分子標的治療法は、がん細胞のタンパク質だけに作用する薬で、従来の抗癌剤とは異なり骨髄制御などの副作用が少ないがんの治療法です。がんの悪性化にかかわる増殖因子や転移関連因子などのミクロな分子にターゲット絞り、その動きを止めることで、がんの進行を抑え込む働きが期待されています。
分子標的治療薬は、次々と新しいものが出てきているが日本では厚生労働省の認可を受けるのが難しく、一部のがんを対象にした物しか使用されていないのが現状のようです。
脂肪肉腫に関して適応となる分子標的治療薬も無いのが現状です。しかし、実際に効かないかどうかについては未知数といえるかもしれません。
例えば、最近ニュースで問題になっていたイレッサ(副作用の問題)は非小細胞肺がんに適応の分子標的治療薬になります。イレッサはEGFR阻害剤というタイプの分子標的治療薬ですが、このEGFRという「上皮成長因子受容体」というものが発現しているがんでなければ効果は見込めないとされています。
EGFRが関与するがんには、肺がんの一部、前立腺がん、胃がん、乳がん、大腸がん、膵がん、卵巣がんと多くのがんがあり、転移・再発を繰り返す脂肪肉腫でもEGFRの発現率が高いという報告もあり、効果があるかもしれないという可能性としてイレッサは、試す価値のある薬と考えることができるかもしれません(ただし、報道されていた通り副作用に問題有)当然ですが効果にも保証はありません。
また分子標的治療薬の良いところは、入院治療が必要ないものが多いという点かもしれません。肉腫の場合、標準的な治療を行なえば抗癌剤の使用量はそうとうな量となり。他のがん治療よりも骨髄抑制が強く現れ、必然的に入院治療しか方法がないということになることがほとんどです。
そのてん分子標的治療薬であれば骨髄抑制はほとんどなく、在宅での治療が可能なので仕事をしながらの治療も可能になり、高いQOLを保つことが可能になるかもしれません。
長く治療を続けなければならないような進行がんの患者さんは、治療のために入院しているとはいえ長く入院生活を送ることは、精神的にも苦痛になり、ネガティブになりがちになります。他の治療法でもそうですが、どの治療法を選択するかというのは、自分自身がどう生きたいのか?という考えも重要かもしれません。
しかし脂肪肉腫で分子標的治療薬を使用する際の障害となるのは、保険適用ではないことです。イレッサのように国内に流通するものは比較的安価ですが、日本で未承認の輸入薬などは経済的に負担がかなり厳しいと思います。そのため効果が出ているのに経済的な理由で分子標的治療薬を止めざるを得ないということも現実にあるのが現状のようです。
そして、脂肪肉腫の治療としての分子標的治療薬は、通常の抗癌剤治療を一時中止しなければいけないと思いますのでリスクをともなうことになります。したがって効果が期待できる可能性がどの程度あるのか?という問題が前提としてあることは理解が必要だと思います。
また、分子標的治療薬は従来の抗癌剤と比較すると副作用が少ないものも多いですが副作用が全く存在しないわけではありません。発熱・発疹・腎障害・肝機能障害などに加え、イレッサなどでは間質性肺炎という命に関わる重大な副作用も存在します。そのため服用に当たっては医師の指導のもと十分に気を付けなければならないと思います。