私が担当させていただいている,東京地裁に係属している離婚後単独親権制度違憲訴訟について,令和2年3月18日に,第4回期日が開催されました。これまでの訴訟の経緯と原告及び被告である国から提出された主張書面は,以下の訴訟のHPに掲載されています。
次回期日は5月25日午後1時15分からが予定されています。その期日までに原告側で最終的な主張書面を提出し,東京地裁での審理は同日に結審する予定です。
そのような中,とても心を痛める事件が起きました。離婚に伴い子供の親権が争いとなっていた夫婦の妻が,子2名と夫を刺し,子2名が死亡した事件です(産経新聞令和2年3月23日掲載の記事より)。
「自宅マンションで子供2人殺害、タイ人母を逮捕 東京・吉祥寺
3月23日午前11時20分ごろ、東京都武蔵野市吉祥寺本町のマンションの一室で、住人の中学1年、古川絢一(じゅんいち)さん(13)と妹の小学4年、紗妃(さき)さん(10)が刃物で刺されて死亡しているのが見つかった。
2人の母親が近くの交番に「子供を殺した」と自首。警視庁組織犯罪対策2課は同日、殺人容疑で母親を逮捕した。「寝ていたところを刺した」と容疑を認めているという。
逮捕されたのは、タイ国籍の会社員、フルカワ・ルディーポン容疑者(41)。組対2課によると、フルカワ容疑者は単身赴任中の夫(38)との間で離婚話が浮上し、親権問題でトラブルになっていたという。「子供を取られるくらいならと、やってしまった」と供述している。
逮捕容疑は23日午前7時半ごろ、自宅マンションで、絢一さんと紗妃さんの首や肩などを包丁や果物ナイフで刺して殺害したとしている。 」
今回の殺人事件は,離婚に際する子供の親権問題をめぐり夫婦でトラブルになった結果発生したものです。
殺人容疑で逮捕した母親について,記事では「夫との間で離婚話が浮上し,親権問題でトラブルになっていたという。「子供を取られるくらいならと、やってしまった。」と供述している。」と記載されています。
その記事の内容からも明らかなように、この事件は,民法が離婚後単独親権制度を採用しているために発生したと言えるものです。逆を言えば,離婚後共同親権制度が採用されていれば発生しなかったと言えるものです。
民法が採用した離婚後単独親権制度は,離婚に際し,両親に子の親権をめぐって争うことを強いている制度です。その制度が採用されている結果,この殺人事件が発生し,子2名の命が失われたのです。「悲劇」と呼ぶにはあまりに酷い事件です。その原因となったのが,法律制度であることに,法律家として心を痛めるばかりです。
憲法13条は,「生命」を立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする,と規定しています。その憲法が最大の尊重を必要とする,と規定している生命が,2人について奪われる事件を生じさせる原因となった,強制的な離婚後単独親権制度を,憲法が容認しているはずがない,と私は考えています。
この悲劇的な事件が起きる前に,離婚後共同親権制度が採用されていたら,2人のお子様の命が救えたのに,と思うばかりです。亡くなられた2人のお子様の余りに短い命のはかなさを思うと,言葉もありません。このような悲劇が繰り返されないためにも,1日も早く離婚後共同親権制度が導入されてほしい,と願っています。心からご冥福をお祈りいたします。