相談支援の現場において、聞き流すテクニックを用いるべきではない支援員が用いてしまっている事例をご紹介します。僕が唖然とした実体験です。
相談者の語る批判や感情に、支援員が気持ちを流されてしまったり、ショックを受けたり、あるいは相談者が抱える悩みをあたかも自分の悩みかのように抱え込んでしまったり。こうしたケースは、相談支援員をされている方々にとってポピュラーな悩みだそうですね。
こうしたケースが発生しないように支援員自身が気をつけていることだったり、相談支援を行う前の心構えだったり、僕は個人的に直接話を伺う機会がありました。
とある障害者福祉施設で相談支援に携わっている方から次のようなお話を伺ったんですが...、唖然としてしまいました。
『テキトーに頷き相槌打って、相談者の話なんか右耳から左耳へ聞き流しちゃうのが一番ですよね♪あたかも聴いてる風を装って相手にバレないようにするんだけれど、実は相談者の話なんて聴いてません。今夜の夕食何にしようかな?とか考えたりですよね。』
僕は、唖然としまして。その直後、いやいやいや...えええ〜っ!?と思いました。
この方が自信満々におっしゃっていたのは「聞き流し」です。このテクニックは存在するにはするのです。しかしながら、あくまでも、人からの悪口や暴言を自分の心に刻み込んで落ち込み続けてしまうケースを回避するために用いるテクニックの一つなのです。
この「聞き流し」テクニックは、相談支援において支援員が用いるべきものではない、と僕は思います。人の話を聴く場面で使えるテクニックは多種多彩ありますが、用途用法を誤ってしまうとヤバいよなと日々思いながら勉強しています。
僕はそのお話を伺った時はまだコミュニケーション理論〈対話法〉と出逢っていませんでした。もし既に〈対話法〉を勉強していれば、テクニックの誤用と本来用いるべき傾聴技法についてお伝えできたかもしれないな...と少し悔やみます。
これは支援員を目指して勉強している人にとっても、既に現場で頑張っている人にとってもわ意外と大切な課題です。
相手の話の内容を、よく聞かずに、適当に頷き、相槌を打って対応するというのは、相手に失礼であることはもちろんのこと、後々、問題になる可能性さえあります。
もし、相手の話を聞けない事情があるなら、その旨を相手に伝えることの方が、「適当に聞き流す」より、よほど誠実な対応だと思います。
反面教師といいましょうか、「僕はしっかりと相談者に心から向き合うことのできる支援員を目指したい!」と、その時に思いました。
以上
自殺予防団体-SPbyMD-
代表理事 内田貴之