最終回、自分たちでやっていくあれこれ

「今度こういうのを始めるってPTAの先輩からみんなに配ってきてくれって」

 久しぶりにかつての子供の同級生のお母さんたちとの忘年会に顔をだしたおっかさん、その一人からチラシのようなものを差し出されました。

「……短大? 」
「そう。今の支援学校だと高校卒業と同時にすぐ社会に出ることになるでしょ? もうちょっと社会に出るまでに経験を積ませたいなというお母さん方がかなりいらっしゃって、今度NPO法人立ち上げて、短大に相当するような学校を作ることにしたらしくて」
「ええっ? ほんとに? 作っちゃったの? 」

 支援学校を卒業したお子さんをお持ちのお母さん方が集まってそういう施設とかを立ち上げるケースがあるとは聞いてはいたものの、おっかさんの身の回りでそういうのを始める人に出くわしたのはこれが初めてです。おっかさん自身もいつかそんなのが出来たらいいな~とか思っていたので、もらったパンフレットを食い入るように見てしまいました。

「学校の方に”よろしかったら”ってもっていったらしいんだけど、”ウチは卒業と同時に社会で通用できるように仕上げていますんで、そんな気を緩めるようなところはとても紹介できない”って断られちゃったんだって」
「これ、お金っていくらかかるの? 」 
「パンフレットに書いてあったんじゃないかな……。学校だから勉強が中心で、就労施設Bみたいにお金が稼げるわけじゃないんだけど」

 どうしよう。
 この一年バタバタしていて身にしみてわかったことがある。
 今の息子の状態そのままじゃ社会人としてたぶんやっていけない。
 でも自分一人で鍛え上げるには限度もある。
 学校に通っている間にものになってくれていればまだマシだったけど、卒業した今となっては代わりに技術を教えてくれるところを探すだけでも一苦労。見つけたら見つけたで定員に空きがなかったりする。

「……とにかく主人と相談してみるわ。かなり出費がいるみたいだし」
「そうしてくれると助かるわ」

 頭の中で素早く計算して捻出できなくもないと算盤をはじいた上でおっかさんはそう言った。
 でも、ここを卒業して落ちつく先がちゃんとあるの?
 また行く先浪人みないな形で家でウロウロさせるの?
 ……そういう不安がないわけじゃない。
 その時には。
 この学校みたいな形で落ちつく先が作れるだろうか。
 それとも一人で家でいても働けるような状況が作れるだろうか。

 ご主人の了承を得て、おっかさんの「子供を働かせよう」というバタバタ騒動も一段落つきそうです。
 次にバタバタ騒動が起こるのは、お子さんが卒業する二年後ということになるでしょうか。
 その間のお子さんの成長を祈りつつ、この話を終えることにいたしましょう。


 8、フリーマーケットで売るというやりかた

 ネットでいろいろと自作商品を個人で売る方法を調べたおっかさん、実は近くの市民公園で「手作り市」というフリーマーケットが毎月行われていることに気がつきました

「そういえば公園の入口あたりに立て看板が立っていたことがあったような……」

 考えてみれば。いくらネットで売ってみても子供が実際に暮らすこのご近所での反応に何か変わりがあるわけでもありません。毎月公園の手作り市に顔を出していれば、「ああ、あそこの坊ちゃん、ああいうの作ってらっしゃるのよねぇ」とわかっていてくださる方も出てくるというものです。
 とは言うものの、実はおっかさん、そういう市に行ってみたことがありません。
 ならば善は急げ。日にちを調べて行ってみることにしました。

 いつもはだだっ広い芝生広場のあちこちにテントやテーブルが立ち並び、ちょっとしたお祭り気分。久しぶりにおっかさんの気持ちもテンションアップです。
 よく見ると内容は様々。手作りクッキーや自分の畑で収穫したばかりの野菜、自作デザインのTシャツに手作りボタンや刺繍入りハンカチ、フエルトとか木彫りとか針金細工とかのマスコット、手作りの豆本からアクセサリーにいたるまでずらずらずら~っと……。
 小さなテントの下でミニ喫茶をやっているところもあれば、小さなテーブルの上をミニ王国のようにデコレーションしているところもあり、値段や売り文句をポップで飾っているところもあれば、ボードを立てて「平日はこちらで営業しています」なんて書き込んでいるところもあり……。

