2024年1月25日 サントリーホール

N響定期Bプロ ソヒエフ指揮

 

今年2回目のクラシックコンサート。

前回のブログに定期会員はその年のプログラムで年ごとに決めると書きましたが、

実はN響定期は大先輩に譲り受けた席なので無条件に更新しています。

大先輩は昭和34年にN響会員になったそうで、当時はNHKホールもなかったと思うのですが60年近く会員継続して、年齢的な事情で私に譲ってくださることになりました。コロナ前のサントリー定期はなかなか空きがなかったようなのでありがたいお話というほかありません。

昭和34年など私が生まれる前の時代で、その方はベームのフィガロやカラヤン&ベルリンのベートーヴェンといった日本のクラシック史に残るコンサートを経験されたそうです。

ベルリンが英雄の3楽章の3本ホルンを吹いた時に「あの箇所って実演でも本当にできるんだ」と感心したという話を伺いましたが、今の日本のオケのレベルたるや隔世の感ありとはまさにこのことです。

約40年前の私が二十歳の頃ですらノイマン&N響のマーラー3番をテレビで鑑賞した際、終楽章の金管は乱れに乱れ「これが日本を代表するオケなのか」と暗澹たる思いに駆られたことは今でも忘れられない記憶になっています。

30年前ですら危ういところはまだまだあって、日本のオケがマーラー9番を演奏するときは3楽章のトランペットソロは「ちゃんと乗り越えてくださいね」と、いつもドキドキしながら聴いていました。

 

はい、それで今日のN響。

3本ホルンはもちろんパーフェクト。

なによりも何度も実演に接してきたし、CDも数えきれないほど聴いている「英雄」を、ソヒエフとN響は生まれたてほやほやの音楽であるかのように生き生きと演奏してくれました。

私自身「一番音楽を集中して聴いていたのはいつか」と問われれば「中学生から高校生にかけて」というのが正直な答えです。

年を重ねるごとに当然のことながら社会的責任は重くなり、仕事のことが心を一切よぎることなく全楽章を聴くことができるのは5回に1回くらいだと思います。先日のプレトニョフのシベリウスも今日のソヒエフの英雄も雑念が入ることなく音楽に集中できました。

今日も素敵な時間をいただきました。

昨年秋、ソヒエフがウィーンフィルを振ったときより今日の方が私は好きです。

(前半のモーツアルトのヴァイオリンとヴィオラのための協奏曲もとても楽しめましたが、私の場合、前半と後半のいずれかが傑出した演奏だと他方の演奏が記憶から押し出されるようです。心に残ったのは「英雄」でした。)