私が担当させていただいている,無戸籍児問題の解決を目指した嫡出否認制度違憲訴訟について,平成30年8月30日に判決が言い渡されました。

 

 

 

現在の民法は父から子に対する父子関係の嫡出否認の権利を認める一方で,母や子からの否認権を認めていないのです。訴訟において原告側は,その規定が無戸籍児を生んでいるのであり,民法の規定は個人の尊厳と両性の本質的平等を定めた憲法に違反している,と主張しました。

 

 

 

それに対して大阪高裁平成30年8月30日判決は,①夫のみに嫡出否認の権利を認めることは「一応の合理性はある」,②妻や子に嫡出否認の権利を与えるかどうかは国会の立法裁量の問題である,と判示したのです。

 

 

 

判決に対しては最高裁判所への上告がされる予定ですので,この問題の最終的な判断は最高裁判所が行うことになります。今日の記事では,今回の訴訟の第一審である神戸地裁と控訴審である大阪高裁の各判決を受けて,私が今思っていることを書きたいと思います。

 

 

 

神戸地裁判決と大阪高裁判決はいずれも,嫡出否認権を父側にのみ認めて制限する目的は父子関係の安定性のためである,と判示しています。でも,安定性を実現するのなら,逆に夫による否認権行使を否定しなければならないはずではないか,と思うのです。夫による否認権行使の結果,子は法律上の父のない子となるからです。それにもかかわらず民法は夫にのみ否認権を認めているわけですから,それは「夫のみに認められた特権」と評価される権利だと考えます。その権利を夫にのみ認め,子には認めないことに,合理的な理由はないと思うのです。
 

 

 

さらに2つの判決はいずれも,妻や子に嫡出否認の権利を与えるかどうかは国会の立法裁量の問題である,と判示しました。でも,例えば夫が暴力を振るい,子の生命身体の安全に危険が及ぶような場合(子に対する虐待が行われる場合)には,子からの否認権行使を認めることには合理的な理由があると思います。

 

 

 

また妻も,子が暴力を振るう夫の子であるとされれば,子について妻はその夫と共同親権を行使することを余儀なくされます。逆を言えば,妻は子に対する親権の行使を,夫によって妨げられる関係に立つわけです。夫が離婚に同意せず,さらには婚姻中に妻が夫ではない男性の子を産んだことが不貞行為である,有責配偶者からの離婚請求だ,との主張が夫からされる可能性があります。そうすると,離婚が認められないことになります。

 

 

 

さらに,その夫が子との面会交流を希望した場合などには,夫と連絡をしたり,会ったりすることを余儀なくされます。子についても,夫が子に対して暴力を振るったり,養育を放棄したりなどのいわゆる児童虐待を行う場合には,父と子との父子関係を存続させることは子の福祉に反すると思うのです。

 

 

 

それらのことからすると,やはり現在の民法が夫にだけ子との父子関係についての否認権を認め,妻や子には認めていないことは,憲法14条や24条2項が規定する個人の尊厳と両性の本質的平等に違反することは明らかであり,その規定を改正しないことは,国会の立法裁量の逸脱・濫用であると評価がされるべきだと思っています。

 

 

 

最高裁判所では,そのような主張を行い,法改正を導くような判決を得ることができれば,と考えています。