多くの企業で、「兼業禁止」を就業規則でうたっています。

兼業することで、従業員の生命や健康を損なう可能性があること、会社と競業する兼業のおそれがあり情報漏洩の可能性があること、兼業の内容によっては本業の社会的信用や品位を傷つけるおそれがあること、等の理由があるかと思います。

しかし、昨今、会社の給与だけでは生活が苦しいからアルバイトするといったことだけではなく、ネットショップや携帯アプリの開発といった趣味と実益を兼ねた副業(兼業)することも多くなってきています。

そこで、最近の就業規則では、事前に会社に対し許可・届出をして、その内容が労使間の信義則に反しないものと認められれば兼業も許可するという規定が増えてきています。


ただし、そこで実は意識しなくてはいけない点があります。

”労働時間の通算”がそれです。

労働基準法38条第1項
「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。」

複数の事業所で通算した、その日の労働時間が法定の8時間を超えるのであれば、三六協定を締結しなければならないし、法定時間外として割増賃金を支払わなければならないということなのです。

問題は、”事業場を異にする場合”の解釈です。

あくまで”同一使用者の複数の事業場”に限られるという説(菅野和夫先生の「労働法」)もありますが、行政通達(昭和23年5月基発769号)では、異なる使用者の元で就労する場合も含まれるとされています。

この行政通達に従えば、昼間6時間会社で働いて、夜3時間コンビニで働いた場合、法定時間を超えた1時間について割増賃金を払わなければならなくなります。

そうなると、現実的には、誰(どっち)が割増賃金を払うのかという問題になります。

これについても行政解釈があります。

当該労働者との労働契約を時間的に後で締結した使用者が、1時間分の割増賃金を支払い、三六協定を締結する必要があるのです。

会社で先に就労をしておいて、後からバイトでコンビニで働き出した場合は、コンビニが割増賃金を支払うことになります。

逆に、先に日に3時間のバイトをしていた人が、会社に就職して毎日6時間会社で就労することになった場合は、会社が割増賃金を支払うことになるのです。


とはいえ、現実的ではないですよね。

他の使用者の下でどれだけ就労するのか、確実に把握することは難しいと思うからです。

余所の職場での就労時間なんか管理できますか?

おそらく殆どの社長が、「よその仕事なんかしたこっちゃない。とにかくうちの仕事をきちんとやってくれ」と考えるでしょう。

そりゃそうでしょ。

そうなると、やはり原則は、入社時は少なくとも兼業を禁止しておいて、労働契約の主導権(!)をとる方が現実的です。

入社時に、他では仕事をしていない旨の誓約書を取ることもいいかと思います。

その上で、入社後、本人が兼業を希望してきたら、内容を聞いて許可するという流れが、この行政通達を前提とした場合の運用になるかと思います。


でも、労働基準法が制定されたのが昭和22年なら、この行政通達も、昭和23年という、あまりに昔の話なのデス。

もっと言うなら、戦後GHQの指導の下、財閥解体、農地改革と並んで行われた、労使関係改革という戦略的な一連のものでした。

これで当時の企業が一気に弱くなったことはいうまでもありません。

そんな時代のものなのです。


この38条第1項のように、今の社会に、必ずしも適合していないのではと思われる部分も残っています。

不景気にあえぐ日本。さらに大震災もありました。

定期昇給できない会社なんて今時めずらしくありません。

もちろん健康第一です。

でも、私は、会社に迷惑をかけないのなら、兼業、副業大いにアリだと思うのです。

社会にしたら、それも経済活動デス。

ただ、会社と違う別の仕事の労働時間の関係で、関係ない会社が割増賃金を払うなんてことは、変な話ですよね。


こんな戦後の法律や通達の見直し等、もっともっと、国には動いてほしいことが山ほどあるのですけど。

優先順位の最も高い、震災と福島の原発の処理だけみても、何も決らない政府にはガッカリすることばかりデス。。。



うんにゃ!

今この時も被爆覚悟で必死で頑張ってる、福島の作業員の方もいらっしゃいます。

ため息はひとまずおいといて、一生懸命の人をとにかく応援しますデス!



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