「専門業態」VS「総合型フィットネスクラブ」のしびれる戦いが始まる | 「サクセス」by田村真二

「専門業態」VS「総合型フィットネスクラブ」のしびれる戦いが始まる

 

 

 

こんにちは。田村真二です。

 

 

ジム(筋トレ)人気が続いていますね。

 

 

昨年は民間フィットネス施設が過去最多の533軒開業。業態別では「ジム単体型」が301軒で、2位(小規模サーキッド型91軒)以下を大きく引き離し単独トップ。

 

 

ジム単体型としては、「24時間営業のジム」が有名ですが、アメリカでは2000年前後から、日本では米国発のエニタイムフィットネスが2010年に国内初となる24時間営業のジム1号店をオープンしました。

 

 

プール・ジム・スタジオ・お風呂・シャワー設備などを併設した総合型フィットネスクラブ(以下総合型クラブ)と違い、24時間営業のジムは利便性と低価格(総合型クラブの会費より3割前後安い)を売りに、近年チェーン展開する企業が続出。

 

 

クライアント先の社長から聞いた話ですが、関西のある総合クラブでは、この1年間で24時間営業のジムを中心に、商圏内にジム単体型が6カ所も新規開業したそうです。

 

 

わずか1年間で同一商圏内にジムが6カ所もオープンするのは珍しいかもしれません。しかし今、国内ではこれに近い状況が全国各地で散見されるようになりました。

 

 

身近な場所にジムやヨガスタジオなどの専門業態がオープンすることで、顧客にとっては利便性と選択肢が増えるというメリットがある反面、経営サイドにとっては短期間にライバルが続々出店してくるわけですから正直大変です。

 

 

実際、前述した総合クラブでは競合の影響により、1年間に会員数が1割減少したとのことです(注:会員数1割減少は粗利1割減少に相当)。

 

 

実は、当社のクライアント先総合クラブもこの1年間でジムが3店舗、他にヨガスタジオなど複数の専門業態が商圏内にオープンしました。

 

 

そのため、競合周辺に居住する既存会員の一部の方がクラブを退会する、競合オープンキャンペーンにより新規入会者が減少するなどの影響を受け、それまで増え続けていた会員数が減少に転じていました。

 

 

ところが、(想定通り)減少していた会員数が先月お盆明けから急回復し始めたのです。

 

 

 

総合型クラブの逆襲が始まる?

 

 

要因の1つは、競合施設のオープンキャンペーン影響が終焉したため。ですがそれ以上に顕著なのは、再入会の増加と口コミ・(ネット上の)書きコミです。

 

 

自宅近くにフィットネス施設が開業したことで、今まで通っていた総合型クラブを退会して競合に入会した会員が、半年ほどで競合を退会し再入会する人たちが続々現れだしたのです。

 

 

再入会の理由を尋ねたところ、「清掃ができていない」「会員のマナーが悪い」「狭くて混雑している」「お風呂・サウナがある方がいい」など、比較したうえで「やっぱりこちらのクラブの方がいい」と言って戻ってきてくれたそうです。

 

 

競争が激しい他の業界(例えば飲食業界や美容業界など)では当たり前のことですが、顧客が商品やサービスを比較するのは当然の権利です。しかし他に店がなければ、顧客の選択肢や決定権は自ずと制限されます。

 

 

私は飲食業界や美容業界、コンビニやドラッグストア、あるいは整体・整骨院のように、行き過ぎた過剰店舗はどうかと思いますが、日本でフィットネス施設が増えること自体は「良いこと」だと考えています。

 

 

日本のフィットネス参加率は4%程度と低く、私が思うに一番の原因は「施設数の少なさ」です。施設が少なければ会員総数は増えませんし、改善や改革の必要性も弱まり、結果、運営やサービスレベルは現状維持を続けがちになります。

 

 

それでなくても月会費が毎月自動引き落としされる会員制事業は、大半の小売業や飲食業のような非会員制ビジネス(日銭ビジネス)に比べて変化対応力が鈍りがち

 

 

一方で、商圏内に競合が次々出店してくるとなれば対策を講じざるを得ませんから、サービスレベルの向上に日々努めることに(自ずと)なるでしょう。

 

 

私にも経験がありますが、フィットネス事業の経営者や店舗責任者はサービスレベルを自発的に向上させていくのは容易ではありません。前述したとおり、「会員制」に甘んじて同じこと(や同じようなこと)を繰り返しがちになるからです。

 

 

しかし施設や設備といったハード面、サービスやプログラム、あるいはスタッフの応対といったソフト面は、自社よりも競合の方が良くなれば劣後します。

 

 

例えば総合型クラブは、経年劣化にともなう施設や設備の修繕・リニューアルに(多額の)お金が必要になるケースが少なくありません。そのため、多くの施設でそれらは先延ばしがちとなり、ハード面の競争力は徐々に低下していきます。

 

 

それでも商圏内に競合が出店して来なければ、たとえ老朽化した施設や設備であっても会員は他の施設へ移ることはできません。結果、(クラブに満足していなくても)退会せずに居続けてくれる人もいるでしょう。

