ふるさと納税は“共助”の顔をした“公助の放棄”だった
ふるさと納税制度は、かつて「都市と地方の税収格差を是正し、地方を応援するための仕組み」として導入された。 しかし、導入から10年以上が経ったいま、その本質は変質している。むしろこの制度は、国家が担うべき“公助”を放棄し、国民の“共助”に責任を押し付けた制度だと断言できる。
1. 理念と現実のギャップ
ふるさと納税は、「自分の意思で地方を支援できる仕組み」として始まった。 しかし現実には:
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自治体は“返礼品競争”に追われ、支援が“買い物化”
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返礼目当ての寄付が制度の大半を占める
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特産品や知名度のない自治体は、制度の恩恵を受けにくい
つまり、「地方再生」という理念からは乖離し、一部の“勝てる自治体”と“負ける自治体”を生み出す分断構造が定着してしまった。
2. 税の再分配機能を破壊する
本来、税金とは「所得の再分配」や「地域間格差の是正」のために、国が公平に調整すべきものである。 ところがふるさと納税制度の導入によって:
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所得の高い層ほど得をする(寄付控除の上限が高いため)
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大都市の税収が大量に地方へ流出する(しかし均等ではない)
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税制の本来の機能である「財政調整機能」が骨抜きにされる
これはまさに、「税制を使った逆再分配と国家の調整放棄」といえる。
3. 共助に依存し、公助の責任を隠す政府
本来なら、
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地方交付税の再設計
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公共インフラの国家的支援
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医療・教育など最低限保障の均一化
といった“国家の公助”によって、地方を支えるべきだった。 しかし国はそれをせず、「ふるさと納税で各自が努力せよ」と言い出した。
「バラマキ型の制度で応援してください」
その裏では、再エネ賦課金・消費税・インボイス制度などで、 国民から一方的に吸い上げ、再配分は“勝者だけ”という構造が広がっている。
🎯 結論:ふるさと納税の“成功”が生み出した制度的歪み
ふるさと納税の表面的な“盛り上がり”は、 日本の財政が「共助にすり替えられた公助の崩壊」だったという事実を覆い隠している。
本来、国家の役割とは“均衡”と“保障”である。 それを放棄し、競争と返礼品にすり替えた制度に、私たちは今こそ疑問を投げかけるべきだ。
「ふるさとを救え」という名目で、
国家の責任はどこへ行ったのか?