幸福についての七つの詩
寺山修司
1
幸福という名の家具は
どこに置いたらいいのでしょうか?
小さな古いスプーンのように
戸棚の隅にしまってしまうわけにも
いかないし
電気冷蔵庫のように
台所の奥に片付けてしまうわけにも
いかないし …
(第一 私は幸福という名の家具の
掃除の仕方も知らないのです)
2
幸福の重さについて
考えてみたことがありますか?
たとえ二羽の小鳥ぐらいの
ささやかな幸福にでも
それなりの重さがあるのだということを
だから、どうか
悲しむのは止めて下さい
(人生が幸福より重すぎたって
それはあたりまえのことなのです)
3
二人で同じ桜んぼを食べることはできる
二人で同じモーツアルトを聴くことも
できる
二人で同じホテルで海を見たあとで
二人で同じベッドに眠ることもできる
だが なぜだろう
二人で同じ夢を見ることはできない
(同じ幸福が二つないとは
何という神の吝!)
4
あなたが
あたらしい歌を一つ覚えるたびに
どこかで誰かが
木の匙やお友だちを
失くすとしたら?
あなたが
もし幸福を手に入れたら
どこかで誰かが 病気になるとしたら?
それでもあなたは
私を愛すと言いますか?
5
幸福を買いにゆくのに
買物籠なんかいりませんよ
幸福は
素手で持ってくるに限る!
6
ポケットを探したって駄目です
空を見上げたって
涙ぐんで手紙を書いたって
駄目です
郵便局に日曜日があるように
幸福にだって休暇があるのですから
7
幸福の話をすることができるのは
幸福な人ばかりです
あの一匹の
年老った犬に
幸福のことを訊いてごらんなさい?
たぶん ほら
黙って向こうへ行ってしまうでしょう
さて 1/2 京都の実家に日帰り、
歩いて八坂神社に参拝してきました
こちらから見えた すーぱーむーん☆
もお届け 。。
眺 / 不在する単位
玲薫
動かない四本の腕が
宙をこぼし
静かに傘を語り
代わりに
孔雀が陽の注釈を運ぶ
きょうはまる、で
満ちてくる水と遺伝子
月と直結した国訛りは
漆黒に浮かぶ雪ふる舟に
彩りを要求しながら
まるで、きょうは
終わりまで
激流と花の名前を演奏している