私が担当している「面会交流審判」において,とても興味深い判断が出されましたので,依頼者の方の承諾を得て,ご紹介いたします。

 

 

 

 

 

 

事案は,抽象的に申すと,次のようなものです。同居親親権者母(以下「母」)が子を監護し,別居親親権者父(以下「父」)が子との面会交流を求めて裁判所に調停・審判を申し立てました。

 

 

 

 

 

 

その一方で,父は,子が通園する保育園を相手方にして,保育園面会や行事参加を求める調停を申し立てました。

 

 

 

 

 

 

母との面会審判において,母側は,保育園で父が面会をしたり行事参加をするためには,子の同居親である母の同意が必要であると主張し,それも含めて,父と子との直接の面会交流は認められないと主張しました。

 

 

 

 

 

 

ところが,担当裁判官は,母側の主張を排斥して,父と子との直接の面会交流を認めたのです。

 

 

 

 

 

 

私は,この審判には2つの意味があると思っています。1つは,「保育園で父が子と面会したり,行事参加するためには同居親である母の同意が必要である」という母側の主張が排斥されたことです。それは,「保育園で父が子と面会したり,行事参加するためには,同居親の同意は不要である」ことを意味しています。

 

 

 

 

 

 

もう1つの意味は,これまでの調停や審判ですと,同居親と別居親との意見が乖離している場合,大きく違っている場合には,「高葛藤だ」との評価がされて,まるで別居親に制裁を与えるように,直接面会を認めない,という判断がされることが多かったのです。でも今回の審判では,母と父の意見が大きく違っている中でも,父と子との直接の面会交流を認めたのです。

 

 

 

 

 

 

 

この審判において,私(父側弁護士)は,大阪高裁判決や東京高裁判決で「親による子の養育は,親にとっても,子にとっても,憲法13条で保障されている基本的人権である」との判例法としての裁判例を引用した主張を行いました。

 

 

 

 

 

 

また私(父側弁護士)は,令和6年5月17日に成立した改正民法では,「同居親が義務として行う面会交流」の他に,824条の2の2項で「 父母は,その双方が親権者であるときであっても,前項本文の規定にかかわらず,監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。」と規定して,「親権者であれば,他方親権者の同意なく,子の日常生活や学校生活に関わる」ことを認めていること,それは,「同居親が義務として行う面会交流」と「学校行事参加」は異なる制度であることを意味していること,を主張しました。

 

 

 

 

 

 

上でご紹介した大阪高裁判決や東京高裁判決の判例法の登場や,改正民法の成立などが影響して,裁判所における面会交流の実務にも変化が生まれていると思います。それを感じた審判でした。

 

 

 

 

 

この審判そのものは小さな1つの事件ですが,その意味において,後で振り返ると大きな意味を持つ審判としての評価をいただく可能性があるのではないか,とも思っています。