高血圧や糖尿病の人など、日ごろから塩分の摂りすぎに注意している人は少なくない。それでも、日本は世界各国に比べて「減塩後進国」なのだ。塩分を摂りすぎると高血圧になりやすくなり、脳血管障害など他の病気も誘発するので厄介だ。

 厚生労働省は5年ぶりに塩分摂取量基準を改訂。ナトリウム(食塩相当量)の摂取を、男性は1日10グラム未満から9グラム未満に、女性は8グラム未満から7.5グラム未満に変更した。

 塩分は主に細胞を取り巻く体液中に存在して、細胞が縮みすぎたり、膨らみすぎて壊れないように調整したり、細胞の内外で情報や栄養素などをやり取りするのに働く、生命の維持には欠かせない成分。しかし、摂りすぎると循環器疾患や脳卒中の危険性も高まる。

■世界は1日「6グラム」をめざしている

 厚生労働省の「2008年 国民健康・栄養調査」によると、日本人(成人)の1日あたりの塩分摂取量は、2001年の12.1グラムから08年には10.9グラムと、年々減少している。男女別では、男性が12.9グラムから11.9グラムに、女性は11.5グラムから10.1グラムまで減った。

 しかし、今回の改訂によって定められた目標値である男性9グラム未満、女性7.5グラム未満を達成するには、もうひと頑張りが必要。従来の目標値さえも超えている人の割合が、男性62%、女性67%と半分以上もいるからだ。

 それでも、日本高血圧学会の荒川規矩男会長は「日本の減塩運動は遅れている」と指摘する。日本高血圧学会のガイドラインでは、2004年から高血圧の予防と治療のために1日「6グラム未満」の目標を掲げていて、これは世界保健機構(WHO)の基準と同じだ。荒川会長は、「15年ほど前に米国が導入した基準で、減塩すれば血圧も正比例して下がることが研究でわかり、いわば世界標準として広がりました」と説明する。

 イギリスでは、2010年をめどに平均9グラムから6グラム以下に目標を定め、04年からは政府が食品業界を巻き込んで減塩運動に取り組んでいる。また、米ニューヨークは10年1月に減塩運動をスタート。今後5年間に、レストランや食品販売店の食品に含まれる塩分を平均25%減らすという。

 フィンランドでは過去30年間にわたり、減塩に取り組んだ結果、1日の食塩摂取量を14グラムから8グラムまで減らし、それによって65歳以下の脳卒中と冠状心疾患の死亡率で75~80%低下させたと、成果を発表している。

■排泄を意識することも塩分抑制法の一つ

 血圧上昇のメカニズムを、日本高血圧学会の荒川会長はこう説明する。

  「余分な塩分は、腎臓から尿となって排泄されます。腎臓の働きが衰えると十分に排泄されなくなって体内に塩分が残るため一定の濃度に保とうと血液の量が増え、高血圧になって血管に圧力がかかるのです。高血圧は脳血管障害を引き起こす誘引となりやすく、したがって寝たきりになる可能性が最も高くなるといった負の連鎖につながるのです」

 つまり、塩分を抑える方法は2通りある。一つは、摂らないこと。もう一つは、排泄だ。それでなくても日本人が日ごろ口にする食材には塩分を多く含むものが少なくない。

 味噌や醤油、梅干に漬け物、明太子、アジの開き干しなども塩分が多い。それに、外食は家庭料理より濃い口になりがち。レストランやファーストフードなどを利用する機会が多い人も塩分も多く摂っている可能性がある。減塩メニューや塩分の排泄(利尿作用)を促す食材を使うことなど、食生活の改善が基本。「塩分を意識して食事することが大事」と、荒川会長は強調する。

 さらに、塩分を体外に出すには、十分な酸素を取り入れながら行うウォーキングやサイクリング、水泳などの運動が有効。これに水中で無理なく筋力アップが図れる「アクアビクス」などの加圧トレーニングを組み合わせると、より効果が上がる。

 運動によって筋肉にできるアデノシンが、腎臓で利尿作用を促す物質であるドパミンをつくり、塩分を抜いてくれるのだ。


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