対ガーナに0-2
西野監督にとっては厳しい船出となった。
スタメン発表時、3-4-3のフォーメーションを見た時、私はすでに不安を感じた。
前回のブログでも述べたが、人やシステムを大きく変えるにはあまりも時間がなさすぎる。
だから、ハリルホジッチ監督が「失敗」だったとはいえ、彼の作り上げたシステムと、彼が選出した選手をベースに若干の“マイナーチェンジ”程度で収めるべきだと感じていたのに、このタイミングで全く新しいシステムで挑んできたからだ。
選手選考についてはまさに“マイナーチェンジ”で、サプライズと言えば青山の選出くらいであろう。
それ以外は、例え最近呼ばれていないとはいえ、岡崎などは「計算のできる」選手であり、コンビネーションに不安もなく、選手選考はまず順当であるというイメージだ。(前回触れた中島翔哉の選考漏れだけが残念であるが)
それに比べ、西野監督がチョイスした新しいフォーメーションに対しては、チャレンジングではあるが少しリスキーだと感じた。
結果はご存知のとおり。
いろいろと批評がなされているが、私の感想としては以下の通り。
①新しいシステムで、選手間のコンビネーションができあがっていない。
②3バック自体はそんなに悪くないが、熟成するには時間が足りない。
③DFに長谷部が入ったことで、ただでさえ不安なボランチの守備がさらに不安定になったと感じた。
④西野監督の意図、メッセージは感じた。
①に関しては、当然そのようになると想像できたはずだが、それでも試してきたことに疑問を感じる。
1か月でこれを仕上げようと考えたなら、少しリスクが高すぎる。守備面のコンビネーション、マークの受け渡しで失点を招いたが、それ以外でも山口、井手口があり得ないパスミスで決定機を招いたが、それも「フォーメーション変更による選手同士の距離感の違い」から招いたということも考えられなくもない。
分かりやすく言えば「いるはずの場所に味方がいなかった」ということだ。
ただあのようなミスは失点に直結するもので、そんな理由で片付けられることではないが…。
守備面だけでなく、攻撃面でもコンビネーションがうまくいかずにラストパスが繋がらない場面も度々あった。
それは岡崎を投入し「4-4-2」システムに変わった時もそうだ。
長らく1トップでやってきた日本代表の選手にとって、それが2トップに変わっただけで選手の動き出し、距離感が変わり意外とうまくいかないものなのだ。
だから岡崎が生きなかったのは残念だが、岡崎個人の質の問題だけではない。彼の裏への抜け出しはシステムがハマった時に生きるので、彼は外さないで欲しいと思う。
②そんな中で3バックの3人は声を出し合い、うまく統制を図っているようには見えた。特に長谷部は危ないシーンを作らず、さすがのスキルの高さを見せた。
一方で吉田は3バックのサイドで少しだけ動きに迷いが出ているようにみえた。やはり彼は日本代表では真ん中のポジションで砦となる選手だと思う。残念ながらセンターバックタイプの日本人ではMF登録の長谷部を除いては吉田以外に世界で戦えるレベルの選手はいない。
だからこそラインコントロールやプレスコントロールで人数をかけ組織で守る、4バック+ダブルボランチが今の日本にはいいと思うが…。
それでも今回の急造3バックは想像以上に質の高さを見せた。ただカウンター攻撃に明らかにもろさを見せたように、ワールドクラスのセンターバックが3人揃っている国ならいいが、今の日本代表には適合しないかなというのが私の考えだ。
③ボランチというのは守備でも攻撃でも起点となるポジションで、攻撃の起点になった時に一気にビッグチャンスを演出することもできる代わりに、守備時のミスで相手に決定的なチャンスを与えてしまうこともある大事なポジションだ。
最近の日本代表では、不用意に飛び出して交わされて相手に大きなスペースを与えてしまったり、簡単なパスミスから大きなピンチを招いたりして安定せず、代表のウィークポイントになってしまっていると感じる。
