朝日新聞系の『週刊朝日』がこの5月で休刊となることが決まった。
一般には夏の高校野球の主催新聞社であるため、夏の甲子園の高校野球特集号などでも有名だ。
筆者も本誌のほうは、巻末の山藤章二氏の「ブラックアングル」が好きで、大学時代によく読んだものである。

 

さて、その『週刊朝日』がムック本として出していた「大学の選び方」には、かつて全国の国公立私立大学の就職実績が上位10社ではあるが、一覧形式で毎年発行されていた。筆者のように大学の情報を集めている者には非常に参考になったが、個人情報保護の関係なのか、2015年ころを最後にかつての全大学網羅方式の編集スタイルで出なくなったのは残念である。

 

 

 

週刊朝日「大学の選び方」

 

現在では、旺文社の初夏の『蛍雪時代』の臨時増刊号に各大学に取材したデータを上位数社限定ではあるが載せているくらいである。ただし、各大学側が任意に回答記載しているため、まともに回答していないところが非常に多い。

さすがの筆者も、費用対効果の馬鹿馬鹿しさから今年は購入するのを取りやめたぐらい不完全なデータである。

そうしてみると、現在では、進研模試のベネッセが『マナビジョン』というサイトに回答が寄せられた範囲で各大学の就職・進路データを公表している。もちろん閲覧は無料であり、原則として学部別に二期比較で実績を載せているので、各大学の傾向がとりやすく便利である。

現在、志望校を絞り込もうとしている受験生は最高にするといいだろう。

 

さて、上に『蛍雪時代』の臨時増刊号の就職実績データ記載を評して「各大学側が任意に回答記載しているため、まともに回答していないところが非常に多い。」と述べたが、これは残念ながらベネッセの調査においても同じである。

どれだけ不完全なのかというと、ひとつの例であるが、中・四国の国立大学10校(各県1校+鳴門教育大学)のなかでこのベネッセの調査にまともに回答したのがわずか国立の3校しかないという事実がこれを象徴している。

最新の2021年度(2022年3月卒業生)について、公表3大学のデータを見てみよう。(※医学部と夜間主コースについては割愛している。)

中・四国地方の国公立大学で各学部ごとに各年別の就職先上位企業・政府機関名を採用人数別にきちんと公表しているのは、中・四国9県10校のうち下記の香川大学、広島大学、山口大学の3校であった。


(1)香川大学

法学部
<2021年度>香川県庁(10人)、高松市役所(6人)、徳島県警察(4人)、香川県警察(3人)、高松国税局(3人)、高松地方検察庁(2人)、倉敷市役所(2人)、愛媛県庁(2人)、徳島地方裁判所(2人)、三木町役場(2人)
<2020年度>香川県庁(4人)、高松国税局(3人)、高松市役所(3人)、岡山県庁(3人)、愛媛県庁(3人)、高松地方検察庁(2人)、高松法務局(2人)、四国厚生支局(2人)、香川県警察(2人)、明治安田生命保険(2人)

経済学部
<2021年度>中国銀行(14人)、香川県庁(8人)、倉敷市役所(8人)、岡山県庁(7人)、高松市役所(6人)、STNet(6人)、広島国税局(5人)、香川銀行(5人)、日本生命保険(4人)、伊予銀行(4人)
<2020年度>中国銀行(11人)、香川県庁(9人)、岡山県庁(7人)、徳島県庁(7人)、高松市役所(4人)、四国財務局(4人)、香川労働局(3人)、NTTドコモ(3人)、百十四銀行(3人)、香川銀行(3人)

教育学部
<2021年度>小学校教員(53人)、中学校教員(26人)、保育士(7人)、特別支援学校教員(6人)、高等学校教員(5人)、天満屋(3人)、香川県庁(2人)、百十四銀行(2人)、幼稚園教員(1人)、こども園教員(1人)
<2020年度>小学校教員(65人)、中学校教員(16人)、高等学校教員(10人)、特別支援学校教員(9人)、幼稚園教員(5人)、香川県庁(5人)、高松市役所(4人)、保育士(3人)、こども園教員(2人)、愛媛県庁(2人)

