BL 嵐妄想小説 です(OS・お山)

登場人物等・全てフィクションです

理解と愛のある方だけお読みくださいませ。

 

 

 

 

「君色」

 

あるスターが恋をしたのは、

 

やっぱりスターでした。

 

 

近い場所にいる彼らは、

 

ただでさえ難しいのに。

 

 

同性同士・友人で、仕事仲間。

 

 

両片思いなのに、難しい……。

 

拗らせてしまうのは、仕方ない。

 

 

そんな彼らの心の色が見せる風景。

 

 

(1)

 

 

 

赤く染まった綺麗な葉っぱは、あの子の色。

 

赤くて赤くて可愛い君の色。

 

緑でも、黄色でも、紫でもなくて。

 

俺にとっては、特別な赤なんだ。

 

 

――――

 

 

「あ、翔ちゃん。もう終わり? 一緒にメシ行かない?」

 

仕事終わり、なかなか会えないんだけど、珍しく一緒に上がれたから誘ってみた。

 

「……あ、ごめんね。ちょっと用事が……」

 

「そうか、翔ちゃん忙しいもんな。じゃまた今度ね」

 

「うん」

 

なんだかこんな時の翔ちゃんて、いつも緊張した顔してるんだ。

 

機嫌が悪いのかなって、最初は思ってたけど違うよう。

 

 

「あれ、またフラれてるう。もうモテないんだから」

 

「ええ? フラれてないんじゃない? 翔ちゃんでしょ?」

 

 

クスクス笑ったニノと相葉君がやって来ていう。

 

「もちろん、フラれてないよ」

 

そう、フラれてないんだ。

 

あの顔は、……分かってるよ。

 

「でも、翔ちゃん帰っちゃったじゃん。今日は何んも無いって言ってたのに」

 

ニノは、まだ笑ってる。

 

相葉君も、不思議そう。

 

「今日は、仕方ないんだ、あんな顔してるんじゃさ」

 

「どんな顔?」

 

「……秘密」

 

 

じゃあねって、二人を置いて歩き出す。

 

自惚れかな?

 

それでもいいや。

 

きっと、俺のことが好きな翔ちゃん。

 

冷静で、落ち着いた人が、俺が誘うと動揺してしまう。

 

きっと俺の気持ち、分かってるよね?

 

 

『ごめんね』

 

いつも、そう言いながら、目がうるんでる。

 

まあ、そうだよね。

 

俺も、翔ちゃんも男だったり、友達だったりするからさ。

 

もう少しだけ、待ってあげる。

 

俺を見ると、赤くなっちゃう可愛い人。

 

バレてないとか、思ってるのかなあ。

 

「可愛いんだから……」

 

 

外に出ると、真っ赤になった紅葉が、夕陽を浴びてとっても綺麗。

 

それは、そのまま翔ちゃんみたいだ。

 

恋が始まるまで、あともう少し。

 

なんて告白しようかな。

 

なんて言えば、1番喜んでくれるだろう。

 

でも、分かってる。

 

どんな言葉でも、きっと赤くなっちゃうね。

 

ハラハラ落ちてきた紅葉の葉。

 

それは、赤い君にそっくりだった。

 

 

 

 

 

 

(2)

 

 

がんばって避けて来たのに。

 

智君と二人になってしまった。

 

仕事終わり、「一緒に……」ご飯に誘ってくれる。

 

昔なら、すぐ行けたけど。

 

「ごめんね」

 

断るしかないのが、申し訳ない。

 

微笑んで、またねって言ってもらって落ち込むんだ。

 

どう接していいか分かんない。

 

鋭いニノと相葉君コンビが、いつも言う。

 

 

「大野さん、待ってるよ」って。

 

「一緒にいけば?」って。

 

 

 

行けないよっ。

 

俺たち、友達で。

 

俺たち同性同士で。

 

……迷惑かけたら、絶対に後悔するんだから。

 

 

今日も朝から天気が良くて。

 

青い空を見ても、頭の中には、彼の事しか浮かばない。

 

気が付けば、一日中考えてしまう。

 

智くん、何してるかなあ? って。

 

本当、毎日ぐるぐるしちゃうんだ。

 

 

 

今日の空も、綺麗で青い。

 

……彼みたいに。(もう重症)

 

 

 

 

 

 

 

(3)

 

 

相変わらず、俺から逃げ回ってる気がする翔ちゃん。

 

翔ちゃんと行けなかった店で、ニノと相葉くんとご飯を食べた。

 

美味しい海鮮の豪快な焼き料理が出るお店。

 

