3月10日(土)、11日(日)に、兵庫県香美市のハチ北スキー場で開催されたSAJ(全日本スキー連盟)公認B級のモーグル大会2連戦に出場しました。

 

 結果を先に報告します。

 

 第1戦は、第1エアの着地後、かちかちに凍った40度超のランディングバーンを滑落し、こぶに当たってひっくり返りました。スキーが脱げていなかったのでDNF(Did Not Finish途中棄権)は免れました。脚が交差して立ちにくい姿勢でしたが、なんとか起き上がり、レースを続行し、ミドルセクションも大きく乱れましたが、コース脇の「まだ行ける」という声援に励まされ、第2エアを某ジャンで飛んでゴールインしました。

 

 第2戦は、DNS(Did Not Start欠場)にしようと思っていました。というのは、第1戦で転倒した際、お尻の外側にある中殿筋(ちゅうでんきん)を硬いアイスバーンにしたたか打ち付けて痛くてたまりません。第2戦の前の公式練習でまたも転倒して、同じところをアイスバーンに打ち付け、立っているのもつらいほどに痛みが増しました。痛くて痛くて脚の曲げ伸ばしがしにくいので、これではとてもハチ北のハードなバーンを滑るのは無理だと思い、DNSを届けようと思ったのですが、どこに言えばいいのかわかりません。とにかくリフトに乗ってスタート地点に上がろうと思って、滑り下りたところ、意外と脚が動きます。滑りながら脚の屈伸運動を繰り返しているうち、痛みがどこかに行ってしまいました。

 

 ぼくがどんな滑りをするのか楽しみにしている人も、ごくわずかではあっても、いるにはいるでしょう。そのわずかな期待に応えるためにも、死力を振り絞って滑ろうとスタートを切りました。第1戦に続いて、スタートから見て左のコースを選択しました。第1エアまでのトップ(ファースト)セクションは、左のこぶが浅くなっていたので、左側をしっかりと踏まなければならないと考えていたのですが、スタートしたら頭の中が真っ白になって忘れていました。左向きのターン(右外足)が深くなりすぎて左側に飛び出てしまいました。すぐさま、ラインに戻り、第1エアは小さくジャンプしました。

 

 今までハチ北の大会では第1エアの着地後、ランディングバーンを滑落するか、横に行ってしまうかだったのですが、今回はターン弧が大きくなってしまったものの、なんとかライン上に踏みとどまりました。止まるようなゆっくりとしたスピードになり、途中、ラインを外しながらも、ミドルセクションのこぶを滑りきって第2エアまでたどり着きましたが、体勢が不十分でエアがすっぽ抜け、着地でお尻と背中を付いて転倒しました。またも運よくスキーが脱げなかったので、なんとかゴールまで滑ってDNFは免れました。

 

 とまあ、いつものことではありますが、なんとも期待外れな結果に終わってしまいました。

 

 ここからはちょっと理論的な話になります。

 

 昨年7月に会社を定年退職し、京都府綾部市の実家で父母とともに暮らすようになって、今シーズンはスキーに行く時間があまりなくて、初スキーが1月28日と大きく出遅れました。しかし、ハチ北スキー場までは一般道で2時間で行けるので、父母がデイサービスに行っている時などの空いた時間を利用して、ハチ北に通って練習しました。

 

 今シーズンの課題は、今までと同じですが、(1)ターンの左脚の踏みが弱いのを直すことと(2)エアの着地後のスムーズなこぶへの入りです。

 

 一つ目の課題、右向きのターンで外足となる左脚の踏みが弱いのは、スキーを始めたときからの欠点です。この課題を克服するためもあって、最近は家事の合間などを利用して、家でスクワットをするときに、膝小僧が前に出ないようにして、お尻で足のくるぶしあたりに体重をかけるようにしています。

 

 このスクワットを練習するようになってから、ぼくが独自に名づけたダイナミック・ポジショニング・ターン(DPT=Dynamic Positioning Turn)がしやすくなりました。

 

 ダイナミック・ポジショニング・ターンとは、スキーに対するスキーヤーの重心の位置(ポジション)を連続的に移動することによってスキーを旋回させる技術です。「連続的に」というところがみそで、ターンの後半にかかとでしっかりとスキーを押さえつけることによって、スキーの旋回を止め、ターンの前半に重心の位置をトップ側に移動することによって新たなターンを誘導します。ターンの前半でスキーを後ろに押して体を前(谷側)に出さなければならないので、慣れないうち恐怖心に邪魔されますが、腰を前に出すことさえできれば、どんなバーンでも極めてスムーズにターンすることができます。

 

 ところが、体を前に出すことばかり意識していると、体重がトップ側にかかったままになり、テールへの荷重が不十分になってスキーが「ハ」の字に開いてしまいます。ターンの後半ではしっかりとお尻を落としてかかとに体重をかけなければなりません。膝小僧を前に出さないスクワットをするようになって、お尻でスキーのテールに体重をかけるというターン後半の動作がうまくできるようになりました。あとは左足のかかと側でも右足と同じようにしっかりと踏むことを常に意識しておくことで解決できそうです。

 

 もう一つの課題、エアの着地後のターンへの入りも長年、解決できないままになっています。初めてハチ北の大会に出場したとき、急斜面にある第1エアの着地後、転倒したり、横にそれたりして、ターン点がなくなってしまいました。白馬八方尾根スキー場で自分でエア台を作ってエア練習したりしたのも、ハチ北の第1エアの着地を克服したいということが一つの理由でした。

