アルゼンチンと言えば、
アルベルト・エバリスト・ヒナステラ(Alberto Evaristo Ginastera)や
アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)が有名ですが、
私は、19世紀に活躍、ないし、
19世紀から20世紀にかけて活躍した作曲家が知りたいなと思い、
調べてみたところ、勿論いました。
サトゥルニノ・ベロン(Saturnino Berón, 1847-1898)は、
民族舞曲の旋律を用いた
交響詩『パンパ』(Poema sinfónico "La Pampa", 1878)や
『ブエノスアイレス交響曲』(Sinfonía Buenos Aires, 1878)を書き、
アルトゥロ・ベルッティ(Arturo Berutti, 1862-1938)は、
アルゼンチン交響曲(Sinfonía Argentina, 1890) を書きました。
『ブエノスアイレス交響曲』と言えば、
ピアソラも『3楽章の交響曲”ブエノスアイレス”』を書いてます。
『アルゼンチン交響曲』と言えば、
フアン・ホセ・カストロ(Juan José Castro)によるものもありますが、
現代音楽家であるため、余り期待はできません。
とはいうものの、上記の曲は、
ピアソラの『3楽章の交響曲”ブエノスアイレス”』以外、
CD化を確認しておりません。
CD化している19世紀から活躍した
アルゼンチン作曲家の曲を今回は紹介します。
アルベルト・ウィリアムス
Alberto Williams(1862-1952)
ブエノスアイレス生まれ。
経歴についてはこちらが詳しい↓
Alberto Williamsについて - 中南米ピアノ音楽研究所
多作家として知られ、交響曲は9曲も書いています。
一体何百曲作曲したのか?全集CDを出すのは極めて困難と思われる。
しかも、ロマン派真っ只中の時代に生まれ、
現代音楽真っ只中の時代まで生きるという長寿であったため、
前期から後期にかけて作風が変化しているようです。
初期は、平均的なロマン派の曲を書いていたようですが、
中期は、ガウチョ(Gaucho)の音楽の影響を受けた『国民楽派』的な曲、
後期は、印象派などの『ポストロマン派』的モダニズムの影響を受けた作風。
でも、原則的にはロマン派の枠内という穏健な作風。
交響曲第7番ニ長調『永遠の休息』(1937)
Séptima sinfonía en re mayor, op.103 "Eterno Repos"
エジプトが題材のようですが、メロディ的にはラテンアメリカ風です。
第1楽章(ピラミッド La Pirámide)は、
のっけから、ゆっくりとしたテンポだが、
不協和音で聴く者を畳み掛ける様な威圧的旋律が登場する。
ショスタコーヴィチの『交響曲第5番』の冒頭のような・・・。
が、4:00辺りからは、
印象派風の夢見る様な優しい感じの夜想曲風メロディが暫く続く。
8:10辺りから、冒頭のメロディが再び現われるが、その後、
それまでとはうってかわって華やかな雰囲気に変化し、
派手々々しく締めくくられる。
第2楽章(アメンの踊り子 Danzarinas de Amón)は、
如何にもラテンアメリカの社交ダンスを思わせる
『ハバネラ』のテンポのメロディがメインで現われる、国民楽派風の曲。
第1楽章とは極めて対照的で明るい雰囲気。
ハープ等によって、中華風(?)のメロディも出てくる不思議な曲。
ヴァイオリン独奏部分なども聴くと、
色んな要素が雑多に入っているなと思った。
うっとりするような夢見るような感じで優しく締めくくられる。
第3楽章(ガラガラヘビの選手 Tacadoras de crótalos)
カスタネットが出て来て、如何にも『フラメンコ』っぽい。
ラテンのダンスの雰囲気。
第2楽章とは違い、
優雅さと緊張感の混ざった速いテンポの曲が前部と後部に置かれ、
中間部は逆に優雅でゆったりとした対照的メロディとなる。
第4楽章(永遠の休息 Eterno Repos)は、最初、弦楽によって、
印象派風の夜想曲風メロディが奏でられる。
が、7:30頃と8:30頃に、
いきなり激情的な強奏が出て来て聴く者を驚かす!!
9:30を過ぎた辺りから、金管による勇壮な行進曲風メロディが現われ、
そのハッピーエンドな雰囲気のまま、
栄光に包まれている様な感じで締めくくられる。
交響詩『イグアスの歌』(1943)
Poema sinfónico "Poema del Iguazú" , op.115
『イグアス』とは、
先住民族『グアラニー族』の言葉で「大いなる水」(Y Guazú)を意味する。
『イグアスの滝』は、
ブラジルとアルゼンチンに跨る世界三大瀑布の一つとして有名。
4楽章構成である。
『イグアス川』を描写したものだろうか?
ローカルな題材を扱っているという意味では国民楽派的だが、
メロディライン的には無国籍的なロマン派や印象派などの作風で
余り特徴的なものが見出せず、国民楽派的要素が余り感じられない。
その為、全体的にマンネリズム的退屈さを感じてしまった。
第4楽章のクライマックスの力強いファンファーレ風旋律は、
『イグアスの滝』を描写したものだろうか?
そういった部分等、聴き所は幾つもあるにはあるが。
アルベルト・ウィリアムス『交響曲第7番』『イグアスの歌』
演奏:グラン・カナリア・フィルハーモニー管弦楽団
(Orquesta Filarmónica de Gran Canaria)
指揮:エイドリアン・リーパー
(Adrian Leaper)
【LC 3480】1997
【追記】
肖像画像追加(2018/5/5)