わたしハムスターのスター公星は、独裁者となるべく『資質』を考えていました。地位に相応しい実力。

 武術は人並み、つまり平均的体力その他身体機能が保たれていれば初段にはなれます。そして初段なら、格闘技を知らない素人なんてザコです。ひたむきに努力すれば二段も夢ではない。しかし三段ともなると、どれだけ頑張っても取れない人が過半となります。ですが、ほんとうの格闘家にとっては三段なんて序の口です。私は、『公拳』ハムスターナックル三段です。

 技術・学科資格の三級は、障害が無い限り誰でも基本的な勉強を重ねれば取れます。履歴書に書けるレベルはこの三級からですね。二級も一筋に努力すれば、いずれ取れるレベルです。これは履歴にあると感心される資格ですね。しかし一級は……どれだけ勉強しても取れない人が過半となります。なのに等級は特級、さらにその上すらあるのが現実で、これらは履歴書に書かれるとビビられます。管理職クラスですらまず有さない難関ですからね。私は電子コピーさえすれば、例えば外国語とかの知識は一級並みに身に付きます。

 なに? 私のギャグが板に付いていると、失礼な。さて、私ごときが単身でこの世界を乗っ取れるかと、貴方は疑問の様子ですね。単にフルアーマー化した力技ではありませんよ。うふふふふ。くすくす。

 日本は地震大国で、地下に電線を配線しようとしたら、いざ震災があったときに即応できない理由があったのが盲点です。戦争となると。ちっぽけな爆弾ないし砲弾を地上に散発的にばらまかれるだけで、容易くライフライン、燃料供給に情報の伝達網が遮断されかねない。日本の平和信仰なんて、軽くひっくり返る算段です。日本はどう転んでも内憂外患、死に体なのかも知れないですね。

 しかし国土が島国で、陸続きの異国が無い点は有利です。陸からは当然として、海上からも侵入は困難ですから。空からならあっという間に到達されてしまうでしょうが、国土の狭さが防空に生きる。迎撃戦闘機を集中できるから。戦争は情報力が鍵を握る。先に敵の目標地点を知り、防ぐ。軍事衛星のデータを丸飲みするのです。戦力が劣っても闘い抜けます。

 ゼロ戦はそりゃ強え、シミュレーターでやっても欧米の終戦間際の新鋭機を軒並み駆逐する。ゲームならではですが。格闘戦だけに絞って、逃亡を禁止するルールなら絶対的な軽快さの機動性がものを言う。例え譲歩して一撃離脱戦を許しても、回天の秘儀急速上昇左捻り込みや木の葉落としがある。敵機に勝機があるとしたら、正面からの合い討ち覚悟の銃撃しかない。

 ジェット戦闘機で二十世紀後半なら一番強いのは、F16ファイティングファルコンでしょう。コスト的に廉価な上、機動性抜群。耐久性と安定性は劣りますが、なにより軽量ゆえの推力が爆発的。つまりゼロ戦に似た性能です。もちろん、もっと強い戦闘機もあるにはあるのですが、コスト的に兼ね合いません。さらにコスト面で優れるのはF5タイガーですが、これは電子機器などを万全にするとF16と大差なくなってしまうので、やはり分が悪いです。

 21世紀現代戦闘機なら万全に運用するなら余裕でファルコンを狩れますが、全面戦争ではやはりコスト的に割に合わないでしょうし、もしドッグファイトに持ち込まれたら、最新鋭機と言えど圧倒されます。

 私はこのファルコンをコメ基地のはずの某帝国基地から強奪します! 超楽勝、負ける気がしません。

 さて、基地に潜入です。警報が響き渡りました。制止の命令が繰り返されます。無視して歩むと威嚇射撃が。これも無視して進みます。銃弾が雨のように私の身体を打ちますが、フルアーマーの前には無効です。

 超絶容易に、単座のファルコンに乗り込みました。事前にハッキングで補給整備完備確認し、発進スタンバイしていた機体です。たちまち滑走路を驀進し、空を舞い上がりました。対空機銃なんて当たりっこない。レーダー管制や偏差射撃どころか、VT信管さえないのですからね。

 ん? なにか違和感が……これは! 黒猫が操縦席にいる! しかしただの猫なんて私には……なんだ、私にプレッシャーを掛ける猫とは何者だ、この妖気は……幽鬼、優輝?

 黒猫が無言の翠目でささやきます。「……オオキイショクザイ、オイシソウ……BBQタノシミ……」

 どっと血の気が引きます。私は意識が薄らいで行くのを止められませんでした。ここまでですか……この私が……お前さえいなければ、世界は……世界は! 

……もう思い出せない……

 

(続く)

 

後書き 虎が何故強いか? それは生まれつき強いからです。故にハムは生まれながらにしてハムなんです。嗚呼無情……しかしこれが世の常。公星よ安らかに眠れ……初孤羅さま、秋月伶さま、SPA-kさま、亜崎愁さま、akiruさま、BBQパーティーしましょう。すまいるまいるさん、食材提供ありがとうございます。