翔ちゃんなら、喜んでくれそうだったのにな。

 

 

 

無言で、焼き蟹と戦っていると、ニノと相葉君は、俺をけしかける。

 

「大野さん、押しが弱いんじゃない?」

 

「翔ちゃん、このままじゃ捕まんないよ?」

 

「何それ? 捕まえるの? 無理矢理?」

 

俺の言葉に、二人は顔を見合わせる。

 

「無理矢理って思ってるの?」

 

「ん? まあ……。とにかく無理矢理は嫌なの」

 

無理に引き込んだらさ、後悔するよ、きっと。

 

 

 

「押し倒せば? 何とかなるんじゃない?」

 

「はあ? 相葉さんて、やっぱり頭おかしい……」

 

なんだか、二人で言い合いになってる。

 

それを聞きながら、赤い蟹を見て。

 

「翔ちゃんみたい……」

 

赤い赤い顔をした翔ちゃんは、可愛かったな。

 

「やっぱり、食べたいんでしょう?」

 

相葉君が、ほらあ♡なんて、俺を指さして大笑いする。

 

「相葉さん! 下品だって!」

 

「何? 変な意味にとってんのは、ニノだろう?」

 

確信犯な相葉君が、ニノを揶揄ってる。

 

 

赤くて、誰より硬い翔ちゃん。

 

きっと、これより赤くて可愛いだろうなんて、思いながらまた蟹に手を伸ばした。

 

 

「大野さん、聞いてんの?」

 

「さあ……美味しいなあ」

 

美味しいものは、大切にとっておかなきゃ勿体ないもん。

 

 

赤い紅葉に、赤い蟹。

 

何を見ても、きみを思い出してしまう。

 

こんなに誰かを好きなんて。

 

初めてかもしれない。

 

 

 

 

 

 

(4)

 

 

 

 

 

ひらひらと、衣が舞う。

 

着物姿の松潤が、鮮やかな着物を着て舞うようにポーズをとる。

 

紫の透けたリボンが、撮影用の風に吹かれてクルクル回った。

 

たくさんのフラッシュとシャッター音。

 

撮影スタジオは、熱気と見学者でごった返していた。

 

 

 

「良いなあ……」

 

あんな風に、大野さんの前で動けたらなあ……なんて思って見てると。

 

「なんなの? 翔さん。暇じゃ無いくせに、珍しく人の仕事見に来てさ」

 

そう言って、いつの間にか松潤がそばに立っていた。

 

「いや、ちょっと空き時間が長くて。時間潰しに」

 

「ふーん。いつも新聞読んだり、資料読んだり、休み時間も忙しそうなのに」

 

「ちょっと、そんな気にならなくて」

 

「何? 恋人でもできた? フラれたの?」

 

「へ? 変なこと言うなよ」

 

「ふふ……」

 

意味ありげに笑って、俺の隣に座る。

 

「松潤こそさ、恋人は?」

 

「ああ、そうだなあ。仕事優先するから、フラれてばっかだよ」

 

フラれたなんて、聞いたことのない超モテ男だけど。

 

でも。

 

仕事優先じゃなあ、俺も同じだな。

 

「翔さんは、同じじゃないよ?」

 

「ええ?」

 

俺の心の声が聞こえたように、松潤が言って。

 

「松本さん、お願いします」

 

「はい」

 

じゃあねって、笑って去っていった。

 

松潤の着物と一緒に、紫のリボンが舞う。

 

撮影のバックは、ブルーで、大野さんを思い出す。

 

「いつまで、逃げてりゃ良いんだろう……」

 

しつこい女性からは、逃げることもあったけど。

 

好きなのに、逃げるのって、すごい辛い。

 

「松潤の恋人って、誰かなあ、どうやってるんだろ」

 

松潤と噂のあった人たちが、浮かぶ。

 

ふと、大野さんと噂のあった女性が頭に浮かんで、へこむ。

 

怖くて聞いたことないけど。

 

どちらにしても、望み薄じゃん。

 

……男だし。

 

ブルーバックは、いろんな景色を移すように、映すために使われる。

 

その画像や映像を綺麗に合成するために。

 

大野さんの景色に、俺も入りたい。

 

「俺って、こんな女々しかったっけ……」

 

自慢じゃないけど、片想いは初めてなんだ。

 

世間の胸が痛いとか言うのが、初めて分かったよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

(5)

 

 

 

 

久しぶりのスタジオで。

 

多い見物客の中での撮影は慣れているとはいえ疲れる。

 

重い着物を優雅に揺らせての撮影は、顔以外は汗でびっしょりだ。

 

