中学の職場体験できた子の中にデザイナー志望という子がいた。ざくっと印刷の工程を教えてイラストレータのさわりの部分を教え、翌日は自分の名刺を作るというプログラムだったんだけど、10数年で合計で30人くらい受け入れた内でその子だけ印刷機や製版設備のスケッチをしていた
あらかじめプログラムは中学に伝えていたので名刺を作るということは知っていたのだけど、その子は手書きでラフを描いてきていた。他の子はだいたい雛形に文字を打つだけ。
聞けば美大に進みデザイナーを目指したい と。
それならばと他の子にはしなかった出来上がった名刺の「ダメ出し」をした
ヤな大人の出る杭は初めに打っとけみたいな雰囲気になるかと思ったけど、その子はこちらの言葉をキレイに吸収してブラッシュアップしてゆく。
あと数箇所手を入れたら売り物になるというところで時間切れ
納得いかない悔しそうな顔を覚えている。
その子がすごかったのはダメ出しの意味を理解していたこと。
これは自分がその歳の時には考えられない。自分の枠の中で妥協して人の意を受け入れられなかったはずだ。
「前もっていってくれたら時間と機械あけとくからおいでよ」
と言うと
「明日きます」と
彼女は翌日約束の時間にやってきて名刺を完成させた。断截した名刺を箱に入れて渡した時の表情は今まで出会った中で最も輝いていた一人だ。
しばらくして職場体験の令状が届いた。簡素な文が良かった。だいたいみんな冗長な定型文なんだよね
またしばらくして今度はその子の担任の先生が訪れ、休みがちだったその子は職場体験以来皆勤だと伝えてくれた。
そして、高校卒業後美大へ進みデザイナーとして働くという目標を達成したと知らせが来た
今は物理的なスペースがなくなってしまい職場体験の受け入れをやめてしまったのだけど、やっていてよかったと思う
https://twitter.com/ma_mol/status/1221434714952568833?s=21
こういうの、いいな。
明日に繋がる手伝いが出来るってな。