8月24日に放送予定の「報道特集」では,「子供の連れ去り」が特集されるとネット上の配信で告知がありました。
報道特集では,大きな社会問題となり,諸外国からも非難が続いている日本の「子供の連れ去り」問題について,令和6年5月17日に国会で成立した民法改正後の新しい視点から,問題の解決策を提示してくださると,私は期待しています。
私の個人的な考えを申しますと,その令和6年5月17日に国会で成立した民法改正において,子の利益を図らない緊急の必要性のない子の連れ去りは,他方親権者親の親権を侵害する違法行為となることが明確になったと考えています。
以下で引用する改正民法第824条の2の1項の3号が,その民法の趣旨を明確化したと考えています。さらに言えば,同条項の2項により,仮に連れ去りが行われた後でも,他方親は子の監護及び教育に関する日常の行為にかかる親権の行使を単独でできるのですから,連れ去った親による面会拒否も,やはり他方親権者親の親権侵害になると考えます。
[第824条の2]
「 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。
一 その一方のみが親権者であるとき。
二 他の一方が親権を行うことができないとき。
三 子の利益のため急迫の事情があるとき。
2 父母は,その双方が親権者であるときであっても,前項本文の規定にかかわらず,監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。」
この改正民法の規定は,現在施行されている民法の親権規定が不明確であった点を明確にした上で,それを離婚後共同親権について拡張した内容なのですから,上で指摘した①連れ去りが他方親の親権侵害となる違法行為であると同時に,②面会拒否も他方親の親権侵害となる違法行為となることは現在施行されている民法においても適用がある内容です。私は,現在実務で採用されている立場が,この民法の規定と適合していないことが,「連れ去り」の諸問題が解決しない1つの理由だと考えています。
もう1つ申すと,仮に子が「連れ去られた」場合であっても,他方の親権者親が「交互監護を請求する」と,他方の親権者親は隔週で週末(例えば金曜日の夜から日曜日の夕方まで)を交互に監護する権利が保障されていれば,この「連れ去り」問題は大きく解決されるのです。
そもそも,諸外国ではその宿泊付きの交互監護のことを「面会交流」と呼んでおり
(ハーグ条約では,連れ去られた当事者が請求した場合は,宿泊面会が認められるのはその根拠の1つです),日本における「面会交流」と,諸外国における「面会交流」の用語も適合していないのです。
諸外国では面会交流を「親時間(親による子の養育時間)」と呼ぶ一方で,日本では「面会がしたいのではなく,養育がしたいのです」という親御さんの声をよく聞くことのも,その用語の不適合が原因だと私は考えています。
いずれにせよ,冒頭でご紹介した報道特集「子供の連れ去り」は,民法改正が実現した後の現段階における「連れ去り問題」の早期の解決方法を提示してくださるような内容であることを期待して,拝見したいと考えています。