創造工学部
<2021年度>四電工(5人)、四国地方整備局(4人)、香川県庁(3人)、タダノ(3人)、三浦工業(3人)、大林組(2人)、アオイ電子(2人)、四電技術コンサルタント(2人)、ローム・ワコー・エレクトロニクス(2人)、復建調査設計(2人)
<2020年度>四国地方整備局(5人)、富士通四国インフォテック(4人)、メイテック(4人)、中国地方整備局(4人)、レグザム(3人)、アオイ電子(3人)、香川県庁(3人)、四国電力(2人)、岡山県庁(2人)、石垣(2人)
※改組される前の工学部(旧学部)の卒業生の内容を記載しています。
 

農学部
<2021年度>山崎製パン(3人)、岡山県庁(2人)、フソウ(2人)、フィードワン(2人)、井上誠耕園(1人)、オイシス(1人)、アクシス(1人)、イカリ消毒(1人)、香川県信用農業協同組合連合会(1人)、アース環境サービス(1人)
<2020年度>香川県庁(4人)、イカリ消毒(2人)、山崎製パン(2人)、フジパングループ本社(2人)、リコージャパン(2人)、中国精油(2人)、南海プライウッド(2人)、マリンフーズ(2人)、山田養蜂場(2人)、徳島県庁(1人)

(2)広島大学

文学部
<2021年度>国税庁広島国税局(3人)、広島県教育委員会(2人)、厚生労働省広島労働局(2人)、愛媛県(2人)、広島市教育委員会(2人)、広島銀行(2人)、第一生命保険(2人)、大分県教育委員会(2人)、経済産業省中国経済産業局(1人)、広島市(1人)
<2020年度>広島県(3人)、国税局広島国税局(3人)、広島市(3人)、愛知県教育委員会(3人)、島根県(3人)、広島銀行(2人)、広島地方裁判所(1人)、広島県教育委員会(1人)、中国電力(1人)、文部科学省(1人)
<2019年度>広島県(4人)、中国電力(3人)、日本郵便(3人)、広島市(3人)、広島県教育委員会(3人)、山崎製パン(2人)、広島銀行(2人)、財務省中国財務局(2人)、国税庁東京国税局(2人)、大分県(2人)

法学部
<2021年度>広島県(5人)、厚生労働省広島労働局(4人)、広島市(4人)、国土交通省中国地方整備局(3人)、三菱電機(3人)、国土交通省中国運輸局(2人)、厚生労働省山口労働局(2人)、三井住友信託銀行(2人)、中国電力(2人)、広島地方検察庁(2人)
<2020年度>広島県(4人)、広島県警察(3人)、厚生労働省山口労働局(3人)、国土交通省中国地方整備局(2人)、高松市(2人)、西日本高速道路(2人)、広島銀行(2人)、国税庁東京国税局(2人)、熊本県(2人)、財務省中国財務局(2人)
<2019年度>SMBC日興証券(3人)、国税庁福岡国税局(3人)、広島県(3人)、日本生命保険(2人)、富士通(2人)、かんぽ生命保険(2人)、厚生労働省広島労働局(2人)、国税庁広島国税局(2人)、山口県(2人)、広島県警察(2人)

経済学部
<2021年度>広島銀行(6人)、広島県(4人)、大分県(4人)、日本政策金融公庫(3人)、大阪府(2人)、国税庁広島国税局(2人)、中国銀行(2人)、山口県(2人)、愛媛県(2人)、中国電力(2人)
<2020年度>広島銀行(7人)、国税庁広島国税局(4人)、税理士法人長谷川会計(3人)、鳥取県(3人)、愛媛県(2人)、広島市(2人)、西日本電信電話(2人)、大分銀行(2人)、広島県(2人)、三井住友銀行(2人)
<2019年度>広島銀行(5人)、福岡銀行(5人)、山口フィナンシャルグループ(4人)、三井住友信託銀行(3人)、日本政策金融公庫(2人)、野村證券(2人)、損害保険ジャパン日本興亜(2人)、国税庁東京国税局(2人)、国税庁広島国税局(2人)、広島市(2人)

