ここは小田原城の一室。
国光は独りで、何やら考え事をしながら筆を走らせていた。
熱い時期ではあったが、襖をあけ放たせているため程よい風が
素通りし、木々の梢から小鳥の声なども聞こえ、涼しさを演出
していた。
「 国光様、駿河の国から使者が見えております。」
いつの間に近づいて来たのか、襖の陰から蘭丸が筆を執っている
国光に声を掛けた。
「 何! 駿河の国から?、、、。」
国光は静かに筆を置き、しばし虚空を見つめた。
「 どなたが、、、来られたぞ。」
「 は、駿河の国、名古野の城主山本勘助殿にございます。」
「 、、、して、幾人で見えられた?」
「 は、供の者二人と、合わせて三人でございます。」
山本勘助と言えば、戦いの妙、駆け引きの旨さで、
三国に知れ渡っている一人であった。
「 名古野の城主、山本勘助殿と言えば、名の知れた武将。
その山本勘助殿が、たった三人でのう、、、。
して、その用向きは?」
今言った通り、山本勘助と言えば、駿河の国でも
十指に入るほどの剛の者なのである。
何か、訳がありそうな、、、と国光は思った。
「 は、殿に直々に話がある、、、とのことにございます。」
「 殿にか?、、、。」
そう言いながら、国光は奥の院の方を見て、顔を曇らせた。
「 殿は会うまいのう、、、
仕方ない、まずは、わしの所に案内(あない)いたせ。」
「 は!」
つづく。使者に立った勘助、さてうまく事が進みますやら?
次回をお楽しみに! ナウシカ