どういう訳か 私が英語を教えるはめになっている

仕事としては 日本語教師のつもりだけど

英語を教えてと頼まれることが多く

細々とレッスンが続いている

 

今は二人 それぞれに訳があるようだ

 

現役の仕事を退いた後 英語を学び始めた Tさん

グループで勉強していたけれど

他の方たちのように基本を知らなくて

質問したいことがいっぱい!

持ち前の向上心旺盛なところもあり 

どんどん質問していたら

グループの他の方から 少し控えてと言われたよう💦

そこで  違う英会話教室に行ってみたら 

native の先生には 質問ができなくて困ったそうだ

そこで回りまわって 私と縁が繋がった

とっても熱心で ご自分でテキストを見つけ

始めた当初は100 回読んで 我が家にやってきていた

質問個所をたくさん見つけて どんどん訊いてくる

 

そんな姿を見ると 本当に微笑ましいと思う

私の方も できるだけ 難しい用語を使わずに

どうやって説明しようと 頭をくるくる回転させながら答えていく

あまり文法を教えたくなかったけれど

理屈がわからないと前に進めないという

そこで 工夫しながら 説明していく

たくさん例文を出してみて パターンを覚えてもらい

どうしてそうなったかを 納得してもらったら

その後は文法のことは忘れてね と言っている

 

実は始めたとき彼女はすでに 84歳

今は…数えてみたら 88歳!

昨年から 予習の音読は70回に減らしたようだけど

それにしても すごい

学ぶ意欲は 衰えを知らない

本当に素敵だと思う

 

彼女は寒いのが大の苦手で 

コロナ禍の前には 冬には毎年避寒のために 

マレーシアのペナンに滞在していた

最近はそれも叶わなくなって 寒い間はクラスをおやすみ

いただいた年賀状には 「春風が吹くころに また伺います」と…

 

もうひとり 6年ほど前から我が家に来ていた I さん

彼女も 持病を持ったご主人さまの看病で

3年ほどお休みしていた

その間も 時折 電話がかかっていた

 先生 忘れないで くださいね

 主人が元気になったら きっとまた いきますから

 

そう言っていた彼女だけど

残念なことに 昨年ご主人が他界されてしまった

そして今年になって また連絡が  

 やっと落ち着きましたが

 ほかの英会話教室では ついていけません

 心のリハビリを兼ねて また教えてほしいです

 

彼女は 以前からよく勉強していたようで

基礎もしっかりしているけれど

使っていないので忘れていると 嘆く

それに 家では勉強する気にもなれないと言う

 

でも大丈夫

家で何もする気にならなくても

我が家に来て 少しずつ思い出せばいいよ

 

再開して1カ月

回を追うごとに 笑顔が増して来た

私の心も はずんでくる

夫に先立たれた辛さは 私もよく分かっている

だから ゆっくり やりたいことをすればいいよ

できる できないは 二の次だよ

 

全く対照的な二人だけど

お婆ちゃん同士のレッスンで 解放された気分のようで

教える私も 嬉しくなる

 

I さんがもう少し 以前の元気が取り戻せたら

いつか T さんとも一緒にやってみましょうね

 

春風が吹いてきたので 来週から T さんのレッスンを再開する

しばらくは 二人の時間をずらしての お勉強

 

こうしてお婆ちゃんたちの英語クラスは

それぞれのペースで ゆっくりと進んで行く

 

昔の忘れ物を取り返すように ぐんぐん進んで行く T さん

少しずつ心を癒しつつ 元気になっていく I さん

 

まったく違うタイプの二人だけど

習いたいという意欲は 半端ない

そんな二人に押されるように 

私は私のエネルギーを 燃やしていく

 

そんな二人がいてくれるからこそ

私も ずっと学んでいられる

何より 習っているときの彼女たちの笑顔が 

私の心を 一層躍らせる

 

こんなお婆ちゃんたちの英語クラスを持てて

私は幸せだなと しみじみ思う