先日、メディアで「正しいスクワットのやり方」を男性トレーナーがフォーム指導していた。お尻を深く落とし、ほぼヒンズーであった。もちろん間違いではない。膝を大きく出すシシーだってある。

確かに深くしゃがめばそれだけ筋肉への自重負荷は増大する、効果的だと言える。
がしかし、問題は、平日朝の情報番組でそれを発信していたことだ。主な視聴者はミセスや高齢者層であろう。スポーツ選手や、トレーニング経験者ではない。一般人相手にいきなり上級者向けスクワット方法を教えること自体に無理がある。わざわざなぜこのやり方を選択したのか、違和感や疑問は尽きない。

今回のサンケイリビングへのご意見にも共通する違和感を感じた。

仮にしゃがんだ際に、「膝をつま先から出しても大丈夫」と発信したならば間違いなく、後半の補足説明は飛ばされ、一般の方には「膝をつま先から出すことが正しい」とインプットされ、それがアウトプットされていく。
膝蓋骨、膝関節の厳密な位置や違いは一般人には通じない。
膝の一文字でくくられる場合、「つま先から出さない」と言う表現が適切であると判断した。

例えば、すでに膝が痛く、筋肉をつけるためにスクワットを始めようとしている人だっている。大腿骨頸部骨折後のリハビリとしてつかまりながらスクワットを実施しようとする人もいる。そんな方々に対し膝を出しても大丈夫と安易な事は言えない。スクワットは体幹から下肢にかけて一気に鍛えられる効率的な筋力運動であり、関節には大きな負荷がかかる。特に女性は閉経後に骨量は劇的に減少する上、この先何十年も持たせなければならない。

また、現在は使われていないだとか、常識に古い、新しいがあるとすれば、新しければ正しいのかと言うこともおかしい。それならば、この時代にしゃがみ立ちを繰り返す素朴なスクワットがブームになること自体おかしい。
そしてスクワットの力のかかり方はてこの原理で示される、時代が変わろうがその原則は変わらない。

大学院では、スクワットフォームに関して研究を行ったが、ゼミでは一体何を以って「正しい」と言えるのかを徹底的に指導された。同時に、常に現在の常識に疑問を持てとも学んできた。正しいと言うからには、それを明らかにするための仮説を立て、先行論文を徹底的に調べ、積み上げ、仮説を検証し、科学的に証明しなければならなかった。
自分が推奨している理論だから、全米を始め広まっているからといった主観的で漠然とした理由では通らないのだ。


つまり、今回の場合、対象者に合った安全で確実なやり方で取り組める方法をわかりやすく示すことが最善ではなかろうか。

独立した頃、老人ホームで十年間、体操指導を経験した。麻痺の方、車いすの方、目の悪い方、痴呆の方、様々な方がおりそこから多くを学んだ。
専門知識も大事だが、まずは大きな声で、ゆっくり、滑舌よく話すことだった。

そんなことも思い出した。自分の意見を主張して発信する人もいれば、受け手に伝わるように発信する人もいる。私は絶対的に後者だ、長い現場経験で培ってきた。これは今後も変わらない。
そう、伝わらなければ意味がないのだ。