【検証】名目GDP1000兆円、所得1.5倍の公約を実現するには何が必要か?

2025年、石破首相率いる自民党が掲げた公約。
それは――

「2040年までに名目GDP1000兆円を実現する」
「平均所得を1.5倍に引き上げる」

という、きわめて大きな目標です。

もし実現できれば、日本経済は大きく成長し、
多くの人が「豊かさ」を実感できる未来が描けるかもしれません。

ですがこの目標、
達成するには何がどれだけ必要なのか?
今回はその「現実的な規模感」について、冷静に整理してみます。


■ GDP1000兆円は、+400兆円の成長が必要

現在の日本の名目GDPは、およそ600兆円。
1000兆円という目標は、単純計算で あと400兆円の増加が必要です。

期間は2040年までの17年間。

これを実現するには、
名目GDPを毎年およそ3.1%ずつ増やす必要があります。

参考までに、日本のここ10年の名目成長率は、1%前後。
つまり、今のままの自然成長ではとても届かない数字です。


■ 鍵を握るのは「真水(まみず)」

この成長を実現するには、政府による「財政出動」が不可欠です。

特に重要なのが、真水(まみず)と呼ばれる、
「政府が実際に国債を発行して市場に流す、追加の現金支出」です。

数字だけ大きく見える「事業規模」や「保証枠」ではなく、
実際に国民経済に投入されるお金、これが“真水”。


■ 毎年いくら必要なのか?

経済学では、1兆円の支出でGDPが何兆円増えるかを「乗数効果」として示します。
その乗数に応じて、必要な財政出動の規模は変わってきます。

ざっくり試算すると――

想定乗数 必要な真水(年平均)
1.5(好条件) 約16兆円/年
1.2(現実的) 約20兆円/年
1.0(保守的) 約24兆円/年

つまり、どんなに乗数を高く見積もっても、毎年16兆円は必要になるわけです。


■ 所得1.5倍も、かなりの挑戦

所得1.5倍というのは、たとえば年収440万円の人が660万円になるということ。
これは、物価の上昇とともに実質賃金も確実に伸びていく必要があります。

GDP成長と並行して、継続的に所得を引き上げる仕組みが必要です。
これもまた、真水による「景気刺激」と「企業活動支援」が不可欠です。


■ 現実とのギャップ

こうした視点でいまの政策を見てみると、
本当にこの目標を達成する気があるのか?と、疑問が浮かびます。

たとえば――

「給付金2万円」
「予算3兆円で検討中」

というような、きわめて限定的な規模の議論が、現実には行われています。


■ 結びに

公約は、本来「手段と予算をセット」で語られるべきものです。

名目GDP1000兆円。
所得1.5倍。

この言葉は、聞こえは良くても、
達成するには明確な根拠と大規模な真水が必要です。

石破首相、

本気でやるつもり――あるんですか?