鳥取市は25日、酒に酔ってJR鳥取駅のドアガラスをけ破ったとして、鳥取署に器物損壊容疑で逮捕された下水道経営課の土江慧太主事(25)を、減給10分の1(1か月)の懲戒処分にしたと発表した。

 現場にいた同僚職員2人を、土江主事が犯行後に現場から立ち去るのを止めなかったとして文書訓告、上司の下水道経営課長も指導を怠ったとして厳重注意とした。
(2010年6月26日22時14分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100626-OYT1T00637.htm
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福岡の公務員飲酒運転事故以降、飲酒運転をした社員や職員は原則として即座に懲戒解雇(または懲戒免職)と就業規則で定めているところを見受けられます。
それで、本当に、即、懲戒解雇できるかというと、事件の悪質性や会社への損害等を含め、総合的に判断しなければなりません。一発レッドカードの適用は、実は簡単ではありません。

そういった意味では、懲戒解雇までいかない、懲戒規定を作成し、適用を重ねるのは、最終的に社員の解雇までもっていく為に有効な手法といえます。

どんな懲戒規定があるかというと、
・譴責(けんせき)・・始末書を取り将来を戒める
・減給・・始末書を取った上で、一時的に給与を減額する(1回の額や賃金支払期の総額に限度アリ)
・出勤停止・・始末書を取った上で出勤を停止を命じる(その間の給与は支払わないと決めておく)
・降格・・始末書を取った上で役職(職給)を降格し、賃金を減額する
・論旨退職・・退職届を提出するように勧告。一定期間のうちに提出無ければ懲戒解雇とする
・懲戒解雇・・即時解雇。退職金の全額もしくは一部を支払わないことを規定に明記。

一般的には、譴責から初めて、改善されない場合は、懲戒の段階をあげていくことになります。
本人はもちろん、会社も本人の素行の改善に努力をしないといけません。
改善の努力を払ったにもかかわらず、改善されなかったという場合に初めて、解雇の合理性があると判断されるのです。

この事件の場合は、その場に居合わせた同僚や、職場での上司の管理者責任まで言及しています。

このような感じで、こまめに譴責処分にするのは、”何か”あった場合に、こんなに会社は注意・指導をしていたという証拠になりますし、また社員全体の緊張感とモラルへの意識を高めるため、有効と思われます。


日本の労働法は、基本的に労働者擁護という性格を持ちます。
労働基準法は、戦後まもない時に、財閥解体という使命を持ったGHQの指導の下、施行された法律という歴史背景がありますので、その性格は致し方ありません。
なので、一般的な感覚では社員に問題があるだろうというケースでも、結局使用者側の解雇権濫用と判断され、労働者が勝った判例は多いのです。

そこで、私が就業規則を提案する際は、いったん社員にしたら事業主から解雇を持ち出すのは非常に難しいので、採用した後の試用期間を6ケ月くらいの長めに設定したり、さらに試用期間の本人の勤務内容次第では、試用期間を延長したり、正社員登用を見送ったりできるよう、試用期間から正社員登用が形だけのものにしないような提案をしています。

ただ、解雇の即時適用は難しいとしても、就業規則の解雇の具体的な理由を明示することは、最終的に合理的な解雇ができるためには大事ですから、てんこ盛りにしましょう。