教育学部
<2021年度>広島県教育委員会(20人)、広島市教育委員会(19人)、福岡県教育委員会(7人)、広島県(6人)、山口県教育委員会(3人)、ニトリ(3人)、広島銀行(3人)、広島市(3人)、島根県教育委員会(3人)、厚生労働省広島労働局(2人)
<2020年度>広島県教育委員会(11人)、広島市教育委員会(10人)、鴎州コーポレーション(3人)、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(2人)、日本郵便(2人)、日本航空(2人)、ベネフィット・ワン(2人)、西日本電信電話(2人)、中国電力(2人)、広島県(2人)
<2019年度>広島県教育委員会(9人)、愛媛県教育委員会(6人)、滋賀県教育委員会(5人)、福岡県教育委員会(4人)、愛知県教育委員会(4人)、大分県教育委員会(4人)、ベネッセコーポレーション(4人)、マイナビ(4人)、日本生命保険(4人)、広島県(3人)

総合科学部
<2021年度>西日本電信電話(3人)、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(2人)、東京海上日動火災保険(2人)、広島銀行(2人)、総務省中国総合通信局(1人)、厚生労働省広島労働局(1人)、マイクロンメモリジャパン(1人)、テレビ新広島(1人)、広島市(1人)、日本放送協会(1人)
<2020年度>広島県(3人)、マツダ(2人)、中国電力(2人)、長野県(1人)、広島テレビ放送(1人)、山口家庭裁判所(1人)、広島市(1人)、広島地方裁判所(1人)、国土交通省中国運輸局(1人)、大阪市(1人)
<2019年度>広島県(4人)、マイナビ(3人)、東京海上日動火災保険(2人)、富士通エフサス(2人)、アクセンチュア(1人)、日本放送協会(1人)、JTB中国四国(1人)、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(1人)、中国電力(1人)、経済産業省中国経済産業局(1人)

理学部
<2021年度>愛知県教育委員会(2人)、NECソリューションイノベータ(1人)、鳥取県(1人)、パナソニック(1人)、マイクロンメモリジャパン(1人)、気象庁大阪管区気象台(1人)、広島県教育委員会(1人)、財務省中国財務局(1人)、中国電力(1人)、広島銀行(1人)
<2020年度>西日本電信電話(2人)、JCRファーマ(2人)、広島県(2人)、中国電力(1人)、マイクロンメモリジャパン(1人)、静岡県(1人)、岡山県(1人)、会計検査院(1人)、オタフクソース(1人)、広島市教育委員会(1人)
<2019年度>日本アイビーエム中国ソリューション(2人)、コスモス薬品(2人)、住友化学(1人)、シャープ(1人)、双日(1人)、マイクロンメモリジャパン(1人)、万田発酵(1人)、国税庁広島国税局(1人)、広島市(1人)、広島県教育委員会(1人)

工学部
<2021年度>マツダ(7人)、広島県(5人)、ダイキン工業(3人)、清水建設(3人)、大林組(2人)、ダイハツ工業(2人)、九州電力(2人)、パナソニックホームズ(2人)、中国電力(2人)、西日本高速道路(2人)
<2020年度>マツダ(6人)、積水ハウス(3人)、広島市(3人)、広島県(3人)、中国電力(3人)、清水建設(2人)、三菱重工業(2人)、サノヤスホールディングス(2人)、ダイハツ工業(2人)、四国電力(2人)
<2019年度>広島県(4人)、鹿島建設(3人)、ダイハツ工業(3人)、清水建設(3人)、西日本高速道路(3人)、三浦工業(3人)、広島市(3人)、中国電力(2人)、マツダ(2人)、トヨタ自動車(2人)

