嵐 OS ・お山妄想です
BL妄想
お話の全てはフィクションです
side 翔
個展が終わってからの1ヶ月、智は休みだったから、毎日連絡を待つだけの日々だった。
でも、カズヤ君からの連絡は無かったんだ。
「本当に、来るのかなあ……」
約束の三日どころか、十日過ぎても連絡は来ない。
俺は、なんだか裏切られた気もするし、智が可哀想で仕方ない。
ポツンと誰かを待つ智の姿は、高校生の頃の智が思い出されて、俺が辛かった。
いつも一人ぼっちだった智。
学校では明るくて、可愛い人気者の高校生だった。
俺は、何も分かっていない教師だったから、人気者の彼はお調子者くらいに思ってた。
……思い出しては、申し訳なくなる。
そんな時に相葉君から連絡が来たんだ。
『ご飯でも食べようよ、智と先生と俺と……』
「え? 恋人できたの?」
「そうだって」
なんと、相葉君は恋人が出来たそうだった。
――――――
相葉君の恋人は、小柄な色白の華奢な……青年だった。
「驚いた? 俺も驚いたんだあ」
「相葉君、いつから付き合ってんの?」
「先週から♪ あ、でもさあ、知り合ったのはもっと前。同じ教師だったから他校のねえ……」
なんでも話そうとする相葉君を、恋人の彼が赤くなって止める。
「相葉さん! 恥ずかしいってば」
「ああ、ごめんごめん」
ずっと相葉君を、恋人さんは好きだったらしい。
でも言えない彼の様子を見て、思ったんだって。
雰囲気が、智と先生みたいって。
直球で素直な相葉君が、言ったそう。
「ねえ、もしかして俺のこと好き?」
それを聞いて、俺と智は大爆笑で、恋人さんは真っ赤になってしまった。
「すごい、なかなか言えないよねえ」
「ええ? そう? 智なんて、毎日プロポーズしてたじゃん」
「ああ、そうか」
そう言って、また爆笑になった。
相葉君は、俺たちの出会いと恋を知っている少ない友人だ。
四人で、食事の帰りに母校を通った。
「あのポスト、まだあるの?」
「あるよ。今の時期は、空っぽかなあ」
あのポストへ、カズヤ君が行かなければ、きっと今日は来なかった。
俺は、ちょっと考えて言ってみた。
「俺の手紙、内緒で入れてもいい? ダメかな?」
「えっ、何書くの?」
「カズヤ君へ書くの。っていうか、俺たちみたいな子にも」
「へえ、面白いね。いいよ〜」
少し皆、酔っ払ってるせいで、ノリノリで手紙を書いて相葉君に頼んだ。
ポストの手紙は、数年保存されるそうだ。
始まって数年だから、まだ処分されたことは無いらしい。
たとえカズヤ君に届かなくても。(まあ、届くわけないけど)
過去の俺たちのような子に、この願う気持ちが届くように。
「夢が叶いますように」
「好きな人を諦めないで」
「必ず、幸せになれる日が来る」
思いつく限りの簡単な、でも大事な言葉。
「逢いたい人には、必ず逢いなさい」
たとえ手紙は読まれなくても、この場所へ来る人に、何か届く気がする。
最後に、書いた。
「カズヤ君に逢いたい」
もう、念を込めて、大きく書いたら、皆が笑った。
だけど、誰かの為のお願いって、祈りって届くと思う。
……カズヤ君が、俺たちのことを祈ってくれたように。
続く
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