スーパーマンから始まってスパイダーマンにバットマン、キャプテンアメリカ、アイアンマン、etc...etc...きら星の如くアメリカンコミックには無数のヒーローがいます。だれでもそのうちの一人や二人に熱狂した子供時代があったと思います。ところが近年、そのヒーローたちに戦いを挑んだ敵役にスポットが当てられ俗にいうスピンオフ映画として注目を浴びています。ジョーカー、キャットウーマン、ヴェノム。そして今回のこの作品の言わばダークヒーローは「モービウス」。
うーん、なんとも不気味、杖無しでは歩くこともままならない謎の血液病。透析よろしく、数日に一度血を入れ替えないと死に至るその病気の解明、そして治療薬のために自らその病気と闘う天才医師。病に苦しむ親友のため、そして自分のために苦難、苦悩の末ようやく出来上がったその治療薬。だがそれは自らの身体を普通に戻すどころか超人的な身体能力を得るに至ります。その超人的な身体能力を得ると同時に自らの抑制が効かなくなってきます。その結果、生まれたダークヒーローが「モービウス」です。主演はジャレットレト。善人から悪人まで若いのに結構芸達者の人です。

天才医師マイケルモービウスは子供のころから血液の難病と闘ってきた。そして遂に南米の吸血コウモリのDNAより特効薬の採取に成功、治療薬の開発はあと一歩のところまで迫っていた。彼には少年の頃同じ療養施設で育ったマイロと言う親友がいた。マイケルと同じ病気に苦しむ資産家の息子であるマイロは後に父の跡を継ぎ、マイケルの研究に多大な資金を援助していた。二人の担当医であるニコラスはマイケルの天才的な頭脳を埋もれさすには惜しいと治療をしながら研究のできる施設へと彼を送りだす。施設を去る時マイケルはマイロに「君と僕の病気は必ず僕が治す」と言い残して診療施設を後にする。あれから十数年、マイケルは遂にマウスでの実験に成功。今度は自らの身体で試すことにする。実験は法的規制が入らないよう傭兵に守られた海洋上の船の中で行われる。マイケルは同僚の医師マルティーヌとともに実験ラボでマイケルの身体を使った人体実験を敢行。遂に成功するがそれも束の間、超人的な体を手に入れると同時に凄まじいほどの血への渇望、どうしようもない高揚感。遂には船内の傭兵たちを襲いはじめる。マイケルは正気に戻った時、船内の惨状を見て絶望する。だが頭を打って気を失っていたマルティーヌは無事だった。彼女の無事を確認するとマイケルは船を脱出し行方をくらました。
警察は唯一助かったマルティーヌを問い詰めるが彼女は黙秘を貫いた、兵士たちの体からは血液がすべて抜き取られ首筋には二つの穴が...。一方、行方をくらましたマイケルは密かに立ち入り禁止になっている自らの研究ラボに忍び込み輸血用の人工血液で辛うじて正気を保っていた。なんとか自らを抑制しようと研究を続けようとするが自らの精神状態が正気を保っている時間は日に日に短くなってくる。そして人口血液の効き目も弱くなりどうしても人間の生身の血液が必要になって来る。そんな彼の研究所に親友のマイロがやってきた。マイケルの研究結果を聞きマイロは自分も治療薬を打ってくれと懇願するがマイケルは断固拒否する。「自分はモンスターになってしまった。君をそんな目に遭わせたくない」と...。だがその間にも警察の影はマイケルに少しづつ迫っていた。マイケルはマルティーヌに助力を求めるがマルティーヌを張っていた警察は遂にマイケルを追い詰め逮捕する。
収監されたマイケルにマイロが面会にやって来る。だがどうも様子がおかしい。いつものように杖をついてやって来たマイロだったがマイケルの独房を去る時その杖は独房に置かれていた...。マイケルは驚愕する。マイロは自分が開発した禁断の治療薬を打ってしまったのだ。マイケルは独房を破壊し脱獄する。マイロは既に抑制のきかないモンスターになっていた。彼はマイケルにともに手を取りこの世界を牛耳ろうと誘いをかけるが当然マイケルは拒否する。
「不自由な体で虐げられてきた我々がこのとてつもない力を手に入れて何が悪い!抑制など必要ない!」
既にマイロは変り果ててしまった。二人の対決はもはや避けられない状況になっていた...。
要するに人工的に作られた「吸血鬼」。科学と健全な体を手に入れようとする渇望から生まれた悲劇。一人でなく、かつて信頼し合った親友が究極のところで考え方の違いが露出し袂を分かつことになってしまう。そんなところがこの「人口吸血鬼ドラマ」を盛り上げることになっていると思います。ラストは前スパイダーマンの悪役で登場したマイケルキートンが姿を見せたりと次回は善役?悪役?て言うような終わり方で含みを持たせたわけですがまあーしかし後から後から出て来るこのキャラクターの多さには恐れ入ります。しかもヒーローの適役までダークヒーローとして主役に押してしまう商魂。またこれが影を背負っているわけで、ある意味完璧な善玉より魅力的です。だからヒール(アメコミではヴィランと言うそうですが)をヒーロー、深く言えばダークヒーローにしてしまうのはスーパーマンやスパイダーマンを観るよりは面白いですわ。次から次に登場するのにはついて行かれへんねんけどね。