以前の長谷部&山口は守備に関しては安定感を見せていたが、最近は正直両者とも簡単なミスが目立ち、衰えなのかと感じてしまうこともある。それでも長谷部がDFに下がってしまうとボランチがさらに手薄になりさらに不安定になることが分かったので、やはり長谷部+もう一人というチョイスになるのではないかと思う。
攻撃面でセンスが光り、テンポを変えてくれる青山は西野監督にとって切り札だったのかもしれないが、怪我もあり選出は微妙なところだ。
大島は確かにいいが、代表ではプレーがどうも無難すぎる印象しかない。サイズの小ささも、押し込まれて空中戦になった時に不安だ。
それは井手口も同じ。
西野監督はこのポジションの人選は最後まで悩むところであろう。
④に関して、3バックはDFの人数が1枚減り、一見攻撃的な布陣に見えるが、西野監督が0-2の途中から得点を奪うために4バックに変更したのを見ても、基本的には守備的な考え方のフォーメンションなのだろう。
というのも、3バックとなっているが、守備時にはサイドの2枚が下がり5バック態勢になり、逆に攻撃時には両サイドが攻撃参加する。両サイドのチョイスがスピードとスタミナを備える長友+原口ということからもそれが窺える。ただこれは、「守備的」とは言ったものの、カウンター攻撃に弱く、まさに『諸刃の剣』だ。
攻撃時には厚みが生まれ、長友も香川とのコンビネーションで度々チャンスを演出したが、守備時の安定を生むには時間が無さすぎる。
やはり今までも4バックスタイルでラインを統率する方が安定感はあると思う。
今気付いたが、そういえばこの試合はあまりオフサイドを取れていないと思う。やはり3バックではラインを押し上げてオフサイドを奪うという「攻撃的な守備」を仕掛けるには怖さがあるのだろうか。
ただ、4バックにもいろいろあって、西野監督が後半仕掛けた4バックは「攻撃的な4バック」であったのだと思う。
それができていたかどうかは別として、主にセンターの二人で守り、両サイドの2人はどんどん攻撃に絡めというメッセージではなかったのだろうか。
以上の考察から、西野監督のいろんな思惑、メッセージが見えてくる。
まずは守備からという考えがありながら(守備時には5人+ボランチ2枚で人数をかけて守りたいという部分)、基本的には攻撃的である3バックをチョイスしたところ。
また2点を追う局面で攻撃的4バック+2トップにシステム変更したところ。
西野監督の特徴である「攻撃的」「柔軟さ」が垣間見れる面白い采配であった。
ただ私個人が考えるに、選手同士が味方を知り尽くしている時に試合の中での「柔軟さ」は生まれてくるであろうからクラブチームでは大事な要素だが、練習期間の少ない代表チームに求めるのは難しさがある。それでも個々のスキルが高い世界のトップチームはそれをやってのけるが、この緊急事態の日本代表にそこまでを追い求めていいのかとも感じる。
実際ハリル時代にも試合の中でのシステム変更が時々あったが、うまくいった記憶はほぼ皆無だ。彼は選手交代もうまくいかなかったが…。
まあこれまで西野監督に対して批判的なコメントも並べたが、基本的には西野監督のことは信じているし、期待している。
なによりも彼は「謙虚さと柔軟さ」を持ち合わせていると信じているからだ。
「高圧的で頑固」なハリルホジッチとはそこが決定的に違う。
謙虚さと柔軟さを持ち合わせていれば、失敗を認め失敗から学び、修正して変更ができる。
西野監督には「今までの日本代表をベースに」という部分に立ち還って、あまり自分の色を出しすぎないようにと言いたいところだが、正直なところ、今回負けはしたが、特に前半はボール保持率があがり沢山のチャンスを演出して久し振りにワクワクするサッカーが見れた。これはザックジャパンの時以来だろうか。
だから3バック自体には可能性を感じるしそれをゴリ押しすることも全否定ではない。ただ問題は「間に合うか」、それだけだ。大きなギャンブルとなるだろう。
安全にいくなら、ハリルジャパンにマイナーチェンジを加えた「今までの4バック+ポゼッションの向上+ショートカウンター」だろうが、果たして西野監督は本大会までギャンブル続けるだろうか。
どちらにしても西野監督のチャレンジを応援したいと思う。
頑張れ、西野監督!
頑張れ、日本代表!