(BL/OS/お山妄想小説)

*SFファンタジー小説

 

 

(6)

 

急に、櫻井君からの手紙が届かなくなった。

 

俺の手紙も、ポストに入れても消えずに、ずっとある。

 

毎朝、ポストを見に行くけど、俺の消えない手紙があるだけだった。

 

 

 

2週間過ぎた頃、なんだか腹が立って、思わずポストに文句を言った。

 

「お前、壊れちゃったの?」

 

ポストは、何も言わないけど。

ふるっと揺れて、いきなり崩れて壊れた。

 

「うわっ! 嘘! ごめんってば!」

 

バラバラに壊れて落ちたポストを拾ったけど。

 

「粉々じゃん……」

 

木製だったポストは、修理できないほど粉々だった。

 

「もう……手紙、来ないってこと……?」

 

粉々の欠片の中には、俺の書いた手紙。

 

そっと木片や土を払って拾う。

 

自分の手紙を読み返した。

 

 

『櫻井翔様

 

過去の貴方に、会いに行っても良いですか?

 

どうしても、貴方の姿を見てみたい。

 

未来の恋人だと言う貴方は、今、2018年は何をしてるのかな。

 

すごく、会いたいです。

 

 

大野智』

 

 

ため息をついて、もしかしてと思った。

 

「まだ、会うのは……ダメってことなのかな?」

 

俺たちが出会うのは、2020年じゃなきゃ……いけないの?

 

神様が決めた運命なんだろうか。

 

 

ガッカリした。

 

手紙は、もう来ないのかも知れない。

 

2年後、会えるかどうかも、分からなくなった。

 

 

「……そうだ」

 

櫻井君の手紙に書いてあった人に、会いに行ってみようか。

 

もしかしたら、櫻井君を紹介してもらえるかも知れない。

 

櫻井君の手紙をカバンに入れて、家を飛び出した。

 

 

 

――――――

 

 

 

「櫻井翔ですか?」

 

 

 

手紙に書いてあった人物……相葉雅紀さんは、俺が会いに行くと驚いていた。

 

「はい……あの、紹介してもらったんです」

 

「そうですか、ちょっと確認しますね」

 

彼は、そう言ってスマホを出す。

 

「うわっ、あの、彼っまだ知らないんで!」

 

「へ? でも、紹介したんでしょ?」

 

「そうなんだけど……」

 

 

 

「? まあ、待っていて」

 

不思議そうな彼が、櫻井君に電話をかけようとする。

 

「ま、待って! これには事情があって!」

 

「ええ? どういうこと?」

 

困った。

 

未来の恋人だけど、会ったこと無いんだよ。

 

それに、櫻井君だって、まだ俺には会ってないはずで。

 

……ああ、俺って、馬鹿だなあ。仕方ない、逃げよう。

 

「す、すみませんでした! 帰ります!」

 

帰ろうと向きを変えるけど、すごい馬鹿力で腕を掴まれて、逃げられなかった。

 

「ええ? 何かあるから来たんでしょう?」

 

「いや、その、大阪の展示会が台風で……」

 

「え? もしかしてさ、大野さん? 大野智さん?」

 

「は、はい……」

 

「台風で展示会、ダメになったって大阪支社の子に聞いてたよ、そのこと?」

 

「ま、まあ……」

 

「よくわかんないけど、まあ相談なら聞きますから、座って下さいっ、どうぞ!」

 

相葉という人は明るくて、さっきの櫻井翔の名前のことは忘れて、展示会の相談に乗ってくれた。

 

櫻井君、良い人知ってるんだなあ。

 

きっと、櫻井君も良い人なんだな。

 

親身に展示会のことを聞いてくれた。

 

でも、最後に聞かれたけど。

 

「ねえ、櫻井翔って? 彼と本当に知り合い?」

 

「……名前しか知りません」

 

「どういう意味?」

 

「俺も、わかりません」

 

「画家って、みんな、そんなに変わってんの?」

 

最後は、もうすっかりタメ口で。

 

この日から、彼とは知り合いになったんだ。

 

 

続く

 
 
笑ううさぎキラキラグリーンハーツ