中日新聞では,今月(10月)6日と13日の2回に分けて,「続「共同親権の展望」」という特集を組みました。いずれの記事も,現在の離婚後単独親権制度の問題点を指摘する内容です。

 

 

 

 

まず6日の第1回記事「解けない対立」では,以下のような指摘がされています。

 

 

 

 

「離婚後共同親権を認めていないのは,先進七カ国(G7)では日本だけであり,国連の子どもの権利委員会が今年,日本に「児童の共同親権を認めるため」の法改正を求める勧告を出した。国全体として,この問題に正面から取り組む必要がある。」

 

 

 

 

「立命館大の二宮周平教授(家族法)は,子どもが別居親からも見守られていると確信できるとして「面会交流」の意義を認めた上で,こう指摘する。「DVが原因で離婚した場合,加害者には治療を含む更生プログラム,被害者にはエンパワーメント(励ましによる力づけ)のためのプログラムが必要。そういった仕組みやルールが日本では不十分だ。法曹界にも心理学など科学的知見が求められる」」

 

 

 

 

そして,13日の第2回記事「海外の厳しい目」では,以下のような指摘がされています。その中で,私のインタビューも掲載していただいています。

 

 

 

 

「フランスの人権派弁護士ジェシカ・フィナーリさんの法律事務所(パリ)は今年8月,国連の人権理事会(HRC)に対し,「日本の「実子誘拐」が重大な人権侵害に当たる」と申し立て,受理された,と発表した。」

 

 

 

 

「離婚後単独親権違憲訴訟の原告代理人・作花知志(さっかともし)弁護士は,再婚相手からの児童虐待事件を例に「親権者が一人に減ることで,侵害される子どもたちの基本的人権をどう守っていくのか」と問題提起し,「共同親権の導入後を見据え,子どもを守る諸施策の議論は,もう始めていなければならない」と訴える。」・・

 

 

 

 

この中日新聞の2回の連載は,離婚後単独親権と離婚後共同親権の問題を,コントラストを描くように書いてくださったと思います。といいますのは,第1回の記事で指摘されているのは,離婚後共同親権とした場合の「離婚後の元夫婦間の問題」であり,第2回の記事で指摘されているのは,離婚後共同親権にしなかった場合の「子の問題」なのです。

 

 

 

 

離婚後共同親権に反対される方の意見では,「離婚した元夫婦が子の親権行使を共同で行うと紛争が生じるから,かえって子の利益にならない」という内容をよく拝見します。

 

 

 

 

ただ,それはあくまでも「親の迷惑」の話です。それに対して,離婚後共同親権の導入が求められるのは,それが「両親と同じように接しながら成長することこそが子にとって最も望ましいことである」と指摘されているからです。

 

 

 

 

さらには「離婚後単独親権者となった者やが子を連れ去ったり,再婚して再婚相手から子への虐待が行われた場合に一方親が子を救済できる法的な手段が必要である」とされているからです。

 

 

 

 

私が担当させていただいた女性の再婚禁止期間違憲訴訟において,最高裁大法廷平成27年12月16日判決は,親子法は子の福祉の保護を実現するためにあるのであり,親の迷惑防止のためにあるのではない,と判示しています。その最高裁大法廷の立場からすると,離婚後共同親権制度が「子の福祉の保護を実現する」ために導入が求められており,それを親の迷惑を理由として妨げてはならないことは明白だと思います。

 

 

 

 

冒頭でご紹介した中日新聞の記事でも指摘されていますが,先進国で日本だけが離婚後単独親権制度を採用していることで,児童の権利条約の条約機関や海外からも非難が続いています。その非難は,離婚後単独親権制度では,子の福祉の保護が不十分であるという非難です。

 

 

 

 

人権とは,人が人として生まれて当然に有する権利であり,国によって与えられたものでもなく,憲法によって与えられたものでもありません。そうであれば,当然人権の保障状況が,国によって異なるレベルにあることは,人権概念に反することです。

 

 

 

 

日本でも法務省が12月に研究会を立ち上げて離婚後共同親権制度の法改正を行うかの検討が始まることになりました。私が担当させていただいている東京地裁での離婚後単独親権制度違憲訴訟も,12月18日に第3回期日が予定されています。

 

 

 

 

行政と司法とは異なる国家作用ではありますが,目指すべき方向が社会の正義と公平を実現することにあることで共通しています。この離婚後親権問題に異なる光が当てられ,異なる色彩が当てられることで,社会が求める正義と公平に,さらには子の福祉の保護が実現される方向へと,きっと日本の社会は進んでいくに違いないと考えています。