BLACK 17話 ―死鳥(デス・バード)― | 雨の降る夜

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ほとんど小説オンリーです。

大声と共に、乱暴に扉を開ける音が聞こえ、荒々しい足音が響いた。


足音の主は、病室の扉を開けた状態で止まっているクロを見つけると、迷わず蹴りを繰り出した。クロは慣れた様に避け、その拍子に2人とも病室の中へと入っていった。


「誰かと思ったらハリス隊長殿ではないですか。 この部屋には病人もいるので少しはわきまえてもらえないでしょうか」


ハリス隊長と呼ばれた男は追撃を開始しようとしたが、リイアの姿を見て何とか踏みとどまる。


20代と言われてもまだ納得できるが、30代と言われたら思いっきり頷ける様な、若者とは言い難い容姿だった。


服装は紺色の軍服で、腰には海賊が持っている様な湾曲した剣を左右2本ずつ、計4本さしている。


「……黒猫! てめぇは何度バッチを失くしたら気が済むんだ。 これで何回目だと思ってやがる!!」


バッチと聞き、リイアはシグレに見せてもらったものを思い出す。


確か、高価な鉱石を使っているため失くしたら自警団からの信用が落ちるとか。


「13回目だね」


よくマスターの称号が剥奪されないものだ。


「そんな細かい数字を覚えてるぐらいなら、ちょっとは気をつけやがれ!」


「でも隊長、普通戦闘してたらポロッと落ちるものだよ」


「普通はポロッと落ちないところに保管するものだがな」


「別にそんなものなくても、さすがにもう僕の顔は覚えただろ? ブレイカーとしての証明なんだから、僕には必要ないじゃないか」


「ブレイカーとして動きたいがために顔を変える馬鹿野郎もいんだよ」


扉の方を見ると、いつの間にか双子もいた。


リイアが耳打ちで、


「あの人は……?」


とシグレに聞いた。


「自警団第一部隊の隊長さんだよー。 自警団は第十五部隊まであって、戦闘をする隊士の中では、実質あの人がトップなんだよー」


「すごい人じゃないか! ため口で大丈夫なのか?」


「うーん、本来は敬語で話すべきなんだけどねー。 クロ君はあの人の親が自警団に入団してからの付き合いだからねー。 第一部隊とは何かと関わりも多いしねー」


言いながら、シグレはポケットから時計を取り出して見た。


「そろそろドーピングも切れるし、横になっとこうかー」


リイアを寝かし、また器具を着ける。


麻酔を投与した様で、リイアの目はだんだんととろんとしていき、眠りについた。


「シグレ、リイアは大丈夫なのですか?」


カレンが心配そうに聞いてきた。


「大丈夫だよー。 着々と回復してるからー。 ドーピングの方も、これで多分完成するー……してみせるよー、僕の名誉にかけて絶対にー」


神崎一族のドーピングを簡単に作ることが出来なかったのが余程悔しかったのか、シグレの目は闘志に燃えていた。


そもそも、新しい薬を作るということはそんなに簡単なことではないのだが。


リイアがちゃんと回復していることを聞き、カレンは安堵のため息をつく。


その横では、クロに殴りかかろうとするハリスを、カノンが必死で止めていた。


「止めんじゃねぇ! 今日という今日は絶対ぶん殴る!!」


「ま、まぁ落ち着いてくださいよ隊長。 あんたら2人がガチ喧嘩したらこの家吹っ飛びますから! ってかクロもニコニコ笑ってないでさっさと謝れー!!」


そんな可哀想なカノンを背景に、シグレは椅子から立ち上がった。


どうやらこれからまたドーピング作りに没頭するようだ。


「待て」


病室から出ようとするシグレに、ハリスが声をかけた。


「一応てめぇらも聞いといた方がいいだろう。 業務連絡だ」


4人全員がハリスに顔を向ける。


「ローラ嬢が、今日付けでマスターを継いだ」


クロの笑顔が微妙に、本当に微妙に引き攣った。


「……早くない?」


「先代が病を患ってな。 善は急げと継いだそうだ。 次の会議から参加する」


「あぁ、そう……。 それなら、しょうがないね……」


笑顔のまま床を見つめるクロ。


その様子を、シグレは楽しそうに、カノンは苦笑いで、カレンは無表情で見る。


「それともう1つ」


ハリスの声に、緊張感が入った。



