どっちが「子供」~っ?。 | chega-de-saudade!

どっちが「子供」~っ?。

過日、うちの長男の「レツ」(仮称)と公園で「サッカー遊び」をしていた時の話です。


お互いにサッカーボールを蹴ってパスして遊んでいたところ、レツのキックが勢いよく決まったがコントロールミスでボールはあらぬ方向へ。


………!


飛んでいったボールは、子供の蹴ったボールだけあって、たいしたスピードが出ておらず、これなら「不惑」の年齢の私でも簡単に追い付く事が出来る!と思い、子供の前でカッコイイところを見せようとした私。

何を思ったか(笑)、サッカー漫画を彷彿させる


「てやぁぁ~っ!」


の掛け声(!)とともに、ボールの飛んでいった方向にダッシュ!!。


全力疾走には至らない6割程度のダッシュでボールを追いかけながら、夏の蒸し暑い風を身体全体に受けて走る私。


………3メートル


……2メートル


…1メートル


徐々にボールに近付いていく私の眼(まなこ)に映る風景はスローペースで流れているものの、実際には私の視線は転がっていくサッカーボールのみを捉えており、まさに「周りの風景は全く目に入っていない」と言う状態!。



…50センチ


ボールを捉えるまであと僅か~っ!


そして次のステップで追い付き、ボールを止めようとして私が右脚を伸ばした瞬間。


………!!


なんと、私の身体は自分の意識とは別に、勝手にスライディングを始めてしまったのだ!。


そして「バナナの皮で滑って転倒するコント」(←例えが古い…笑)よろしく、スライディングの姿勢から仰向けで空を仰ぎつつ、尻餅をついてすっ転んだ私!!。


…◎§☆▼□℃¥×#※


一瞬、何がおこったのか解らず呆然とするが、次の瞬間、履いていたホワイトジーンズと白色のTシャツが濡れていく感覚……。


…………!?

そして私が現状を把握するまで、長い時間は必要としなかった。


…そう。


前日に降った雨の影響で、湿地になっている部分があり、そこで私は脚を滑らせてスライディングしたのであった。


…そして着ていた上下の服が濡れていく感覚は、その湿地帯で私が転倒した事を如実に物語っており、その現実を知ってしまった私に対し波状攻撃の如く「失望感」が襲ってくる…。


…思いっきり嫌~な予感がする…。


そこで恐る恐る立ち上がってみると、嫌~な予感は見事に的中。


ホワイトジーンズの背面部分が一面泥だらけの茶色となっていたのだ!。

この状態では濡れた感覚のTシャツの背中部分もジーンズと同じ状態である事は、火を見るより明らかだ!。


…体の正面が白色で、背面が泥の茶色となってしまった私。


オイオイ、体の半分で色が違うって、オレは「超人機メタルダー」かよ?。
(↑例えがマニアックすぎ…。しかも色の異なるパターンが違うし…。)


…などと自分自身に対して、心の中でくだらないツッコミを入れて失笑していたところ、



「お父さ~ん、大丈夫~?。」


と安否を気遣うレツの声。



「オゥ~!、大丈夫だよ~!!。」


テレ隠しから、必要以上に無駄に元気な返事で答える私。(笑)



レツのいる場所にボールを蹴りながら戻った私であったが、私が戻るやいなや彼は興奮しながらこう言った。


「お父さん、凄いスピードで転んだね~!!。」


……………。


こういう時の子供の発言は、悪意がない分だけ結構残酷だ。(苦笑)


しかも私の背部を見て、目を輝かせながら(?)


「うわ~っ、お父さん泥だらけ~っ!。」


なんてウケてやがるし。(怒)



…そんな物凄い容姿のままサッカーをする訳にもいかないので、私達は帰宅する事に。


公園から自宅まで約400メートルの距離であるが、交通量の多い道路を通らなければ家に帰れない…。


こういう状況下での帰路は、たとえ短かな距離でも必要以上に長いく感じるものだ。


しかも私を追い越していく車の助手席の人は、ご丁寧に追い越しざまに身を乗り出して私の顔を見ていく有様。(!)


そんな通行車両や通行人の


「見世物小屋を見るような視線」


を背中に受けながらも無事(?)に帰宅成功!。



「ただいま~!。」



とレツが元気な声で帰宅すると、



「おかえりなさ~い!。
あれ~っ、早いお帰りだったのねぇ~!。」



と答える妻の声。


そして、その声は徐々に近付いて来ており、それは妻が家の奥から私達の出迎えに来た事を意味していた。



…………!?



…私としては穏便に事を済ませたく(?)、内心「出迎えに来なくていいのに~。」と思っていたのだか、無理に追い払うと更なる疑惑を産むので余計な事は言わないように我慢する。


そして私は、泥だらけの姿を妻に見せないよう、さっさと洗濯機の置かれた洗面所に入る。


…そして未だ私の姿を見ていない妻は玄関にたどり着いた様子で、玄関でゆっくり靴を脱いでいるレツに対し


「帰りが早かったのねぇ~。あれっ、お父さんは?。」


と話しかけている。


…そして私の恐れていた事が現実のものとなるレツの「容赦ない一言」が強襲する。


「お父さん、転んで泥だらけだから帰って来たの~!。」



(ガーン)


漫画のショクな場面に必ず出てくる「あの擬音」が、確かに私の頭上に見えた気がした…。


ガラガラ~ッ


間髪置かずに洗面所の引き戸を開ける音。



…続けざまに


「あなた~っ?。」


と、ちょっと厳しい声がすると同時に、声の主はジロリと私を一瞥!。


…………………


一瞬の沈黙であるが、私にとっては必要以上に長く感じる時間であった。


そして妻は次の瞬間、



「ギャハハハ~ッ!
アナタ何やってんのよ~!!。」


と大爆笑!。



…まさに「破顔一笑」とは、この状態を言うのだろう。



妻の大爆笑につられて、私までもが笑ってしまい、その笑い声を聞き付けてやってきたレツと長女のキッカまでもが大爆笑!!。


そして少しの間、笑い声が続き「笑いの絶えない賑やかな家庭」(?)状態。


…私はこの笑い声の中、内心

「これなら妻に怒られずに済むかも~?。」


などと考えたが、それは甘かった…。


馬鹿笑いから突然我に帰った妻がグサリと一言!。


「全くアナタ、何やってんのよ~!。親がこんな泥だらけになって、これじゃあ、どっちが子供か判らないじゃないの~!!。」


ヒェェ~ッ!、おっしゃるとおりでございます。


この状態では、どう考えてもレツより私の方が子供ですわ~!。
(レツの服は全く汚れていませんから…。)



注:「不惑」


年齢が40歳の別称。

因みに「不惑」の言葉が一番世に広まったのは、昭和63年にプロ野球の南海ホークス(現在のソフトバンクホークスの前身に当たる球団)の「門田博光」選手が、「40歳」という、プロ野球界では高齢に当たる年齢ながら、その年のパ・リーグの「ホームラン王(44本塁打)」と「打点王(125打点)」の二冠を記録し、更には「MVP」選出を果たした時である。

この年は、各マスコミが氏の偉業を伝えるべく、こぞって「不惑」の言葉を用いて報道した事から、一気に「不惑」の言葉は市民権を得た。
(因みに私もこの時に「不惑」の言葉を知り、今に至る。)