入学 | スティルマイン

入学

初めて夜遊びらしい夜遊びをしたのは17歳の時だ。

そのときの格好も覚えている。細いブーツにゴツいベルト、薄いベルボトムジーンズ、タンクトップ、ハンチング、それなりのブレスレット。
中々良いチョイスだった。今でもその気になれば着れると思う。17歳の頃と、そんなに変わらんと思う。ま、まだいけると思う。


店に入ると、私たちは一番乗りだった。そらそうだ、子供だもの。

デカいスピーカの前に並んで座る。
遊び慣れている友人を見、音楽に合わせてそれらしく揺れることを覚えた。なんだか、「いっぱし」になれた気がした。


徐々に大人たちが増えて来る。怖そうなお兄さんお姉さんばかりだった。

トイレから戻るとき、お兄さんとぶつかった。彼のビールを大幅にこぼしてしまい、絡まれた私は「これが大人の世界か」と思い知らされた。
連れていた女の子は、大音量の中揺れながら私の耳元で話しかけて来、口紅が耳にベチョリとなった。「ヒャ」と思った。
盛り上がるべき曲のところでは周りに合わせ、それらしい顔をして私も盛り上がった。「フー」とか言ってみた。
混雑する中、知らないお兄さんお姉さんとくっつきながら踊り、笑い合い、私は「これか!(this is it!)」と思った。


くたびれた朝方、階段を上ると店の前ではお兄さんたちが気だるそうに座り込み、しかし楽しそうに談笑していた。
仲間になれたつもりだったが皆ボディがキレイにデザインされており、「(私はやはり)まだ早過ぎたんだ」と思った。それでも、「今日からは違う人生が始まる、昨日までとは違う」と思った。


実際はそう代わり映えのしない日常が続いたが、少なくともこの日が無ければ今の私は無かったと思う。

今日、なんとなくこの日を思い出した。