二月といえば冬な気がするけど今は春休み。年末年始に冬休みなんて言葉を使ってしまったせいで春というしか無くなっているんじゃないかと思いながらも、三月は春だななんて思って妥当かと心の中で大人たちに謝る。とこんなことを考えているうちに陽は沈んでしまって、寒い中欲しかった漫画を買いに本屋へ行く。仕事帰りのサラリーマンで少し混雑する店内にこんなことならもっと早く家を出ればよかったと思いながらも、今日の自分の一日を思い起こしてみると自分が退店するべきだと気がついて目的の漫画をさっさと見つけようとする。でも同時に高校の時電車で一緒に満員電車を耐えてきた仲じゃんといった気持ちが芽生え少しだけ店内をうろつく。そこで気になった漫画も買って日本の本屋の存続に貢献する。こうした感情の浮き沈みを経ているうちに二月は終わる。

 

三月はまだ寒いけれど、そのうち暖かくなってきて春の陽気を感じるようになる。その頃にはもう四月で、新学期という形でいつもと変わらない日常の延長線上に新しいチャプターのようなものが急に浮かび上がる。それに乗じて、なんとなく何かを始めたくなって本をたくさん買ってみたりするけれど、結局読まないまま五月になり、人は変われないという真理にたどり着いたような気持ちに満足して六月になる。そうしてベッドの脇にあった本はいつの間にか漫画に埋もれるか本棚にしまい込まれる。時折みる背表紙にはもう魅力を感じなくなり、どれだけ時間があっても同じ漫画を繰り返し読むことを選ぶ。そして七月になる。夏の暑さが段々と激しくなる中で外に出る気持ちは薄れ、家にいても逆に冷房が寒いと文句を言いながら特に何もしない。八月になる、夏の暑さは本番を迎え毎年のようにニュースで叫ばれる異常気象という言葉に少し心を痛めながらなんとなく冷房を我慢してみたりする。そんな行為が自分の高潔さを保ってくれたような気がしていると九月になる。暑さは変わらないけれどなんとなく九月だしなという気持ちが暑さを和らげ少しくらい何かをしてみようという気分になる。そうして九月は終わる。十月の天候は何をするにも適していているけれど逆に適しすぎていて本来一年にわけてやるべきだっとことを全てやろうとして何もできない。本当は別にやりたくもないことにいつの間にかずっと取り組んで十月が終わる。十一月になると段々寒くなるけれど夜の散歩には最高だから日中は体力を温存する。夜道を散歩しているとイヤホンから聞こえてくる歌詞が頭に残る。そんな言葉が数日後に頭に浮かんでこれは誰かに伝えなくてはならないと思うけれどすぐにこれは自分の言葉ではないと気がつき虚しくなる。作曲ができたらなと思ってギターを手に取ってみるけれど寒さが増してきて手がかじかみ十分ほどでギターを置く。十二月はイベントの季節。クリスマスに、忘年会に、大晦日に。大忙しで浮き足立つ自分に嫌気が差して夜道に繰り出すけれど寒さが増した時期の夜の寒さは耐えられたものではないから家の周りを一周だけして家に帰る。なんの収穫もないと怒りながらも一年を通してもなんの収穫もないのではという声に耳を閉じたくてさっさと寝る。年が明ける。お年玉の生涯収入は年下の兄弟姉妹の方がどう考えても多いといつも思うけれど、もらった瞬間は自分の方が多いからそんなことはどうでもいいと忘れてしまう。そしていつの間にかまた二月になる。何も変わらないまま本棚だけが埋まっていく。

 

結局人は変われないという五月に悟ったことを思い起こしては否定してまた思い起こすということを波が寄せては返していくように、ただ季節が移り変わりまた春が来るように繰り返す。そんな自分は世界そのものだなと思いながらも、今チーフをやっている自分は少し去年とは違うのでは?と思う。今年の僕は異常気象なのでは?!!

 

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この文章は2月、小道具セクションで宣伝美術の作り物をしてくれる人を募集するときに作成した文章なのですが、今は変わらないようでちょっとずつ変わっていくというよりも、たまに何もかも信じられないくらい一気に変わっていくように感じます。

 

思えばこの2年間STEPSの帰り途はいつも夜でした。ちょっとだけ疲れました、ムーンライトクルーズ。

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STEPS Musical Company 

2022年度春公演『ムーンライト・クルーズ』

 

2023年4月5日 21時より

公式YouTubeチャンネルにてプレミア公開予定⭐️

STEPS Musical Company 公式YouTubeチャンネル

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舞台のついでセクションこと小道具セクションチーフ大山