「ビリー・ジョーの唄」    ボビー・ジェントリー

10代後半に聴いた洋楽の中で最も謎めいていた曲だ。

そして今でも謎のままである。

モンキーズがアイム・ア・ビリーバーを、ドアーズがハートに火をつけてを、

そしてビートルズがストロベリー・フィールズ・フォーエバーを歌っていた頃、

突然現れたギターの弾き語りの曲「ビリー・ジョーの唄」

 

映画「大砂塵」でジャニー・ギターを唄ったジョーン・クロフォード宜しくカントリー調に呟く様に唄うボビー・ジェントリーは女優のように美人であったが、タートルズやボックストップに夢中だった私には何だか場違いな雰囲気がしてそれほど本気で聴かなかったのを覚えている。

後にヘイ・ジュードと全米No. 1ヒットを争った「ハーパーバレーPTA」が

「ビリー・ジョーの唄」にヒントを得て創ったという話を聞いて、詩の内容を探ってみる内に引き込まれていったのを思い出す。

陽気な「ハーパーバレーPTA」とは似ても似つかぬミステリアスな内容で解釈に諸説あるというのも頷ける。

 

その後、シンガー・ソングライトだけでなく、プロデュース、会社経営、など「女性初の・・」と言う枕詞で始まる成功の全てを手に入れたボビー・ジェントリーは、「これで終わりにする」と、突然全てから引退し二度と戻る事がなかった。

 

ビリー・ジョー・マカリスターがタラハッチー橋から身を投げたのは何故?・・

前の日に女の子と二人で橋から捨てたのはいったい何?・・

不思議な詩の内容を問い詰めるメディアの問いに対し、

「二人が何を捨てたかなんて大した事じゃない、重要なのは他人に起きた悲劇など人はそれほど気にかけないという事」「あなた達メディアと同じよ」と答えたという。

 

 

衝撃的事件に対するコミュニティーの沈黙と家族の中にすら存在する人の繋がりの希薄さ、その孤独を埋める為に情報にすがり、更に孤独になって行く。現在に通じるものがある。

 

音楽業界の女性の権利を勝ち得た先駆者として彼女自身の生き方も

とてもミステリアスである。

今だに彼女の信奉者は多い。