極致の緊張と疲労と後悔と失望と。
言葉にもできない複雑な感情がすべて混ざり合って、
車の中の空気が我々を押しつぶそうとしていました。
最後に乗ってきた2男は、声をかけるのもためらうほど、
悲痛な面持ちでした。
すべて私のせいでした。
気力も体力もパンク寸前でしたが、けれどすぐに移動しなればなりませんでした。
式に使う写真を今日中に作っておかなければならなかったのです。
私はそのまま車を走らせてA街の中心街へ向かいました。
沈黙が続く重い時間が流れました。
しかし、閉店前の店に滑り込んで中で写真を選びはじめると、
やっとみんなに笑顔が戻ってきました。私はほっとしました。
そこでは、姉と兄たちが、
可愛い弟の、最高にかっこいい弟の雄姿を選ぼうとしていましたから。
感無量でした。
もう日没も近づいていて、
私は家に残してきた母のことが心配でした。
しかし私と1女はまだ行くところがあったので、
息子たちには先に帰ってもらおうと思っていました。
実は1女はどうしても滞在中に 3男の旅立ってしまった場所 D村橋を
訪れたいと言っていたのです。
最初私は躊躇しましたが、彼女が行くのなら一緒にということになっていたのです。
それを話すと、息子たちは驚いた様子でした。
もちろん、彼らも私たちと一緒に行きたいと言えば断る理由はなく、
けれど、こういうことは個人の気持ちなので、強制することではありません。
怖いから行かない、行くけれど車の中にいるとか、
すべて本人の心が決めることだと思うので、
その事を息子たちには伝えました。
ところが暫く考えた末、1男も2男も、
D村橋にも一緒に行くというのです。
これも予定外のことでした。
D村。
彼らが生まれて大きくなった場所です。
全員で訪れるのは、どれだけぶりだったのでしょう。
村に一軒ある花屋に寄って、
各自1輪ずつ花を買いました。
純な3男のイメージの白い薔薇。
それを手に、D村橋の駐車場に着きます。
雪がちらついていました。
この極寒の時期に訪れる人は稀でしょう。
橋には雪が積もって、それがまた凍り、ガタガタになっていました。
そこを一列になって進み、橋の中央で止まります。
向こうの方に、車の走る県道が通りますが、
3男の旅立ったのは反対側。
凍った林、遠くに山が臨めます。
- これが君の見た最後の景色。
それが見える淵に、
一人ずつ 白い薔薇を置きました。
それから
また再び、
誰からともなく・・・・・・
肩を組んで円陣になりました。
4人が橋の上で
3男くんの旅立った場所で
固く固く抱き合っていました。
「3男くん、見て。
僕たち、私たちは 団結していくよ!」
帰り道、不思議なことがありました。
あんなに曇って暗く、雪も舞っていた空が急に明るくなって、
西の空がオレンジ色に染まっていたのです。
残された私たちに新しい明日がやってくるよと
予告してくれているようでした。
何かに導かれるかのように
予期していなかったことが次々とあったこの日、
けれど 子どもたちにとって、そして私にとって、
それはすべて必要なことでした。
3男のいない隙間は大きすぎて、
とても埋め合わせをすることはできないけれど、
残った私たちは決して離れないと誓ったのです。
この日なくしては、
私も子どもたちも、きっと一歩も前に進み出せていなかったと
今でも思っています。