もう散ってしまいましたが芍薬。

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 会計ソフト大手のTKCが北洋銀行と提携しました。新聞報道だと小さい記事しか載っていないのでわかる範囲でいろいろと調べてみました。

 TKCの現社長、角一幸氏は帯広出身で北大卒。

 TKCの特色は巡回監査と仕訳のロック。監査担当者や税理士が月一回、顧問先を訪問して試算表を〆ていく。データはTKCセンターに伝送され、後日試算表が会計事務所を通じて顧問先に届く、というスタイルでした。試算表を確定した後はデータはロックされ、訂正はできなくなります。フラットにいうと、ロックしたあとに「粉飾したい、改変したい」と思ってもどうにもならない、ということです。

 また、全国のTKC利用企業のデータが一度センターを通りますので業種別、規模別の中小企業の会計データがどんどん蓄積されます。「BAST」これも強みです。

 そのTKCもFinTechの波に洗われています。

 MFクラウドなどと違う路線を取っているのは、インターネット経由、口座の出入りを仕訳として取り込むところまでは自動化を進めますが、あくまでも巡回監査したあとに試算表確定、という手順は崩さないというところです。

 今回の提携について、TKCHPの発表を読むと、顧問先の了承があれば、

 1.月次試算表提供サービス(仮称)

→TKC会員事務所による巡回監査と月次決算の終了直後に、金融機関に対してモニタリング用の月次試算表等のデータを提供するサービス


2.決算書等提供サービス(仮称)

→法人税(所得税)の電子申告後に、融資審査、格付けのために金融機関に対して決算書や申告書等のデータを提供するサービス

3.最新業績閲覧サービス(仮称)

→金融機関がTKC会員事務所を経由して、顧問先企業の自計化システムの最新情報を閲覧できるサービス

 となります。

 企業会計に置けるFinTechの本質は、金融機関や企業が使用している経費精算用クレジットカード、アスクルなど通販サイトの購入履歴情報をほぼ自動で会計ソフトに取り込むため、「リアルタイムで正確な」財務諸表が出来上がってしまうことにあります。つまり、粉飾が入りにくいのです。

 例えば、会計ソフトにアスクルの情報を読み込むようにすれば、品名まで仕訳に入りますので、家事用か事業用か一目でわかります。

 家事用のものを事業用だ、とするためには摘要を手打ちで打ちかえるか、摘要を消すことになります。どちらにせよ、不自然な改変のあとが残ります。

 このように改変の余地はぐっと少なります。

 また、ある月に手打ちで仕訳を足して試算表の数値を操作したとします。

 毎月北洋銀行にデータが送られるわけですから、もし改変したとして、「今月はどうする」「来月は?」ということになりますのでほころびも出やすいですし、単純に「疲れます」。

 普段から毎月のデータを送ってもらい、月別に並べていけば、「決算修正の中で数字をいじったな」というのもすぐわかるでしょう。

 つまり粉飾の防止、という意味ですごく有効なデータのとり方、と思います。

 今回TKCが提供しようとする(顧問先の了承を得て、ですが)サービスは、正確、スピーディーに出来上がる企業の財務情報をそのまま北洋銀行に提供し、与信管理に役立てようというものです。

 FinTechの一つの到達点だと思います。

 今まで、おカネを借りるとき、リスケを受けるときの北洋銀行の決まり文句は、「直近の試算表と比較用に前年同月の試算表をお持ちください」でした。

 それをはたで聞くたびに「そんな情報だけでわかるのか…?」と感じていました。しかし毎月「正しい」情報が銀行に届くとなれば、異常値の発見もすぐできますし業況の変化にも即応できるでしょう。

 他の金融機関との関係で言えば、北洋銀行がお客さまである企業の情報量とそのスピードで圧倒的優位に立つことになります。北洋銀行の担当者の腕によほどの問題がない限り、融資チャンスはすべて北洋銀行にさらわれていくでしょう。(その判定もFinTechで自動化されていくと思います。「○○○○○社はこの3か月売上が伸びているので追加運転資金が必要」「売掛金が増えているので売掛金担保融資はできないか」など)

 北洋銀行以外の金融機関も北洋銀行との対抗上否応もなく、TKCとの同種の提携を検討することになるでしょう。

 私がFinTechに対して感じるのは、

 「知らないふりはできない」

 「対応していくしかない」(企業側はクラウド会計を導入するしかなく、会計事務所側もそれに対応していくしかない)

 「戻れない・行きつくところまで行ってしまう」

 ということです。

 今日の発表はTKCと地方金融金融機関の提携、と映るかもしれませんが大きな変革の芽を内包しています。

 
 会社の経費精算、クラウド会計に組み込んでしまいましょう。

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