累計発行部数398万部超の大ベストセラーとして、今もなお読まれ続けている司馬遼太郎の名著「峠」が、小泉堯史監督により初の映画化。
1867年(慶応3年)、大政奉還。
260年続いた徳川幕府は終焉を迎え、諸藩は旧幕府軍と明治新政府軍にニ分される。
翌慶応4年、鳥羽・伏見の戦いを皮切りに、戊辰戦争が勃発する。
越後の小藩である長岡藩の家老・河井継之助(役所広司)は、和平・武装中立を目指すが、新政府軍から却下。
新政府軍5000人に対して、たった690人で挑んだ「最後のサムライ」の物語である。
原作の司馬遼太郎は、「峠」のあとがきに次の様に書いている。
〜人はどう行動すれば美しいか、ということを考えるのが江戸の武士道倫理であろう。
人はどう思考し行動すれば公益のためになるかということを考えるのが江戸期の儒教である。
幕末期に完成した武士という人間像は、日本人が生みだした、多少奇形であるにしてもその結晶のみごとさにおいて人間の芸術品とまでいえるように思える。
若く勇ましい新政府軍の青年将校・土佐藩士の岩村精一郎(吉岡秀隆)から、和平・武装中立を却下された河井継之助は、長岡藩主・牧野雪堂(仲代達矢)の江戸幕府への忠義覚悟を聞き、戦うことを決めたのである。
何の為に命を賭し、何の為に死するか?
愛する者や、藩の仲間たち。
長岡藩の生き様が、鮮明に、そして丁寧に紡がれた映画である。
2014年10月11日(土)、小泉堯史監督は、映画「蜩(ひぐらし)の記」の舞台挨拶に、ムービーオンに来場された。
その時の映画の主役も役所広司さんだった。
故黒澤明監督の助監督を長く続けられた小泉監督。
当時も、「正義」とは、「信」とは、「義」とはを問うた小泉監督。
小泉堯史監督の描きたい物語の本質を感じるのである。
是非、武士の生き様を、映画館で、じっくり感じていただきたい。