「『死鳥(デス・バード)』の4番目が殺られた」



沈黙が流れる。


意味が分からないという訳ではない。分かった上で、尚も誰も口を開かない。


暫くしてクロが、何かを考え込むように口元に手をやりながら、言った。


「4番目って言うと……孔雀さんかな」


「あぁ、孔雀のライクだ。 ズタボロになった死体が、死鳥(デス・バード)の基地の前に捨てられてたらしい」



死鳥(デス・バード)――鳳凰ガイキが率いるブレイカーグループ。


団員は全員カラスマスクをしており、鳥名の二つ名を持っている。


15人近くいるこのグループには、他とは群を抜くトップ5がいる。


その中の1人、孔雀のライク。


4番目と言っても、国を支える一角の中の4番目だ。その戦闘力は凄まじい。


ただのハンターに、殺られる様な人間ではない。



「ルシファーの仕業だと、俺は思う」


「たぶん正解だよ。 そんな大胆なこと、それなりの自信がなくちゃできない。 ……ガイキ君、まだ正気を保ってる?」


「相当お怒りだ。 俺に報告する時の目もめちゃくちゃ血走ってたぜ。 ありゃルシファーを本気で潰しにかかるな」


そこまで言って、ハリスはクロにバッチを投げた。


「お前らも気をつけろ。 下手すりゃブレイカーがハンターに喰われることになりかねねぇ。 黒猫、もう絶対バッチ失くすなよ。 失くすなよ。 失くすなよ」


きっかり3回言って、ハリスは出て行った。


「んー……、また何でガイキ君を逆撫でするようなことするんだろー。 死体なんて適当に処理しとけば、行方不明で済んだのにー」


「挑発、でしょう。 自分達はその気になればブレイカーを潰せる、とでも言いたいのはないですか?」


「ちっ、悪趣味だぜ」


「全くだね。 後々絶対後悔するよ」


クロはいつもの笑顔で、



「『鳳凰』を本気で怒らせて生きている人間なんて、僕の知る300年では見たことない」














■□■□■アトガキ■□■□■

アト「遅すぎ」


レイン『アトちゃん、開口一番でそれはないと思う……」


「そもそも管理人は一話分を書き始めてから投稿するまでが長すぎるんだよ。 一回紙に書いてから写せばいいのに」


『だって、めんどくさいじゃん♪』


「その考えのせいで、今まで何度アトガキまでいって全てが白紙になったのかな?」


『い、今はちゃんと小まめに保存するようになったもん!』


「まぁいいや。 死鳥(デス・バード)って……。 『死鳥』の部分いる? 何でわざわざ漢字を無理やり……」


『BLACKは英語なのにデス・バードは片仮名って変じゃん。 禁書目録ではよくつかわれる表現だしさ。 憧れてたんだよ』


「パクリかよ」


『パクリだよ』


「開き直りやがったこいつ」


『それより、皆様に謝罪することがあります。 前回、シグレがブレイカーの数を「20人くらい」と言っていたのですが、話の都合上「40人くらい」に変えました。 誠に申し訳ありません』


「20人と40人って大分違うよね」


『ほら、アトちゃんも謝って!』


「この度は僕の躾が足らず、ご迷惑をおかけしました。 全ては管理人の責任です」


『君に躾けられた覚えはないし、結局全部私のせいになってるよねこれ? まぁそうなんだけどさー』


「ノープランでいくから……」


『という訳でアトちゃん、君にどうしてもやってもらいたいことがあるんだ』


「え? あ、ちょっ、やめ……!」


――――しばらくお待ちください――――


「どくしゃのみなしゃん、ほんとうにすみまちぇんでした」


『萌え~~~!! ロリっ娘が! ショタっ子が! ダボダボの服を着て! 上目遣いで!!』


「管理人コロス」


『へっへーん! 結局君は私によって作られているんだよ! 妄想アトちゃんマジ可愛いからうふえへあは』


「誰かこいつを底なし沼に沈めてくれ」


『けして私はロリコンでもショタコンでもないんだよ。 ただお持ち帰りしたくなるだけでアトちゃんチェーンソーは流石に死ぬからやめてー!!


「僕のロリショタ設定は覆されないのか……!!」


『もう諦めなさい。 私は大好物だ』


「管理人コロス」


『ア、アトちゃんが本気で殺人計画を練り始めたので、今回はこの辺で。 長文失礼しましぎゃぁぁぁぁ!!』


「管理人コロス!!」



管理人の無事をお祈りください――。