 

 エアの着地後、こぶにスムーズに入るには、それまでの滑走のすべての動作がきちんとできている必要があります。

 

(1)ターンからエア台への進入

 最後のこぶで体を前に出して、アプローチ(最後のこぶの後の下り坂)の斜度に対して体が垂直になるようにします。

 

(2)キッカーでの姿勢

 アプローチを滑り終えて、水平の部分(トランジション)からキッカーに入ります。今回のハチ北の大会では第1エアが32度、第2エアが31度になっていました。ここでも体をキッカーの斜度に対して垂直に保ちます。アプローチでは体は約30度の前傾、キッカーでは約30度の後傾ということになります。

 

(3)踏みきり

 スキーがリップ(キッカーの先端)を過ぎるまで、キッカーを踏み続けます。そうすることによって、体がキッカーの角度(今回は約30度)で上方に向けて発射されます。踏みきりのタイミングが早いと、ジャンプの高さが出ません。しかも、上半身から先に飛び出してしまい、キッカーから遅れて飛び出したスキーが振り子の原理で前に出るので、後傾の着地になってしまいます。体が上方向に発射されると、空中で体が伸びた後、前にあったスキーが振り子の原理で後ろに下がって前傾の着地になります。

 

(4)着地

 ランディングバーンに対して体が垂直になるように着地しなければなりません。(1)~(3)までが全部できてないと、そういう体勢にはなりません。しかも、大会では、第1エアを小さく飛ぼうとする人が、アプローチの終わりの方でチェック(横滑りによる減速)を入れるので、アプローチに小さなこぶができたりして、アプローチの斜度に対して体を垂直に保つことも、キッカーの角度に対して体を垂直に保つことも技術が要求されます。

 

 

(5)ターンへの入り

 急なランディングバーンに対して垂直の姿勢で着地した後、どうするか。今回のハチ北の大会は、開催直前に雨が続き、コースの雪が溶けたところに新雪が乗って、かちかちの硬いアイスバーンになりました。ランディングバーンの続きに新雪を寄せて作られたこぶは、みんなが横滑りしてはじき飛ばされてしまいました。その結果、ランディングバーンの長さはほぼ1旗門分(コース全長の10分の1で、今回の場合は約20m)にもなりました。斜度は40度を超えています。5mのジャンプをしたとして、着地後、15mほど何もない平らな氷の斜面をターンして下りなければなりません。しかも、完全にフラットではなく、でこぼこがあります。第1エアの着地がハチ北の大会コースの最大の関門です。

 

 エアの着地後、いかにスムーズにこぶのターンに入るか。そればかり考えて練習してきました。大会前、ハチ北に練習に行ったとき、モーグルトレーニングコースを管理しているアニキこと加藤大輔さん(大会のコース係長)にも「いいポジションで着地することがすべて」というアドバイスをもらいました。

 

 そのためにどういう動作をすればいいのだろうかと考えました。

 

 ぼくがオフトレーニングに取り入れたインラインスケートのハーフパイプやトランポリンの動きを参考にしました。インラインスケートのハーフパイプでは、90度に近い壁に挟まれた中で前後に滑走します。ハーフパイプに対して常に体を垂直に保つので、バックで上の方に上がったときには体はほぼ90度の前傾、前向きの滑走で上の方に上がったときにはほぼ90度の後傾です。これがきちんとできれば、40度や50度の斜度に体を垂直にすることなどわけのないことです。

 

 トランポリンでは腹落ちと背落ちをよく練習しました。腹落ちでは、体を垂直にしてジャンプし、空中で膝を抱えて体を前に倒して、90度の前傾姿勢で着床します。背落ちからジャンプして腹落ちでは、90度の後傾姿勢で着床した後、90度の前傾姿勢で着床します。つまり180度も前傾させるわけです。90度も180度も体を前傾させることができるのなら、40度や50度の前傾などわけのないことです。

 

 エア台の手前の最後のこぶからアプローチに入るときにする動作と、エアの着地時にする動作は同じであるはずです。アプローチとランディングバーンは同じような斜度で、その斜度に対して体を垂直にする動作だからです。

 

 第1戦では第1エアの着地後は今まで通りの失敗の繰り返しでしたが、こんなことを考え続けているうちにある方法を思いつきました。さっそく第2戦で試してみたら、初めてですが、なんとかライン上に踏みとどまることができました。

 

 どういう動作をしたかということは、選手各自がめいめいに考えることなので、ここには書きませんが、おそらくぼくが試した方法が正解だと思います。あとは練習を重ねて、どんなときにもこの動作ができるようにすることですね。10年以上にもわたって練習しながら考えてきたことの答えが得られたのなら、こんなうれしいことはありません。

 

 ただし、これは着地までの動作です。いいポジションで着地したとして、その後、どうやってこぶのターンに入るかという問題があります。着地後、最初のこぶに入る動作は、スタート時の動作と同じです。直滑降からこぶに入るという点が共通しています。最初のこぶのターンは通常のターンの半分だけです。(通常のターンが半円だとすると、最初のこぶのターンは4分の1円です)

 

 ランディングバーンをハイスピードで滑り下りて、最初のこぶで弾き飛ばされないようにするために、どうやって衝撃を吸収するのかなど、解決しなければならない問題はまだいろいろとあります。