業績好調フィットネスクラブが密かに行っていること | 「サクセス」by田村真二

業績好調フィットネスクラブが密かに行っていること

 

こんにちは。田村真二です。

 

 

今年10月に予定されている消費増税を前に、スーパーなど小売り各社で価格表示を見直す動きが広がっています。

 

 

政府は支払総額がわかりやすい「税込価格」での表示を推進していますが、逆に「税別表示」にする企業が一段と増えています。

 

 

理由は簡単。(安く見える)「税別表示」の方が、売れるからです。

 

 

(加えて、スーパーのように軽減税率の導入で同じ食品でも異なる税率となる場合があり、値札を複数用意するといった手間を防ぐ狙いがあります。)

 

 

当社でも最近こんな事例があります。今春(4月)から当社がコンサルティングを開始したあるフィットネス企業では、それまで月会費を「税込価格」で表示していました。

 

 

私が「税抜表示」に変更するようアドバイスを行うと、直ちにサイトを含めたすべての表示を「税抜価格」に変更。月会費は、あたかも値下げをしたかのように見ます。

 

 

驚いたことに結果は、税抜表示に変更した5月の入会数は前年対比123%に急伸しました(税込表示の4月入会数は同61%)。

 

 

(余談ですが、コンサルティングでは、行動スピードの早い企業は結果も早く出ます。)

 

 

 

客単価1%アップで10%の増益

 

 

経営を続ける上で「利益」(キャッシュ)は不可欠です(当然ですね)。

 

 

利益にもっとも効くのは「客単価」であり、本質は「顧客満足」と「価格設定」(顧客が満足して受け入れてくれるギリギリ高い価格)にあります。

 

 

例えば、営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)が10%の企業の場合、会員数が同じで客単価を1%上げることができ、かつ、コストがこれまで通りであれば、営業利益率は11%になりますから、それだけで「10%の増益」になります。

 

 

 

 

 

ところが、どの業界でも競争が激しくなり、売上(利益)予算未達状態が続くと、対策として一番簡単な方法、すなわち「値下げ」や「低価格商品」を投入する企業が増えます。

 

 

(注:フィットネスクラブの場合は、月会費の一律値下げは収入と利益の減少に直結する可能性が高く、大抵は、「低価格の会員種別」を新設して会員数を増やそうとする傾向が見られます。)

 

 

 

ライバル各社が低価格の会員種別を新設すると、同業他社も軒並み追従し、業界をあげてその(低価格の)会員種別がブームとなり「一般化」します。

 

 

その場合、会員数の上乗せができればまだいいのですが、会員数全体は変わらずに客単価の低下につながるケースも少なくありません。

 

 

前述の逆のケースで、営業利益率が10%の企業の場合、会員数が同じで客単価が1%下がり、かつ、コストがこれまで通りであれば、営業利益率は9%。つまり、「10%の減益」になります。

 

 

それでは企業としては困りますから、次はコスト削減で営業利益率の維持に努めようとします。しかしながら、コストの引き下げはサービスの低下や集客減につながる可能性がありますから、慎重さ必要です(もちろんムダなコストは削減・カットすべきです)。

 

 

 

価格戦略の7つの落とし穴にはまるな

 

 

このように、「価格は利益に直結する最重要レバー」であるにもかかわらず、多くの企業が「価格戦略の7つの落とし穴」にはまってしまいます(下図)。

 

 

 

 

 

「入会者が減っている」「会員数を伸ばすことができない」からと言って、安易に低価格の会員種別新設や値下げを行ってはいけません。仮に、低価格の会員種別を新設するのなら戦略的に(例えば、予め会員数制限を行っておくなど)行う必要があります。

 

 

私のところにも会員数の減少、競合クラブ出店による売上減により、「低価格の会員種別新設」や「値下げ」の相談に来られる人がいます。多くの場合、私はこう言います。

 

 

「むしろ値上げをしましょう!」

 

「中・高単価の会員種別を新設しましょう!」

 

 

すると皆さん、大抵驚かれます。しかし、私は真剣です。

 

 

