カツベン! | kazuのブログ

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サラリーマン社長のムービートラベル

昔、日本に映画というものが入ってきたとき、今のように画像と一緒にがセリフや音楽は入っておりませんでした。いわゆる無声映画、サイレント映画と呼ばれ字幕にセリフが入り何人かの楽団がそれに合わせて音楽をつけていました。映画というより活動写真と呼ばれていたんですね。そして画面に出てくる役者たちに代わって舞台の端からその画面を面白おかしく、時には情緒たっぷりに話して聞かせる活動弁士、略して活弁という人たちがもてはやされました。この物語「カツベン!」は周防監督流にユーモアたっぷりに、活動弁士たちやその周りの映画、いや活動写真を作る側、見る側問わず、愛してやまない人々を描いた人情味あふれる作品です。

物語は大正の時代、活動写真の撮影があるからと言って、その撮影場所に潜り込む子供たちの中から活動弁士にあこがれる男の子と画面に映し出される女優にあこがれる女の子がクローズアップされる。のちに二人は自らが描いた希望とは程遠い現実にさらされる。男の子は有名弁士の名をかたり、町から町へ渡り歩いては盗みを働く泥棒一味の仲間に、女の子は女優の夢を追いながらも人気活動弁士の愛人として生きている。二人はとある町の活動写真館で出会うことになる。活動弁士にあこがれながらもなかなかままならない青年、染谷俊太郎は泥棒一味を抜け出し、一味の大金を頂戴して町の活動写真館「青木館」に転がり込む。そこには人気活動弁士、茂木貴之とかつて俊太郎があこがれた弁士、山岡秋生が所属しているが山岡は酒で身を持ち崩しかつての人気活動弁士の面影はない。

そしてその青木館も地元のやくざが経営する活動写真館「タチバナ屋」にいやがらせや引き抜きにあい風前の灯火、頼みは女性に大人気を誇る茂木貴之だけなのであるがこれがまた嫌な奴。そしてあろうことか俊太郎の幼馴染で初恋の人、栗原小梅を愛人に囲っている。「青木館」で下働きに甘んじていた俊太郎だったがある日ひょんなことから弁士として舞台に立つことになる。けど、これが観客に大うけに受けて、たちまち人気弁士の仲間入りをすることになる。だが「タチバナ館」の嫌がらせは日増しに強くなり、正体を隠していた俊太郎もついに........

 

笑って笑って笑わせてくれて悪党一味にも鉄槌がくだされても決して「めでたし、めでたし」じゃない終わり方。俊太郎と梅子の淡い恋心もどこかほろ苦く......染谷俊太郎役の成田凌の弁士ぶり大したもんです。梅子役の黒島結菜は可憐の一言に尽きます。高良健吾のイヤーミな弁士、茂木貴之も見事にはまっている。日本の若手俳優たちが古臭いと思われがちなこういう古風な作品で好演するというのは映画ファンにとっては非常にうれしい。

この作品を見る前日に金田一耕助の「悪魔の手鞠唄」をやっていた。この物語もプレイボーイの活動弁士が原因で事件を引き起こすというものでした。活動弁士というのは持てたんですねー。銀幕に映し出される俳優よりも当時は活動弁士の方が持てたということです。だけどいろんなパロディがちりばめられた作品でしたけどなんか周防監督の愛情がたっぷりでした。

 

あるんでよ、日本にもこういう情緒が。