IPS細胞は病気を治すのに有効か | 酒巻修平のブログ

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父母の二人から生まれた人は二元的で表裏、善悪などが一人の人に併存します。体験および思考を通じて、人の体や精神作用、社会現象を表裏から観察、分析、統合します。

 元々IPS細胞はそれに先立つES細胞からヒントを得て出来上がったものである。ES細胞もIPS細胞も共に人工多機能幹細胞であるのは間違いない。

 

 ただES細胞を作るには胚細胞が必要で、倫理的やその他の見地から制作は止められており、今は製造されていない。

 

 人口多機能幹細胞とは細胞がどんな組織、器官、筋肉にも分化していくもので、例えば角膜を作ることができる極めて将来性の高い人口物である。

 

 これを始めて制作したのは例のノーベル賞受賞者の山中伸弥氏であったが、同時期に同じような考えで同じ幹細胞を作った人は複数人いた。

 

 従って特許も幹細胞関連の総体的な技術に対して発効したものでなく、制作過程の技術それぞれに特許が許可された。

 

 IPS細胞は当初癌に分化する遺伝子も使用していたので、IPS細胞使用には癌の発症リスクがあるとされたが、その後他の4種類から6種類の遺伝子を使って制作されるようになった。

 

 IPS細胞はどんな組織、器官、筋肉にも分化するので病気の夢のような治療が可能だとされたが、実はそれからの作業が大変なのだ。

 

 人を含む生物の体は小さい細胞やその内部などミクロの段階では良く研究され解明されている事も多い。

 

 だがマクロに事が及ぶと途端に解明が極めて困難になる。どのような理由や機序で不整脈が発症するのか、緑内障は何故どのようにして発症するのかなどほとんど分かっていない。

 

 医学は主に症状の軽減、消滅を目的とした科学で、これは人の体の状態を原因ではなく、結果から追求する。従って上流である病気の発現の原因や機序の解明は進まなかった。

 

 それを進めるには細胞やそれを構成する諸物質に関する研究が欠かせないと考えるのは当然である。だから医学は症状という体の末端の状態とその対極にある細胞組織の解明を求めた。

 

 だが細胞組織が集まってどのように体の諸機能が作用するのかいう中間段階の解明が極めて困難なのだ。

 

 これを全て解明することができるのか、あるいはこの100年くらいの間で事が成し遂げられるのか。もし解明したとしてもどうしても治癒できない病気があるのではないか。老化を阻止し、極めて長い寿命を全うさせることができる手法はあるのかなど、解明後にも大きな問題が残る可能性は高い。

 

 そもそも人を含む生物の生存理由は子孫を残すことである。すなわち自分の遺伝子を後世に伝えることが生存している最大唯一の目的である。

 

 生存するためには絶えず新陳代謝が行われなければならない。これも子孫を残すのと同じ自己複製である。方や垂直的で方や水平的な自己複製である。

 

 新陳代謝が間違いなく進むには古い細胞の死が必要である。そうでなければ細胞の不死、すなわち癌が発生して垂直的な死が待っている。

 

 そう考えれば人の死は垂直的な自己複製になくてはならない現象と考えても良いだろう。死があって生が存在するのだ。

 

 IPS細胞はそのような人の生命に関わる問題の解決に寄与しようとしているが、生の発現の中間段階の総体的な体の働きは未解明なものが多く、その実用的な段階に至るまでにIPS細胞の生成より大きな困難が待ち受けている。

 

 人の体を構成する70兆を超える細胞がどのように総体として働くか、局所的には解明されていることが多いが、それを超える総体的な機序についてはこれから解明していかなければIPS細胞の有用な利用は実験だけに終わるだろう。

 

 もう一つ気になることはこれが人工物であるということだ。IPS細胞でできた網膜や角膜は当初機能したとしても10年後も同じ状態であるかどうかは分からない。

 

 生物は自然の中で発生した。それを人工的に一部であっても手を加えることは何か良からぬことが待ち受けていないか。人という永遠に謎を秘めた物体は一体どのように生の作用を営んでいるのか。それは果たして解明されるのか、そういう点でもIPS細胞は興味があり、これからもその利用には最大の関心が集まるだろう。

 

酒巻 修平