生物生産学部
<2021年度>池田糖化工業(2人)、長崎県(2人)、福岡市(2人)、厚生労働省 広島検疫所(1人)、山崎製パン(1人)、一般財団法人
日本食品分析センター(1人)、日清オイリオグループ(1人)、広島県庁(1人)、雪印メグミルク(1人)、農林水産省(1人)
<2020年度>広島県(4人)、広島市(2人)、農林水産省(2人)、中部飼料(1人)、三菱食品(1人)、フジパングループ本社(1人)、大阪検疫所(1人)、オタフクソース(1人)、西日本電信電話(1人)、伊藤ハム販売(1人)
<2019年度>広島銀行(2人)、オイシス(2人)、味日本(1人)、森永乳業(1人)、中国塗料(1人)、オタフクソース(1人)、日本アイビーエム中国ソリューション(1人)、国立研究開発法人水産研究・教育機構(1人)、農林水産省中国四国農政局(1人)、広島県(1人)


(3)山口大学

人文学部
<2021年度>山口県(教員を除く)(3人)、ケイズ(2人)、中電工(2人)、広島県(教員)(2人)、山口県(教員)(2人)、福岡県(教員)(2人)、兵庫県(教員)(2人)、厚生労働省山口労働局(一般職)(1人)、国立大学法人山口大学(1人)、住友生命保険(1人)
<2020年度>山口県(教員)(3人)、山口県(教員を除く)(3人)、TSグループ(2人)、イオンリテール(2人)、
ジャパンインターナショナル総合研究所(2人)、アウトソーシングテクノロジー(2人)、コスモス薬品(2人)、日本セレモニー(2人)、厚生労働省所管地域医療機能推進機構(2人)、明治安田生命保険(1人)

経済学部
<2021年度>山口県(教員を除く)(11人)、国土交通省中国地方整備局(一般職)(5人)、山口県警察(5人)、あいおいニッセイ同和損害保険(3人)、広島銀行(3人)、厚生労働省山口労働局(一般職)(3人)、財務省広島国税局(一般職)(3人)、山口県山口市(3人)、山口県周南市(3人)、長府工産(3人)
<2020年度>山口県(教員を除く)(11人)、山口フィナンシャルグループ(9人)、EY新日本有限責任監査法人(4人)、三井住友海上火災保険(4人)、西京銀行(3人)、吉南(3人)、財務省中国財務局(専門職)(3人)、広島銀行(2人)、厚生労働省山口労働局(一般職)(2人)、法務省山口地方検察庁(一般職)(2人)

教育学部
<2021年度>山口県(教員)(52人)、広島県(教員)(19人)、福岡県北九州市(教員)(8人)、愛媛県(教員)(3人)、鳥取県(教員)(3人)、岡山県(教員)(2人)、厚生労働省山口労働局(一般職)(2人)、福岡県(教員)(2人)、宮崎県(教員)(1人)、香川県(教員)(1人)
<2020年度>山口県(教員)(49人)、広島県(教員)(8人)、広島県広島市(教員)(5人)、福岡県(教員)(5人)、愛知県(教員)(3人)、岡山県(教員)(3人)、高知県(教員)(3人)、国立大学法人山口大学教育学部附属山口小学校(3人)、大分県(教員)(3人)、長崎県(教員)(3人)

国際総合科学部
<2021年度>ニトリ(4人)、オタフクソース(2人)、佐川グローバルロジスティクス(2人)、不二貿易(2人)、NECソリューションイノベータ(1人)、野村證券(1人)、ゼンショーホールディングス(1人)、日本通運(1人)、帝国データバンク(1人)、東京海上日動火災保険(1人)
<2020年度>日本電気(3人)、KRY山口放送(2人)、羽田空港サービス(2人)、トクヤマ(2人)、ファーストリテイリング(2人)、太平洋セメント(2人)、キヤノンマーケティングジャパン(1人)、タリーズコーヒージャパン(1人)、全日本空輸(1人)、富士通(1人)

理学部
<2021年度>宇部興産コンサルタント(4人)、アドバンテック(3人)、アウトソーシングテクノロジー(3人)、コスモス薬品(2人)、ヤマネ鉄工建設(1人)、AXIA(1人)、SUBARU(1人)、西日本鉄道(1人)、日本電気(1人)、住友化学(1人)
<2020年度>山口県(教員)(3人)、山口県警察(3人)、岡山県(教員)(2人)、広島県(教員)(2人)、国立大学法人山口大学(2人)、NECソリューションイノベータ(1人)、住友大阪セメント(1人)、大日本印刷(1人)、日亜化学工業(1人)、日本コンピューター(1人)

