嵐BL妄想(お山OS)

登場人物等全てフィクションです

 

 

 

side  翔

 

 

なんだか信じられないまま……智との暮らしが始まった。

 

あの日。花束が揺れて舞う花びらは、夢の中みたいで。

 

智は、精悍な大人の男性になっていて。

 

 

 

それなのに。

 

「先生、結婚して」

 

俺で良いの?

 

大丈夫なの?

 

俺じゃ、智の邪魔にならない?

 

グルグルする頭の中を見透かしたように、智が悪っぽく笑って言う。

 

「2度と俺から逃げないでね? もう絶対逃さないからね?」

 

「逃げたりしないけど……逃げたらどうなるの?」

 

すると、俳優みたいな綺麗な顔で悲しそうに、でも圧をかけて言う。

 

「今度は俺、本当に死んじゃうと思う」

 

「えっ!」

 

智は、お腹を抱えてゲラゲラ笑って転がった。

 

「もうっ! 冗談やめてよっ! 俺、冗談嫌いなんだって!」

 

顔が真っ赤になってるのは、自分でも分かった。

 

「翔は、今も先生のまんまだなあ」

 

「……バカみたいじゃん」

 

「そうじゃなくて……」

 

抱き寄せられて、ドキドキする。

 

なんだか、智の方が大人みたい。

 

……ってもう、大人だよね。

 

高校生の寂しい少年は、もういない。

 

 

 

 

 

 

 

side 智

 

 

翔は時間が止まってるかのように、若くて可愛いままだ。

 

俺が見てきたどんな人より、世間知らずでもある。

 

そんな翔といると、心が癒された。

 

 

 

 

俺を売り出してくれた女優さんは、海外大手の事務所と契約している。

俺もその事務所の所属になってる。

 

だから、たまにその女優さんが連絡をくれる。

俺がカッコ悪いと、一応恋人設定だったから「カッコよく成功していてね?」って釘を刺してくるんだ。

 

今日も、彼女から連絡が来て話し込んでしまった。

通話を切ると、翔がいない。

 

 

「翔……?」

 

寝室を覗くとポツンとベッドに座っていた。

 

「どうかした?」

 

翔の隣に座って顔を覗き込んだ。

 

「いや……その。電話の内容聞いたら、悪いかなって思って……あの……」

 

言いにくそうに、耳を赤くしてる。

 

そっか。

なるほど。

気が付かなかった。

 

「……えっと、恋人設定だって言ったよね?」

 

「でも……すごく仲良いよね……」

 

「まあ、古い付き合いだし、ホストとお客だったから」

 

彼氏のように振る舞ってあげるのが、仕事だったからね。

外から見れば、距離感ゼロで見えるレベルにしなきゃいけないし。

それを錯覚してしまう人も多い。

翔は分かってるようで、分かってない事がある。

 

「それって、ヤキモチ?」

 

「ご、ごめん」

 

「ヤキモチなら、嬉しいよ」

 

翔先生は、いつまでも純粋な俺の救世主だ。

 

「俺が好きなのも、恋人になって体を繋いだのも、翔だけだよ」

 

「俺だって……」

 

「本当? 女の子と付き合ったことあるでしょう?」

 

「智の後は、誰もいないし!」

 

向きになって言うのも可愛い。

 

「俺のせい? 他の男には、ときめかない?」

 

「はあ? 俺はっ」(怒)

 

「嘘だよ」

 

キスして、笑って抱きしめる。

 

 

 

本当にこんな日が来るなんて。

 

まるで夢のようだった。

 

 

続く