 

 

そう考えると、昨今ジムや専門スタジオが次々新設される中で経営を続ける総合型クラブは、否が応でもハードとソフトの改善・改革をせざるを得なくなります。つまりこれから先、生き残りをかけた総合型クラブの逆襲が始まるかもしれないということです。

 

 

 

総合型クラブの本質課題は「商品開発」である

 

 

施設や設備の日常メンテナンスを始め、適切な投資をし続けている総合型クラブであれば、会員の自宅周辺にジムが新設されても会員は退会せずに居続けてくれるかと言えば、必ずしもそうではありません。

 

 

自宅周辺に新しいフィットネス施設ができれば(会員であれば)誰でも興味は持つでしょうし、「一度入会してみようかな」と思う人がいても不思議ではありません。馴染みの飲食店があるからと言って、「そこ」にしか行かないわけではないのと同じです。

 

 

入会したうえで元の施設がよければ「再入会すればいい」と考える人も少なくないでしょう(昔と違って今は‟魅力的な”入会キャンペーンを多発しているところが多くあるため)。

 

 

要するに、現在入会しているフィットネス施設に不満を持っていなかったとしても、自宅周辺に新しい施設ができれば移ってしまう人もいるということです。加えて、新規入会者にも影響を与えるでしょう。

 

 

一方で、競合施設に入会した人であっても(近い)将来、自クラブに再入会や新規入会する可能性があるということです。総合型クラブの経営者や店舗責任者の方には、ぜひこのことを知っていただきたいと思います。

 

 

つまり競合の出店は、総合型クラブにとって短期的にはマイナスかもしれませんが、参加者や参加率が増えるため中長期的には会員数を増やすチャンスにつながるということです。

 

 

しかしそれには条件があります。24時間営業のジムや格安ジム、あるいはヨガスタジオや他の専門業態に優る魅力や優位性が総合型クラブにあるかどうか。

 

 

1つは、「ハード面」の魅力と優位性。専門業態と違い総合型クラブは、何といっても「複数のアイテム」が強みです。それらが常にクリンリネス(照り映えるように磨き上げられた状態)が行き届き、かつ「最新」であれば会員獲得と維持に有効です。

 

 

とは言っても、総合型クラブのハード面には勝てないものの、専門業態には「ソフト面」において、独自の強みや魅力で総合型クラブを上回るところが少なくありません。

 

 

したがってこれから先、総合型クラブが取るべき戦略の方向性は①ターゲットがあいまいな会員拡大取組みよりも支持層に応える戦略、②ハード面よりもソフト面の魅力による顧客層の拡大と深耕、の2つが重要になります。

 

 

①については言わずもがなだと思いますので割愛しますが、②を具現化する最良の方法の1つは、総合型クラブならではの強みを活かした「商品開発」です。

 

 

これまで総合型クラブの多くは、魅力的な複数のアイテムを持つ一方で、運営の要であるソフト面においては、会員のセルフ利用やフリーのインスタラクター・パーソナルトレーナー任せの運営をしてきた企業も少なくありません。

 

 

毎月会費を支払っているのに月に1度も施設を利用しない会員(一般に総会員数の1~2割程いる)に対して、何のアプローチもしない総合型クラブも少なくないでしょう。

 

 

それらは競合が少なかった時代ならともかく、今の時代には通用しません。今後はクラブへの来館が習慣化する、日常生活に不可欠な場所となる(と会員に感じてもらえる)ソフト面の強化やつながりといったものが総合型クラブにも必須となるでしょう。

 

 

その要は、総合型クラブならではの強みを活かした「商品開発」だと私は考えます。

 

 

例えばジムでの運動だけではなく、ジムとスタジオプログラムを組み合わせた独自のパッケージング商品、セルフ利用の会員種別(商品)だけではなくパーソナルトレーニングやその他のサービスをパッケージング化した独自商品など。

 

 

あるいは、1つの施設に複数の専門業態を展開する「総合専門(あるいは専門総合)型クラブ」の開発。「専門」と「総合」は、ともに対立する用語、あるいは反対語ではなく、1つの施設のなかで共存するというふうに変わっていくことになる・・・。

 

 

つまり、専門業態型の店舗が増える中で、会員にとっての便利さ、定期的な来館頻度、来館動機の維持、あるいは同時利用のためのパッケージング化といったものが、総合型クラブの競争対策上のカギになるということです。

 

 

ここ数年、日本の総合型クラブは専門業態にやや押され気味な感がありましたが、これから先はフィットネス先進国のアメリカで見られたように、総合型クラブの逆襲が起きるかもしれません。あなたのクラブではそのための準備は進んでいますか?

 

 

 

それでは次号をお楽しみに!

 

 

追伸

アメリカには総合型クラブ内で、複数の専門業態を格安料金で提供する企業があります。こうした業態が近い将来、日本にも登場するかもしれません。

 

ご参考⇒ 会員数世界No1プラネット・フィットネスを超えるコストパフォーマンスクラブ