの塩分を含んだ地下海が存在する。
エウロパの海水量は30億 km3 (地球の全海水の2倍)
また氷層の中には真水の湖や水が抜けて空洞になった洞窟もある。
地表と地下海に水(H2O)がイオン化遊離した酸素が存在する。
(水素は軽いので大気圏外へと上昇する)
中心部の金属核の周りに岩石層マントルがあり火山活動が確認されている。
【木星の重力等で変形するエネルギーで中心部の温度が高まる為】
その熱で海水が暖められ地殻の一部に熱水噴出孔があり、
それにより噴出する水柱も観測されている。
(ハッブル宇宙望遠鏡がエウロパの南極部分にて巨大な水柱を発見した。)