『礼なくして権威はない』
今の臨時国会の会期もあとわずかだが、与野党の対決の「質」が落ちている気がしてならない。
~中略~
日本の国会でも、強引な採決や徹夜の審議など、対決が過熱した歴史がある。
ただ、議論は堂々としていた。
~中略~
ヤジも、相手の発言を邪魔するような品性の低いものではなかったと記憶している。
今は議論の内容もヤジの品性もどうにかならないかと思わせる。
国会が国民に信頼される基本である「権威」を欠くからだ。
権威は、法や制度で創られ維持されるものではない。
議員一人一人が創り、守ってきたものだ。
一例をあげると、いつの頃からか、議長が本会議場に入る時は議員が起立して迎えることが慣例になった。
国会の権威は本会議の権威が守られなければ誰も認めない。
だからこそ、自発的に定着した「儀礼」だと言えよう。
ところが最近は、議長が本会議場に入ってきても野党議員は座ったまま。与党の議員の中にさえ、議席を離れて談笑している姿が見られる。
国権の最高機関で本会議が開かれ、重要な諸問題に決着をつけるための議論が行われるという場が、こんな心構えで始まっていくのかと、心配になる。
~中略~
先に来日されたブータンのワンチュク国王夫妻の他者を尊重する思いやりの行動に感動した我々は、サッカーの国際試合で相手国の国歌をブーイングでかき消すような態度は世界で通じないと知っている。
礼なくして権威も信頼もない。
国会も同じで、国民が期待するのは、相手を尊重し、礼を重んじる姿のはずだ。
平成23年12月8日付 読売新聞朝刊 『論点』より
前衆議院議長 河野洋平氏 談