低価格の会員種別新設や会費値下げは、やろうと思えば誰でも、いつでもできます。しかし今は、そのような方法(だけ)で売上を伸ばせるほど簡単な時代ではありません。

 

 

一方で、値上げをしようと思えばコスト増だけを理由にするのではなく、価値を高める工夫も必要です。中・高単価種別(通常月会費の2~20倍程度)を買っていただくには、商品開発と売り方開発、加えて働き方を変える必要があります。

 

 

これは簡単ではありません。しかし、顧客満足度と競争力は高まり(加えてスタッフの知識とスキルが自ずと高まる)、結果として売上・利益は増えます。

 

 

実際、今年に入ってからだけでも複数の企業で「会費値上げ」「中・高単価の会員種別」を導入し、売上・利益の向上につながりました(皆さん、とても喜ばれています)。

 

 

 

良い値上げ VS 悪い値上げ

 

 

昨今、国内多くのフィットネスクラブ企業で水道光熱費や人件費上昇などを理由に、月会費の値上げを実施しています。しかし、よく考えてみていただきたいのです。

 

 

オープン当時や数年前に比べて、会員が利用する施設や設備、トレーニングマシンや器具備品などの状態はよくなっていますか? 「老朽化」や「劣化」していませんか?

 

 

施設や設備など、クラブ側が提供するモノは、レタスやトマト、Tシャツやジャケットと同じ「商品」そのものです。

 

 

それらがオープン当時や数年前の状態以下のレベルで、月会費はオープン当時や数年前と同じだとしたら、それは「実質値上げ」であり、(私の言う)「悪い値上げ」です。

 

 

しかも、ランニングコストの値上げ(だけを理由に)そこから更に値上げをしたとしたら、利用者である会員はどう感じるでしょうか?

 

 

おそらく、短期的には月会費の値上げで客単価と売上は上がると思いますが、中長期的には顧客離れが起き、値上げをする前以下の経営状態になる可能性が高くなるのではないでしょうか。

 

 

一方で、一部の企業、一部の施設では、月日の経過とともに施設や設備などのハード面が経年劣化するではなく、むしろ「経年優化」しているところもあります。

 

 

ハード面はもちろん、提供プログラムの充実や人によるサービスソフトの向上など、会員や時代の変化に対応して進化を続けています。

 

 

ところが、こうした企業や施設は、「会費値上げ」に手を付けないままでいることが案外少なくありません。もちろん、収益や利益を十分得られているのでしたら構いませんが、そうでなければすぐさま「値上げ」や「プレミアム価格」に着手した方がいいでしょう。

 

 

そして、上乗せできた利益を使って、①新規会員獲得に投資する、②既存会員に再投資する、③従業員・関係者に還元する、④業務効率化のためのテクノロジーに投資する、などに有効活用すれば競争力はさらに増すでしょう。

 

 

 

クラブ経営改善の第一歩は「客単価」アップ取組みから

 

 

「価格設定」と「価格の打ち出し方」が、いかにビジネスのさまざまな要素を左右するかおわかりいただけたでしょうか。

 

 

それらの要素には、市場におけるポジショニング、誰を会員にするか、施設の造り、器具備品の品揃え、提供プログラムの種類と本数、どんなスタッフを採用し、どんな教育を施すか、ということも含まれますが、何より大切な要素は、経営手段としての利益です。

 

 

利益なしに、経営を続けることはできません。利益からは、経営者や店舗責任者が自信を持って前向きに取り組んでいるか、それとも弱気で仕方なく取り組んでいるのかが見て取れます。

 

 

現在の国内フィットネス市場において、とりわけ10年以上経営を続けている既存店は、会員数の大幅増加が難しい中、利益にもっとも効くのは「客単価」です(すでにコスト削減はかなり行っていますよね?)

 

 

客単価の向上に着手することこそが、経営改善のスタートであり、「経営改善は客単価アップ取組みから始める」のが正しい道筋です。もし、過去3年間客単価がほとんど横ばいなら、今すぐ客単価アップに取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

 

 

それでは次号をお楽しみに。