東の大国三万だけならば、戦い上手の駿河の国なれば、
  何とかあしらいながら戦うことが出来ようが、西にあたる
  大和の国が、活発な動きを見せ始めたのである。
   その西側の脅威に対して、東の大国に道参の一人娘、
  市姫を嫁がせると言う目論見は、見事に失敗に終わっていた。
   ” さて、、、” と光秀がため息をついたそこへ、
  下の方から、どかどかと千鳥足の音が近づいてきた。
   勝家であろう、ほろ酔い加減に大声で歌などを歌っている。
  光秀は、それを聞いてニヤリと微笑んだ。
   ” うまいものぞ、さすが権六じゃ!”

 「おお! 光秀様、なんじゃあいつは!
   あのような奴に姫様をくれてやるぐらいなら、
  わしが貰うぞ!」
   勝家が酔った勢いで、どかどかと大広間に入ってきた。
 「まあそう言うな。」
 「あの小心者め、街道一の姫様を見て、
   ”かたわ”と言いくさったわ!
  今度会うたら、おれのこの刀で真っ二つにしてくれるわ!」
   そう大声で怒鳴りつつ、光秀の近くまで来て、どっかと
  腰を下ろした勝家。片手には酒瓶をしっかりと握っている。
 「この婚儀には、国中が大反対じゃ、心配いたすな!」
  光秀が大声で、如何にも勝家を諭すように言っておいてから、
  周りの気配を確認するように目配せして、辺りの様子を
  伺ってから、やおら前屈みになり、
 「もそっと近くに寄れ。」
   そう小さな声で、権六を促した。
  その光秀の言葉を聞いて、今の今まで酔っていた、、、
  と思われていた勝家の眼が、鋭く光を放ち、辺りを警戒しつつ、
  光秀の方へ、腰をつつっと進めた。

 つづく。一芝居打っていた勝家、さてどんな話になります事やら?
   次回をお楽しみに! ナウシカ