中学校の同級生にKというのがいたのだが、彼は外斜視のため視線が定まらず、よく、ロンパリじゃのぅ、と皆にからかわれていた。


彼は休憩時間を一人で読み物をするか机に臥せるかで潰していたのだが、時々、同じように一人で休憩時間を紛らわしている私に、厭な感じのするニタニタ顔で「なに読みよんな」「のぉ、何しよんな」と絡んでくるのであった。

当時の私にはニタニタ顔に外斜視の目が不気味に感じられ「何でもえかろうがっ」と素気無く返すのが常であった。


結局気味の悪い奴だという思いを抱えたまま卒業し、もうそれから一度も会うことがなかった。


 昨年実家に帰った折昔の写真をみていると、中学一年生時分のKの写った写真を見つけた。Kはあどけない顔でにっこりして此方を見ている。恥ずかしそうにけれどもにっこりとして此方を見ている。それは本当に良い顔だった。とっても優しい顔だった。


あぁ、Kよ、君はいつもそうだ、そういう風に恥ずかしそうに、にっこり笑っていたんだな、ニタニタしていたんではなくて、にっこりと私に接してくれてたんだな。一人きりの私を救おうとしたのか、一人きりの君自身を救おうとしたのか。私も君も行く場所がなかったんだね。


はっとして、あぁ‥、と思って、自分自身のツマラナイ目の玉が嫌になっちゃった。


もう本当に嫌になっちゃったんだよ。