嵐の二宮くんがMCをつとめる番組「ニノさん」で面白い企画をやっていました。学-1グランプリという、各分野の学者さんがそれぞれの専門分野で数分のプレゼンテーションをおこなうというもの。

このなかで優勝者のプレゼンだけが群を抜いてよかったのです。さて、何がとびぬけてよい結果を導き出したのでしょうか?

優勝したのは経済学者の岸博幸さん。テレビでおなじみのロングフェイスエコノミスト。セーラームーンのコスプレもすれば、アレックスと合コンもする。異色の(イロモノ?)経済学者です。

この方のプレゼンだけでなされていたのが、以下の2ポイント。

■目の前の聴衆に、語るテーマをベストマッチさせた

他の学者さんは、ウィルス学の専門家や、物理学の専門家、筆跡鑑定の専門家など。それぞれが非常に興味深い内容ではあったのですが、みんな”自分の言いたいこと(=自分の専門の話)”を語っていました。

それでも内容がさすがなので面白かったのですが、岸さんは一歩上。彼が語ったスピーチのテーマはこれでした。

「経済学でわかる、10年後に出世する男の見分け方」


会場にいるのは二宮くんのファンであろう20代前後の女子が大半。その聴衆にもっともベストマッチする話としてこのテーマを持ってきたのです。

今後結婚相手を見つけていくのに、その男性が出世して高い収入をもたらしてくれるのか、ないしはそうではないのか? 聴衆にとっては、非常に身につまされるテーマなのではないでしょうか?

もしこれが普通に「10年後に必要とされる3つの能力」として語られていたら、ここまで聴衆のハートを掴めなかったでしょう。

私は自著のなかで「聴衆の特有ニーズに合致する未来を語れ」と言っていますが、まさにそれがなされていました。


■聴衆の感情を揺り動かす

岸博幸さんのプレゼンはこんな表現で始まります。

みんな2020年のオリンピックで明るい未来を描いていますが、その先の未来はどうでしょう?2025年問題というものがあり、多くの仕事はグローバルとデジタル化の波で価値を失います。結果として経済格差は広がる。正直、若い方にとって将来は暗いです。

これを聞いて、私もドキっとしました。若くもないのに。

不安を掻き立てられるわけですね。そうすると、聞き手は何かにすがりたくなります。そこで、よりどころとして指し示られるのが本題にある「10年後に出世する男の見分け方」。

「それさえあれば、ハズレクジを引きませんよ」と。非常に巧みな展開です。



プレゼンの内容、3つのポイント自体は正直、それほど大したことないというのが私の印象です。そもそも2-3分のプレゼンですからここが限界だというべきでしょう(論拠を示す時間がたりないという意味で)。

にもかかわらず圧倒的な差をつけたのが、上記の2つのポイント。あなたのプレゼンでこれを入れるとしたらどうなるでしょうか?