(顔はね、まめにケアするから)

 

珍しく翔さんが、俺の撮影を見に来ていた。

 

相葉君とニノが、お節介を焼いてる両片思いの二人が、翔さんと大野さんだ。

 

大野さんは、分かってるみたいだけど、翔さんの様子を伺ってる感じ。

 

翔さんだけが分かっていない。

 

あんなに大野さんは、優しくいつも翔さんを見てるのにね。

 

目も最近は合わせられないようで。

 

……中学生のような翔さんは、初めて見るよ。

 

大野さんは、強引に出ない。

 

それは、翔さんの覚悟が決まっていないから。

 

最初にしくじると、翔さんみたいな人は、拗らせるからかな。

 

……もう十分拗らせてるようだけど。

 

でも、この先はちょっと大変だよね。

 

同性で、芸能人で、同じグループなんて。

 

噂やスキャンダルも、これからは、さらにフェイクが必要になってくるだろうし。

 

まあ、男同士だから、子供を産むわけじゃない。

 

この先の人生は、まだまだ長い。

 

ゆっくり、片想いを楽しめるのは、きっと今だけだから。

 

 

 

ひらひら着物が舞って。

 

効果的に、紫のリボンが光って風に舞う。

 

 

 

その美しさも、今だけのものだって、俺らは知っている。

 

皆の期待と、愛情と憎しみさえ纏って、舞い続けなきゃならない運命だ。

 

たくさんの感情の色を、美しい色に変化させて。

 

これからも、輝いていく。

 

 

 

カメラマンが、走って声を張りあげる。

 

たくさんの機材の音が響く。

 

 

 

人の恋は、美しい風景だ。

 

それを眺めて、俺も癒されてる。

 

心が綺麗な人たちの恋は、素晴らしい。

 

 

 

 

……二人の恋の幸せを、そっと祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

(6)

 

 

赤い、赤い色。

 

それはいつも君の色。

 

真っ赤な色のマフラーを買った。

 

「翔ちゃんに、似合いそう」

 

ふっくらした赤い可愛い唇は、俺以外には見えないように。

 

この赤いマフラーで、隠して欲しい。

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

仕事の合間の休憩時間。

 

食事の時間なんだけど、美味しそうな温かいお蕎麦を頼んじゃった。

 

食べると汗びっしょりになっちゃうから、脱ぎたいんだけど。

 

(さ、智君……めっちゃこっち見てるんだよなあ……)

 

脱ぐに脱げないで、ドキドキしながら、そろそろと食べる。

 

(あ、汗かいちゃう。どうしようTシャツだけなら、恥ずかしくないかな……)

 

ささっと、セーターを脱ぐと、目が合いそう。

 

ニコニコして、俺をじっと見てる智君。

 

ふにゃんてした顔が可愛い。

 

いつもは、「大野さん」て感じなのに、今は可愛い智君なの、ずるい。///

 

 

 

食べ終わって、ふううって思わず息をする。

 

タオルで、ガシガシ汗を拭く。

 

冷たい水を飲んで。

 

 

「落ち着いた?」

 

「うん……え?」

 

 

智君が、そばに立っていた。

 

 

「ど、どうしたの?」

 

「はい、これ」

 

真っ赤なマフラーを俺の首に巻いてくれた。

 

「な、何?」

 

「んふふふ」

 

「な、何なの?」

 

「プレゼント」

 

「プレゼント?」

 

「可愛い、似合うよ」

 

 

そう言って、背中からハグされた!

 

ええええ?!

 

 

「え? 智君! ど、どうしたの?」

 

「こうすると、安心するの」

 

お、俺は落ち着かないんですけど!

 

「あ、あの……」

 

「ドキドキしてるでしょ?」

 

「そ、そりゃあ……」

 

こんな事されて、平気な人っている?

 

……好きな人に。

 

「だから、安心するの。翔ちゃんて、俺が好きなんだなあって思えて」

 

うふふなんて、可愛顔で爆弾を落とされて、俺は固まった。

 

 

 

ちょっと離れた場所にいたニノと相葉君も、悲鳴をあげてる。

 

二人が、真っ赤になってるのが、遠目でわかる。

 

きっと、俺はもっと真っ赤だよね?

 

 

 

赤い、赤い色。

 

それは、あなたのせい。

 

あなたを好きな自分は、真っ赤になるしかないんだもん。

 

 

 

 

「もう、降参です……」

 

小さく呟いた俺に、智君が嬉しそうに笑った。

 

 

 

<いちおう・・・おしまい♡>