幕末高校生/こんな脚本と演出でいいの? | 調布シネマガジン

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幕末高校生

玉木宏と石原さとみが主演で描かれるSF時代劇。新政府軍が江戸を攻撃する数日前にタイムスリップしてしまった高校教師と生徒が勝海舟と出会い、自らを成長させるという平凡なお話。女教師・未香子(石原さとみ)は事なかれ主義というか、一生懸命生徒に向き合うフリしてその実全く生徒のために動かない教師。一方、勝海舟は江戸攻撃を回避するために西郷隆盛に書状を送ってその返事をひたすら待つだけで何も動かない。で、その“何にもしようとしない”という部分を重ねあわせながら物語は進んでいく。

でもさ、こういっちゃなんだがそもそも平凡な女教師と、仮にも歴史に名を残す勝海舟を重ねあわせるところに無理がありすぎだろと思うんだ。勝海舟の姿を間近でみて自分がいかにダメだったか気づく、過去の偉人の姿から学ぶって別にわざわざタイムスリップ物語にするようなことだろうか。一緒にタイムスリップするのは森野恵理(川口春奈)、高瀬雅也(柄本時生)、沼田慎太郎(千葉雄大)3人の生徒。一応それぞれに役割は与えられているんだけど、物語の本質とは殆ど関係ない上に取って付けたようなものなのが残念だ。

一緒にタイムスリップと書いたけれど、それぞれが江戸時代に到着した時間にはズレが有る。未華子は昨日、高瀬は3日前、沼田に至っては1年前ということになっていた。何でズレたのかはさておき、そもそもこの設定は全く生かされていない。更に言うと、せっかく自動車だとか、スマホだとかもタイムスリップしてるのだから物語の中でもっとうまく利用すればいいのに、一番利用されてたのがキーホルダーのルービックキューブだけってのが泣けてくる。そして最も残念だったのがクライマックスの部分だから悲しくなるってものだ。

未華子たちが来たせいか史実とズレが生じてしまい、このままでは彼女たちの未来が亡くなってしまうかもしれない…勝海舟と西郷隆盛が無事会談すればそれは防げる。でもそんな状況にも関わらず、未華子と生徒3人はとっとと帰りのタイムスリップにはいってしまう。もちろん勝と西郷の会談は成立するんだけど、物語の盛り上がりとしてはそこのタイミングは合わせなきゃダメだろうに。つまんない物語のなかの唯一の見せ場にドキドキ感がないから、結局全部が平坦でつまらない話になってしまった。何でこんな脚本で通ったんだ?

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ストーリー:1868年、幕末期の江戸。迫り来る新政府軍と幕府軍の戦闘を避けたいとする勝海舟(玉木宏)は、新政府軍参謀・西郷隆盛(佐藤浩市)に和平交渉の使者を送る。その返事が来ないことに気をもむ中、彼は幕府が捕らえた未来からやって来たと言い張る女教師・未香子(石原さとみ)と教え子・雅也の面倒を見ることに。一方の未香子は自分たちと一緒に江戸時代へとタイムスリップしたほかの教え子を捜して未来に帰ろうとするが、目の当たりにしている出来事が史実と違うことに大きな不安を抱く。(シネマトゥデイ)