「え? お店屋さんなんですか? 」

 驚いておっかさんがそう声を上げると、お店の人はニッコリして。

「ええ、やっと念願の店が持てまして。まだ小さい店なんですけど、よかったらどうぞ」

 こういうところから身を起こしてお店を持った人もいれば、昔からおっかさんもよく知ってるお店の人が出店しているのをで見つけたり。

 だけど。それらがこういう場所で集っていても、プロとアマチュアの区別がつかないぐらいにレベルが高いのにおっかさんとしては内心へこみそうになってしまって。物の完成度の高さもさることながら、飾り付けにネット等での告知もしているらしいのを他のお客さんとの会話で察してしまって。
 ……うちの子のような、ど素人がぽっと出てきて店を出してもお客さんが素通りしてしまうだろうということは、自分の行動を省みてもまるわかりだもんなぁ、などとため息をこっそりついてしまいました。

「あら! こんなところで! ねぇ! よかったら見てって! 」

 ふと聞き覚えのある声に見てみれば、それは子供の同級生だった子のお母さんで。よくよくみればその子も他の人と一緒にテントの下で並んでいます。

「わぁ、お久しぶりぃ! どうしてまた? 」
「うちの子の施設でここに出品することになったからそのお手伝い。時々日々の活動でつくったものをよく売りに来ているのよ」

 そういえばその子はどこぞの生活介護のデイサービスを利用しているとは聞いてはいたおっかさんでしたが、まさかこういう活動までしているとは知りませんでした。

「ぼっちゃん、今日はどうしたの? 」
「今日は主人と留守番~」
「連れてくればよかったのに~」
「邪魔になるだけなんだもの~」

 用意された長テーブルの上にはそういう日々の活動で作られたのであろう手織りの布で作ったティッシュカバーや紙ネンドで作られたマグネットなどの小物、そしてちょっと不格好ながらも素朴なクッキーなどがずらりとならんでいました。

 おっかさんの今日のおみやげは手作りクッキーです。
 ……しかし、息子さんが自力であの市の中に混ざってお客さんに来てもらえる日は来るのでしょうか。おっかさんの協力がなくはないとはいえ、たった一人でやっていかなくてはいけないということに少々荷が重く感じられた一日でした……。

さて今回はいつもの企画はお休み、子供たちの文化祭に行ってきました。 

$ドタバタエプロン

出し物もあるのですが、通常学校内で行われている学習の成果の発表会という面もあるので、いままで作った作品や上級生の方々の取り組みもみれて、なかなか面白いものになっていました。

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ここは部のいろいろな仕事の基礎を学ぶ授業、ワークスタディの販売展示室でした。
ワークスタディには園芸、軽作業、織染、陶芸の四つがあり、それぞれ野菜や花の苗木、牛乳パックから再生した紙パルプから作った再生紙のカードや紙粘土で作った小物、さおり織でつくったハンカチなどの小物、お皿やコップが売られていました。
またワークスタディの一環として別の建物に設置された喫茶コーナーで行われている接客実習の成果発表として、今回は校内に喫茶室を再現。クッキーの販売とともに喫茶店も営業していました。(コーヒー頼んでみたら、全部100円以下。まぁ、文化祭なのだけど)

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高等部のワークスタディはそれだけではありません。メンテナンス関係への就職も考慮してその実習も行っています。
渡り廊下を黙々と掃除する姿はこの後プロとして旅立つことを考えると頼もしく思えるものでした。

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ちょっと驚いたのが文化祭の催し物として足湯が設置されていたこと!
ワークスタディとしてやっているとは聞いたことはないので完全に文化祭用の催し物なのだとは思いますが……盛況でした。

$ドタバタエプロン

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上級生の子たちだけでなく、うちの子たちの通常学習の成果も発表されていました。
上の子たちの発表は紙粘土で作ったケーキ。綺麗にかわいらしく作られたケーキは、各学級でお誕生会などのお祝いごとがあったときの飾りつけなどにされているようです。

$ドタバタエプロン

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下の子の発表は布染めです。下の子にしてはかなり大人しい配色にいつもと勝手が違ったのかなと思ったり。

そして舞台上でのそれぞれの学年発表!
二人ともおおいに頑張ってくれました!

$ドタバタエプロン

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……ええ、がんばったんです、一応。