(BL/潤翔/妄想小説)

 

 

 

side 潤

 

 

 

……これから。

 

どうする?

 

俺は、どうしたい?

 

翔は、どう考えてるんだろう?

 

こんな俺となんて、暮らしたい筈がないだろう?

 

翔は、テロに巻き込まれて死んだ母さんの愛人で。

 

愛人と暮らす父さんとは暮らせない俺を、きっと仕方なく引き取ったんだから。

 

やっと、アイツは自由になるんだ。

 

……俺から。

 

そこまで考えて、なぜか胸が痛んだ。

 

この10年。

 

俺はアイツと、ろくに喋った事もなければ、作ってくれた食事も食べた事がない。

 

黙って俺の為だけに、暮らしてきた人。

 

 

 

 

 

何をどう考えても、解決方法は見つからない。

 

理由もわからず、落ち込んでしまう。

 

学校に行く気にもならず、サボって学校近くの繁華街を歩いている。

 

潤が心配で、ニノが付いて来てくれていた。

 

 

 

「潤君、どうするの? お父さんとこれから」

 

「さあな、どうするんだろ」

 

「翔さんは、なんて?」

 

「なんも」

 

 

(何も、言ってくれない)

 

 

「潤君、ちゃんと思い出した方が良いよ。今まで潤君を守ってきたのは、翔さんだよ?」

 

「どうして、アイツは俺を……守ってるんだろう?」

 

「どうしてって?」

 

「アイツは、別に俺の親じゃない。ただの母さんの愛人だったんだし」

 

「潤君、それは……。え? ……なんだろ?」

 

 

 

ニノが気配に周りを見回す。何かが、視界の端で光るのが見えた。

 

その時、二人のそばのビルの中から爆発が起きた。

 

「うあっ!」

 

遠く、近くで悲鳴が木霊した。

 

すごい爆風と音で、耳が聴こえない。

 

……気がつけば、地面に倒れてた。

 

ニノが潤を庇うように、気を失っている。

 

「ニノ……! しっかりしろ!」

 

「……潤君……大丈夫?」

 

「ああ、俺よりお前が……」

 

抱き起こしたニノは、痛みで顔を歪めた。

 

片腕を骨折してるかもしれない。

 

爆発したビルは、炎上してたくさんの人が飛び出してくる。

 

ニノをそっと支えて、近くの店の影に隠れた。

 

「潤君、もっとちゃんと思い出して? ここは、あの暴動が起きた場所だよ?」

 

「え……?」

 

「この辺りで、たくさん人が死んだんだ。多分……潤君のお母さんも」

 

「ここで……」

 

人々が、逃げ惑う事故現場は、あの日と確かに似ている。

 

 

 

 

あの日は、どうしてここに、母といたんだろう。

 

暴動が激化しているのが分かっていたのに、母は何故、ここに居たのか。

 

潤は、初めて疑問を持った。

 

 

 

******

 

 

 

翔もその頃、事故のニュースを見ていた。

 

「ニュース! ニュース!」

 

「また、暴動が……。それとも事故?」

 

「大変っショウさんっ、ジュンがいる学校のそばだよ!」

 

 

10年前の出来事が、一瞬で思い出された。

 

 

「すぐ行くよ! タマは家で待っていて!」

 

 

 

台所の引き出しから銃を取り出すと、隠し持って家を飛び出した。

 

走りながら、なぜかあの日と同じように、潤は事故現場にいるような気がする。

 

 

……この事故は、まさか。

 

……また?

 

 

続く