工学部
<2021年度>広島県広島市(教員を除く)(4人)、山口県(教員を除く)(4人)、中電工(3人)、広成建設(3人)、国土交通省九州地方整備局(一般職)(3人)、大阪府大阪市(教員を除く)(3人)、中国電力ネットワーク(3人)、熊谷組(2人)、東海旅客鉄道(2人)、広島ガス(2人)
<2020年度>警察庁九州管区警察局(一般職)(4人)、鴻池組(3人)、広島県広島市(教員を除く)(3人)、山口県(教員を除く)(3人)、鉄建建設(3人)、エルクホームズ(2人)、スズキ(2人)、セントラルソフト(2人)、国土交通省九州地方整備局(一般職)(2人)、国土交通省中国地方整備局(専門職)(2人)

農学部
<2021年度>山口県(教員を除く)(4人)、翔薬(2人)、林兼産業(2人)、ファーム安芸高田(1人)、JA北九州くみあい飼料(1人)、アストラゼネカ(1人)、山口県農業協同組合(1人)、深川養鶏農業協同組合(1人)、南日本酪農協同(1人)、福留ハム(1人)
<2020年度>山口県(教員を除く)(5人)、あじかん(3人)、千鳥饅頭総本舗(2人)、ヒガシマル醤油(1人)、塩野義製薬(1人)、コーセー(1人)、再春館製薬所(1人)、千寿製薬(1人)、全国共済農業協同組合連合会福岡県本部(1人)、日本食研ホールディングス(1人)

内容については、直近の2022年度の実績が出た時点で述べてみたい。

しかし、改めて上のリストを見て痛感するのは、大多数の大学側にはまともに情報を外に開示する気がないということである。
たったこれだけのことがなぜできないのか。
あとの大学は、企業名だけを列記して、あるいは公務員にしても「国家公務員」「地方公務員」とまるめて書いてお茶を濁すところが殆どである。
大多数には目をつぶって、間違って1人でもとにかく聞こえのいい有名企業・政府機関等に採用実績があれば、これ幸いとそれを載せて、読み手をミスリードしようという気分が伝わってくる。
かつては、早慶以外の私立大学がよくやった手であるが、今は地方大学がそれをしようとしている。
逆に言うと、このベネッセの調査に毎年まともに回答している3校が至極まともに見えるから不思議である。

それは、中・四国の国立大学10校のなかで「上位」就職先数をきちんと開示している学校が、旧地方帝大の設置されなかった中・四国において、この地区の偏差値ピラミッドの頂点に君臨するであろう広島大学と、文系で比較的大企業に強い旧制の官立高商系の山口大学(旧制山口高商)、香川大学(旧制高松高商)の3校しかないという事実は象徴的でもある。
ぶっちゃけ、早い話が、同じ地域(とくに隣接県)で他の国立大学と比べてあまりに実績に差が大きいと、外聞が悪く自校の在学生の「士気」にもかかわる。ほぼ同偏差値の大学同士の場合はなおさらである。それを忖度して、「最初から出さない方がいい」という判断をあちこちの大学の事務方が行ったということではないだろうか。

「うちは学部が多くて学生数も多いから」というのは事務方の言い訳にしかならない。大昔のすべて手作業で紙集計していた時代ならばいざ知らず、パソコンに向かった大学事務員がデータベースから4年生のリストをダウンロードし、一人で数日エクセルに打ち込めばできる作業である。いやそもそも、改めて作らなくてもそもそも今は各大学に独立したキャリア支援室があるわけだから、データはすでにそこが持っているはずである。「出せない」ではなく、「出したくない」ということ。そして、そこには本来大学にとって顧客であるはずの受験生の利便性の向上はまったく無視されている。中・四国地方における国公立大学のデータ開示が3校に限られているのはそのせいである。