私が担当させていただいている,現行民法の離婚後単独親権制度が憲法違反ではないかを問う裁判は,現在東京地裁に係属しています。
現行民法の離婚後単独親権制度は,一方親による子の連れ去りを生み,連れ去られた側の親が子と会えなくなる事態を生み,さらには児童虐待を生んでいるのではないか,と指摘がされています。それは,親と子を共に不幸にする制度ではないか,と考えて提起したのが,冒頭でご紹介した東京地裁に係属している訴訟なのです。
そのような中,今日,とても嬉しい動きがありました。外国での離婚後共同親権制度を調査した法務省が,法改正を行うべきかどうかを検討する研究会を立ち上げることを決めたのです。
今日法務省が決めたのは研究会の設置ですので,実際の法改正に向けての小さな一歩かもしれませんが,明治憲法時代から長年離婚後単独親権制度のみを採用してきた日本の社会における,大きな一歩だと感じています。
実は,民法には既に,親権者に問題があり,親権を適切に行使できない場合を念頭に置いた,親権喪失(民法834条),親権停止(民法834条の2),管理権停止(民法835条)の段階を設けた諸制度と置いているのです。とすると,仮に離婚後共同親権とすることで,何等かの問題が生じた場合には,それらの制度を用いればいいわけでありまして,それにも拘わらず,何ら問題のない親権者について,離婚後一律的全面的に親権を奪う必要はないはずです。なぜならば,離婚とはあくまでも夫婦関係の清算であって,親子関係の清算ではないからです。
いずれにせよ,私が担当させていただいている訴訟は続いていきます。そして法務省の研究会が行われ,検討の結果がまとめられるはずです。司法と行政は異なる国家作用ではありますが,いずれの作用も目的は社会における正義と公平の実現にあります。異なる角度からこの問題に異なる色彩の色を与えて,早期に離婚後共同親権制度が実現される日が来ることを祈っています。
でも,本当に今日は嬉しいのです。私は仕事で,とても多くの「子を連れ去られた親」の方々の弁護を担当してきました。また,悲惨な「児童虐待」の案件も担当してきました。離婚後共同親権制度の導入で,全ての問題が解決するとは思えませんが,社会で辛い思いをされている人を,1人でも多く救済できる制度になることを確信しているからです。そんな日が1日でも早く来ることを願い,訴訟活動を続けていきたいと考えています。